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第三十八話:恩人との対談

 

 さて、とりあえず相手に対する心構えは完了した。心の準備もある程度は付いたとも言えるし簡単な作戦も俺の中では出来上がった。

 相手は魔王の側近、対抗できるのはカズト君の能力しか無い、俺達はカズト君のサポートに徹すれば良い……願う事なら相手が遊んでくれれば良いんだけどな。


「それにしても……こっちに来てからリクトのやりたい事は一切やってない」

「あ、確かに」


 そういえばそうだな、ネルに言われて改めて気づくけど俺、こっちに来てから開拓とか全然してないな。

 今までこっちに来てからそういった行動をしていなかったよ、この依頼が終わったらそこら辺も考えておかないとな。


「そうだなぁ、この騒動が落ち着いたら迷宮(ダンジョン)にも行きたいし、何より見つけたいものがあるな」

「へ?見つけたいものです?」

「あぁ、とびっきりのな」


 そう、俺はこっちの世界である物を見つけたいと考えていた。それは温泉だ!温泉は良いぞ?現実世界じゃ見つけるのに色々と手間がかかるし、それ相応の器具とか知識とかも必要だし、手続きも色々と手間がかかる。


 でもこっちの世界ならそれは必要無い。それどころか温泉……まぁ元の世界でいう源泉掛け流しみたいな物になるけど、それ自体が半ばおとぎ話みたいなところがある。勿論この世界にもお風呂の文化はあるし探せば銭湯も存在した。


 だけど、そういう源泉はこの世界にはほぼ存在しない。ほぼというのは大昔に何かしらの理由があって源泉が枯れてしまったというのが大半だから。

 新たな源泉を見つけて、この世界に温泉を普及したいというのが俺の今の所の目的の一つだ。

 まぁ色々と問題もあるけど、とりあえず源泉を見つけて温泉を作りたいってのが大きいな、こっちに来てから入ってないし……


「そうなんだ!どんなのどんなの?」

「内緒だよ、その時を楽しみにしておきたまえ」


 まぁ温泉を作りたいって言っても二人は首を傾げるだろうしな、アマネには分かるだろうけどこれはサプライズイベントだし、教える必要は感じない。その時の驚く顔が目に浮かぶぜ!


「だったら、生きなくちゃいけない。リクトのやりたい事をやる為にも」

「そうだな!」


 ネルの言う通りだ、俺はまだこの世界でやりたい事が沢山ある。だからこそこんな所で死ぬ訳にはいかない!絶対に!







