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第三十五話:名指しの依頼、思わぬ再開

物語が動き出す

 

 ネル、マナ、アマネと色々な所に行った翌日、マナが言ってたアイドルのコンサートが今日始まるとの事、そしてそんな時に俺達は冒険者組合に呼ばれていた。

 何でも俺達に名指しで依頼したいという人物が現れたの事。これを聞いてマナは速攻で逃げ出そうとしたけれど俺とアマネが捕まえて引きずり出した。まぁそのせいか…


「嫌です!何でこんな日まで依頼受けないといけないのです!!」

「まぁまぁ、話だけでも聞いてみようよ」


 さっきからこんな感じでマナが駄々をこねている、そりゃいつの間にか四人分のお金出してくれてたのはマナだしなぁ、意地でも行きたかったろうに。

 まぁ万が一の場合は俺一人でも受けて三人にはゆっくり羽を伸ばして貰おうかな。


「着」

「一言だけかよ」

「怠」

「何だそりゃ」


 ネルも何故かテンションが低いから、普段少ない口数が更に少なくなっていた。心無しか彼女のアホ毛も元気が無さげに見える、とりあえず冒険者組合に着いたし中に入ろうか。


「こんにちはー」

「あっ、お待ちしておりましたよ皆様!」


 中に入ると赤髪のエルフの女性…リーネさんが出迎えてくれた。アマネ達から聞いた話じゃウェアウルフ討伐の際に力を貸してくれた一人らしい。


「リーネさん、その節はありがとうございました」

「いえいえ、私達も皆様のご協力のおかげでウェアウルフを素早く撃退できましたし、お気になさらないで下さい」

「そんな…」

「本当に気にしなくて大丈夫ですよ?」


 何か申し訳なくなってしまったな、実質的な問題彼女とあと一人がいなかったら俺達は死んでたかもしれないのに…


「では、依頼の方のお話に移りたいので奥の部屋へご案内しますね」

「むぅ、リーネさんの頼みなら仕方ないですね」


 案内人がリーネさんだって事があったせいか、マナの機嫌が若干良くなった。正直ほっとしたな。


 俺達はリーネさんの案内の元奥の部屋へ入った、そこいたのは改造された学生服らしき服を着た金髪碧眼の男性がっ…て!!?


「お、お前は!!」

「君達っ!?何故ここに!」

「う、嘘っ!?」


 そこにいたのは、俺達が一番最初に出会い、共にこの世界に召喚された勇者の一人、カズト君がいた。


「あ、知り合いですか?」

「まぁ…」

「う、うん」


 若干…いや、物凄く気まずい。それもそうだ…カズト君とはあれ以来会っていないし会ったのは隣で意味深な微笑みを浮かべているスズカだけだ。


「………」

「クスッ」


 ふと見たら、カズト君が居心地が悪そうに顔を伏せていた。少ししか行動を共にしてなかったとはいえ、彼の人格はある程度は分かっているつもりだ。そんな彼が何故こんな遠慮しがちに目を伏せている?


