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第四十三話:護衛開始、戦慄のコンサートpart2

 


 大歓声が外にいても聞こえてくる、恐らくコンサートが始まったんだろう。

 私は話し合いを終えてからスズカ・シノミヤと外に出た、とりあえず私はストックしてある魔法の詳細を改めて確認してからスズカをそれとなく警戒する。

 相手が何処からやって来るのか分からないから常に気を張っていないといけないし、スズカにも気を付けないといけない。だから私の仕事は沢山あって正直厳しい……本当にどうしてこうなるのか。


 私はそこまで積極的に働きたくないのだけれど、まぁリクトやアマネが危ないなら動かざるを得ない。

 マナ?あの子は守りに関しては本当に恐ろしい程の才能があるから何とかなるだろう。


 それにマナは色々と謎が多い、一度しか見てないけれど口調と雰囲気が急に変わった事もあるし、今思えば戦闘方法だってその時は変化していた、恐らく二重人格という物だろう。

 彼女から話さない限りは追求する気は無いし。それに私だって明かしていない事情の一つや二つは……


「少しいいかしら?」

「……何」


 スズカに話しかけられたから嫌でも体に力が入る、一体なんの用事なのか?

 私はメモ帳サイズの小さな本を取り出して最初のページを開く、そこに書いてあるのは独特の文字で私が一晩中かけて作り出した新しい武器。万が一の時はこれを使う。


「私、正直この依頼失敗すると思うのよ」

「根拠は」

「相手は天道十二門よ、幾らカズト君でも勝てないと思うし……それに向かって来るって事は相手は何らかの目的を持ってる事になるわ、だからこそ交渉して帰って貰おうと思うのよ」


 成程、一理ある……けど魔族相手に交渉するなんて何を考えている?相手は人類の敵だ、話し合いの余地なんて……


「無駄、相手は魔族」

「魔族の子達も話せば分かる子もいるのよ?」


 だから人類の敵と話し合いなんて……?


 待て、今なんて言った?話せば分かる子もいるって?

 何故それが分かる?魔族は問答無用で襲ってくる連中が大半、話し合いができるなんて高度な知性があるとは……仮にあるとしてもそれは天道十二門クラスの魔族か上位種の魔族……っ!?



「でも、正直予想外だったのよ。貴女が付いて来るなんて……私は全く予想してなかった、知ってるのよ?貴女が私を警戒してるのは」

「ま、魔物……」


 これは、ウェアウルフ!?今まで何処にもいなかったのに!そんな、まさか……この女は魔物を使役していると!?


「天道十二門の人達を使役できれば、それは凄い戦力になると思わないかしら?」

「使役能力、それが貴女の?」

「正解よ、この子達は私が話し合って協力を約束してくれた子達。私……話し合いで解決できればそれはとても良いことだって考えてるのよ、貴女も協力してくれるわね?」


 妖しく微笑みながらスズカは言った、彼女の目は先程とは違い細められていて、若干だけど殺気も感じられる……

 これは、クロウの忠告通りだった。この女は話し合いで解決できるとか言ってるけど、そんな事は絶対に微塵も考えていない。雰囲気で分かる……この女は確かに危険だ!

 確実に使役能力を使って、何かを企んでいる!一旦距離を取ろう、距離を取ってから本に魔力を込めながらスズカを睨み付ける。


「あら?てっきり背中に背負っている杖が貴女の武器かと思ったのだけれど?それにそういう態度を取るって事は……残念ね」


 視線に込められた殺気が更に強くなった、確実に私をここで殺す気でいるな?

 だけど使役している魔物はウェアウルフとゴブリンだけ、これだけならば……
















「おいで、ワイバーンちゃん」




 現れたのは、二十匹のワイバーンだった。



 目を疑った、そこにいたのは飛龍の一種であるワイバーン、小型とはいえこの世界ではB級に近いC級の魔物と言われている、理由は、その数の多さと連中の連携が高く、鋭い爪を使い空から強襲してくるといった、厄介な魔物。それを二十匹も使役しているとは……


「残念だけれど貴女にはここで死んで貰うわ……クスッ」


 勝利を確信したのか、スズカは私を見下したように微笑む。魔術職というのもあって前衛がいなければ私は何も出来ないとでも思っているのだろうか?