「何やら物騒な話をしているな」


 ふと、俺達に向けられたこの言葉。声からも分かる凛とした雰囲気。声の聞こえた方向を見てみたら、金髪ツインテールの凛々しい表情をした女の人が立っていた。

 格好を見ると、軽鎧を着用して片手で扱えるサイズの剣と指揮者のタクトを連想させるサイズと形の木の棒があった。


「コルルさん!?」


 彼女を見ていると、アマネから驚いたような声が聞こえた。

 コルル……その名前は知っている、俺が気絶している時にアマネ達を助けてくれた魔法剣士。


「やあ、先日ぶりだな……君はあの時気を失っていた少年か」

「はい、リクトと言います……あの時はご迷惑をおかけしました」

「気にするな、君達が無事ならばそれで良かったのだから」


 コルルさんは俺に向けて優しげに微笑んだ後に、すぐに真剣な表情を浮かべて俺達を見た。


「風の噂で聞いた話だが、天道十二門がここへ向かっているとの話だ」

「それは……」


 コルルさんも知っているのか、天道十二門についてを。


「何かを知っているようだが、下手に関わらない方がいいぞ?奴等は魔王の側近……先日のウェアウルフ相手に気失う程度の実力では、話にならんからな」


 痛いな、コルルさんの言葉はとても痛い。あんな奴等程度に気を失っていたら……確かに俺はあの時にドジったし、正直俺が指名されていたという事実がなかったら多分……


「コルルさん!言い過ぎです!」

「何故だ?少なくとも私の目からは、彼がC級に上がれた事態が不思議でしょうがない。君達の実力はよく分かったが私は彼が情けなく気を失っている事しか知らないからな」


 事実だ、俺はあの時に慢心してちょっとだけ、何時もよりも深く能力を発動した。確認を怠ったからあんなピンチに陥ったんだ。

 アマネはおろおろとした様子で俺とコルルさんを交互に見て、ネルは黙って静観している。対してマナは今にも噛み付かんとした雰囲気でコルルさんを睨んでいた。


「君にはアルタイルは荷が重い……即刻元の性に戻すんだな」

「……」

「何か言い返さないのか?」


 言い返さない、それら全ては紛れもない事実だからだ。確かに俺は失敗した、それはこれから先ずっと俺に重くのしかかってくる重たい事実。

 でも、失敗したっていう経験は得たんだ。だから俺はこの経験を糧にしてもっと上に行ける、今までよりも成長できる。


「ふむ」


 俺は何も言い返さなかった、けど俺は目をそらす事無く真っ直ぐコルルさんを見た。

 これが、俺なりの返事。


「成程、あれ程言われても腐る事は無いか」

「当然、寧ろ感謝すらしてますよ」

「その心を大事にするのだな」


 コルルさんは、俺に向かって笑いかけてから酒場を立ち去っていった。

 ありがとう、貴女と出会わなかったら俺はまだ成長出来ていなかった、この出会いに感謝を。


「さあ、皆!改めて準備をしよう!」


 この言葉は俺に向けた言葉でもある、危険な奴と戦闘するなら尚更事前の準備が必要だ。

 確か街の道具屋に面白い道具があったな、まだ時間があるし買いに行こうか。


「俺は道具屋に行ってくる、ちょっと気になった物があるからな」

「じゃあ、私は軽く音楽でも演奏しよっと。ちょっと席外すね?」

「私はストックもたっぷりとあるし、魔力も充分。何時でも平気」

「むむむ、私はどうすれば良いのでしょう?」


 そして俺達は一旦別れ、各々の準備に入った。






 ☆ ☆ ☆






「何で僕がこんな所に……」


 ハァァ、と大きなため息をつきながら歩く少年。見た目はあどけなさが残る顔立ちをした子供といった風貌だが、その服装は子供が想像したカッコイイ!を詰め込んだような、派手な色と滅茶苦茶な模様とアクセサリーをあちこちに付けた奇抜な格好だ。


 そんな彼の隣には、もふもふとした毛皮をベースにした暖かそうな服装を少女がいた。彼女は少年よりも少し背が高く、ウェーブがかかった白色の髪がとても見栄えする可憐な少女だ。二人共パッと見たら12歳に見える程だが、分かる人が見たら全力で逃げ出すのを躊躇しない……それ程の存在だった。


「ぁ、あのぅ……本当に私達が来る事を知らせて良かった……んでしょうか?」

「アリエス、何度も言うけど僕達の目的は人間を蹂躙する事じゃない、あくまで僕達は勇者と遭遇して見極める事。それが今回の仕事なんだよ?面倒だけどね」

「な、成程!流石レイジ君ですね!」

「本当、本当に面倒」


 やる気が無さそうに空を見るレイジと呼ばれた少年。彼が空を見上げると数羽の鳥が空を飛んでいた。

 レイジと呼ばれた少年は何を思ったのか、空に手を掲げて一言言い放った。





























「羨ましい」



 彼がそう言ったら、先程まで空を飛んでいた鳥は急に失速して地面に向けて落下した。

 そして、鳥は地面に落ちる……だがそのまま鳥達は動く事は無い、既に息絶えてるのだ。口から真っ白な泡を吹き出しながら、苦しみの末に命を落とした者のように。


「ああ、羨ましい。僕が届かない空……羽を生やしてこの空を飛び回りたい。何処までも続くこの空を飛び回りたい。なのになんで僕よりも劣っている君達は空を飛んでるんだ?本当……羨ましいよ、羨ましいから僕は消した。君を、君達を」


 まだ声変わりがしていないのか、男性にしては高い声色でそれを言った。

 ただ羨ましいから、それだけの理由で鳥の命を奪った。


「あ、あのぅ。無闇に生き物の命を奪うのは……」


 ビクビクとしながら、レイジに向けて注意するアリエスと呼ばれた少女。だがレイジはきょとんとした表情を浮かべて、アリエスに向けて言う。


「何故?僕は当然の事をしただけだよ?僕より優れているから消した。僕に出来ないことをしていたから消した。僕が嫉妬したから消した。当然だろう?僕は魔族だ……気に入らない存在(モノ)は消しさればいい」


 さも当然のように、彼は言った。当たり前の事を何聞いているんだ?と言いたげな表情に変えながら。そんなレイジに怯むことなく、アリエスは厳しい表情をしながらレイジを注意する。


「でも勇者は殺さないで下さいね!絶対ですよ!」

「ああ、僕は仕事はきちんとこなすよ……勇者は殺さないさ」


 とりあえず約束が出来たからか、アリエスはほっと一息ついた。対するレイジは暇つぶしなのか知恵の輪を弄りながら鼻歌を歌いつつ歩き始めた。



 アリエスとレイジが到着するまで、残り■時間

『天道十二門の一人、レイジ・キャンサーの情報が一部公開されました』



レイジ・キャンサー

男性

年齢不明


ステータス

不明


特別能力(エクストラスキル)

???

???

???

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