「こちらの御二方は今代グリスレム王国にて勇者召喚された勇者の二人、カズト・テンドウ様とスズカ・シノミヤ様です。こちらは」

「いや、紹介はいい」

「ですが…」

「いらないって言っている、僕はそこの臆病者とはこの部屋にはいたくない」


 そう言ってカズト君は部屋を出ていってしまった。一体どうしたんだ…?カズト君は俺を心配してくれる程には優しかった奴なのに…


「勇者…二人共知り合い?」

「あぁ、ネルと会う前に出会ったんだけど…前はあんな奴じゃなかったんだ」


 少なくとも、俺を臆病者とは言わなかった…内心じゃそう思ってたかもしれないけど、少なくとも言葉にはしなかったのに。


「カズト君は今気が立ってるのよ、怒らないであげて」

「…………人たらしの気配がする」


 ネルはそう言ってそそくさと席に座った、マナとアマネも困惑の表情を浮かべながら席に座った。対して俺は一応アマネの隣に座ってスズカを観察した。


 相変わらずスタイル抜群な彼女は、この世界に来た時の衣装ではなくこちらで用意したのか、露出度の高い水着のような服装に変わっていた。


 まぁ俺も昨日服を新調したし、アマネもフリルが沢山あるフリフリした服をこちらで入手したから、カズト君含め俺達は新しい服装になったことになるな。


「では、お集まりいただいた皆様に依頼したい依頼…それは、今日開催予定のアーラ・ベガルデのコンサート…そしてアーラ・ベガルデの護衛をお願いしたいのです」

「ふぉぉぉぉ!?」


 ガタリ、とマナが勢い良く立ち上がりマラカスを何処からともなく取り出した。

 俺はもちろん、アマネもネルもスズカもリーネさんも引いていた。


「おい、自重しろ」

「はうっ」


 そのままじゃ身内の恥を晒しそうだったから脳天に軽くチョップしつつ注意した。


「え、えっと…続けても?」

「許可」

「は、はい」


 そういえばネルも機嫌悪かったな、くっそ…だりぃ。何か悪い事が立て続けに起こってんな。


「今回アーラ・ベガルデ様のコンサート会場…表には伝わってませんが裏ではある噂があるのです」

「噂?」

「はい、天道十二門はご存知ですよね?」

「て、天道?」


 天道十二門…何だったか、確か常識凌駕の魔王の項目でそんなのを見た事があるような…


「すみません、俺の知ってる知識と合わせたいので、軽い説明をお願いできますか?」


 とりあえずアマネの為にそれとなく違和感が無いように説明をするようにリーネさんに頼んでみる、彼女は笑顔でそれを了解してくれた。


「天道十二門とは、魔王の直属の配下であり特別な力を持つ十二人です。

 牡羊のハナ・アリエス

 牡牛のエルナト・A・アルデバラン

 双子のジェミニ・カストル。

 蟹のレイジ・キャンサー

 獅子のレグルス・アルテルフ

 乙女のポリマ・スピカ

 天秤のリブラ・フルクラム

 さそりのアンタレス・シャウラ

 射手のカウス・オリオン

 山羊のサターン・ストラルト

 水瓶のアラヌン・S・アクアリウム

 魚座のネプチューン・ポセイドン

 以上の十二人による構成となっております。そして今回はその内の二人…レイジ・キャンサーとハナ・アリエスが会場を狙っているとの事です」

「ま、魔王の…!」


 詳しくは見ていなかったけど…成程魔王直属のか…それにしても十二門ねぇ、こんだけいれば今日の運勢が分かりそうだな。まぁ、カズト君がいればこいつらでも…いや、待てよ?

 魔王の直属の部下って事は独特な能力(スキルは)持ってる筈、それに魔王を倒す為に呼ばれた勇者でも苦戦は必須の筈だ。何故ならそいつらを倒す為に俺達は呼ばれたんだから。


「そいつら…能力(スキル)は分かりますか?」

「レイジ・キャンサーは泡を操る力、ハナ・アリエスは…彼女と相対した者全ては意識を失ったとしか…」


 なるほど、蟹だから泡か。牡羊の方は羊数え歌が元になってるのか?多分意識を失った=眠ったって事になるな、厄介すぎるだろ…それに気になってる事はもう一つある。


「なら何で俺達を指名するんですか?少なくともそれ程の大物…S級に依頼するべきだと思うのですが?」


 俺が気になってる事は今回の護衛にS級がいないって事だ、リオナオンやグリスレムにいるS級に協力を要請すればいいんじゃ…もしも手が離せないならその下のA級やB級もいるはず、ついこの間C級に昇格したばっかの俺達じゃ荷が重いんじゃ…


「それが厄介な事に…アーラ・ベガルデ様直々のご指名でして…本当に厄介な事にS級の介入も許さず、唯一許可されたのが勇者のみの介入だという話なんですよ」

「なっ…!?」


 驚いて声も出ない、何だそりゃ?勇者のみの介入って…ふざけんなよ?どんな我儘お姫様だ!?


「まったく、相手は十二門なのに…何を考えてるのやら…」


 リーネさんも参ったとばかりに頭を抱えている、そりゃ俺も頭を抱えたい気分だぜ。何せ王国の兵士が四天王を倒せって言ってるのと同じだぞ?


「勇者のみの介入ねぇ、だから私達が呼ばれたのかしら?」

「その通りです、スズカ様」

「クスッ、なら張り切っちゃおうかしら?」


 どうやらスズカはやる気にのようだ…こうなると問題はカズト君だけど…ん?そういえばネルがさっきから黙ってるな、こういう無謀とも言える作戦には何かしらかアドバイスをくれるのに…

 そう考えながら彼女の方を見たら。













「すぴー………」



 おい。



 おい。



「「「「「…………………」」」」」



 俺達は、暫くそのままフリーズしていた。







 現在時刻、AM10:00


 アーラ・ベガルデのコンサートまで、残り五時間。

さぁ、第二章の難関の幕開けだ。

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