 何を勘違いしているのか、この女は。





「第一陣から第二十陣展開」




 私はネル・クライスだ、他の魔道士とはスペックが違う。



「え?」


 この程度の数、私の相手にはならない。

 私の周囲に黄土色の魔法陣が展開される。

 使うのは魔法補充(スペルストック)、登録している魔法は全て初級も良いところ。

 けれど、私は知っている、ワイバーンは土属性に弱い事を、故に。


一斉掃射(ファイア)


 連中の数の分、土の槍を撃ち込む。

 鋭く尖った土の槍は、ワイバーンの胴体を寸分狂わず撃ち抜いていく、反応速度が良かった個体でも、翼に槍を撃ち込まれ飛行が困難な状態になった。


「そんなっ!?」

「勝利を確信した時が危ない……そう教わらなかったの?城の兵士に」

「くっ!」


 残念だ、ここで勇者の一人を葬ることになるとは。

 使役能力ということは、戦闘力はほぼ皆無という事も考えられるけれど、もしかしたら他に厄介な魔物も使役している可能性があるかもしれない。逃がす訳にもいかないし殺さない理由も無い、本に書かれている文字に魔力を込めて文字詠唱を発動させる。


「ライトニング!!」

「きゃあぁぁぁ!!」


 従来の文字詠唱と違って、魔法名を言わないと発動できないが、文字詠唱と通常詠唱の良いところを詰め込んだ性能を持つ詠唱、これが私の編み出したもう一つの詠唱、魔導書詠唱。


 まだまだ研究の余地は残っているから、これを発展させた新たな魔法も研究中、そしてその内の一つであるライトニングは見事にスズカに命中した。


「ふふ、まさか魔道士がこんなに強いなんて……」

「…………」


 手心は加えない、このまま一気に……!


「グルァ!」

「チッ、ファイアボール!」


 複数のウェアウルフが邪魔してくるので、一匹一匹をファイアボールで焼き殺して行く。流石に数は相手の方が上……か。


「まさかクヴェランドの冒険者がここまで成長しているなんて、王様に報告が必要かしら?私はここでお暇させてもらうわね!」


 逃がすか、ここでアイツを逃がしたら確実に厄介な事に……!?

 な、何で!?スズカが急に倒れて……いや、周りの魔物も倒れていく!?一体何が……!?


「ぇ、えっと、皆眠らせれば良いんですよね?で、では皆さんお休みなさいぃ!!」


 なんで、急に眠気が……ま、さか

 まず、もうやつらがきて……い、しきが




 ☆ ☆ ☆




「お疲れ様、アリエス」

「はゎゎ、まさか魔物を使役する勇者だったなんて……」


 アリエスとレイジはコンサート会場の入口で争っていた二人を無力化させる事にした。一方は勇者でもう一方がネル・クライスだということで、奇襲する事によって無力化させる事にしたのだ。

 そしてレイジは、スズカの方を見てニヤリと笑った。彼女の能力は人間にしておくのには勿体無いと考えたのだ。


「使えそうだな。アリエスはそこの女を連れて魔王城に向かうんだ、後は僕がやるよ」

「ふぇぇっ!?でも……」

「心配無いさ、それにひょっとしたら魔王軍に引き込めるかもしれないからね、そこの勇者は」

「そ、そういうことなら……」


 アリエスは渋々といった様子でスズカを担ぎ、一礼してから街の外へと向かっていった。レイジはそれを見て満足そうに笑ってから、眠っているネルに視線を向ける。


「さてと、ネル・クライスは……本当なら息の根を止めたいけれど、魔王様の許可が無いと無理だからなぁ」


 レイジはここでネルを殺しておきたかったが、そうすることが出来ない理由があった。

 ネル・クライス……本名をネールディラス・K・アフロディーテ。彼女はあのレリィ・T・アマテラスの抑止力足り得る存在だ。

 彼女があの女の魅了を唯一打ち消せる存在、彼女をここで失ったら万が一レリィが暴走した時に止められる存在は魔王だけになる、更に魔王とレリィが戦闘して勝てる見込みは今は無い、時期が悪いのだ。


 レリィの魅了は魔族にも通用する、ある程度耐性があれば名前を呼んでも平気だが、彼女と相対した時点で彼女の虜になり、魔王軍を裏切ってしまう。それだけは避けたい。

 レリィと敵対すれば彼女の虜になった他の人間も敵に回るだろう、その中には恐らくだがS級冒険者もいるはず。

 幾ら魔王でも、レリィや他のS級冒険者と戦闘しつつ、他の天道十二門を敵に回すのは流石に勝率も低く、仮に勝利したとしても確実に満身創痍の状態になるだろう。


 だからこそ抑止力として彼女の存在が鍵になるのだ、レリィを打倒するまで彼女に死なれたら困るからだ。

 まぁ、もしネルが誰かしらに恋愛感情を抱いていたら、その時点でネルを殺す必要が出る事も考慮しなければならないが……彼女の事情からそれは有り得ないと考えた。


「さて、残りは三人か」


 残りの勇者の価値を見極めてから、この場を離脱する。何とも楽な任務だとレイジは思った。

 鼻歌を歌いながら、レイジ会場内部に進んで行った。



とうとう天道十二門到着、そして魔族がどれだけS級を警戒しているのかも……まぁレリィがおかしいってのもありますけどねえ

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