第二十九話:今度は私が君を守るから part1
第二章プロット追加中につき、若干投稿に遅れが…申し訳ないです
「リクト君!?リクト君!!」
何で!?急にリクト君が叫んだと思ったら次の瞬間にはもう倒れていた!
理由は分からないけど、こんな魔物が沢山いる場所で気を失ったらリクト君が危ない!すぐにリクト君の近くに行かないと!
「うぅっ!」
駄目、リクト君を守りながらだと戦闘が厳しい!でも守らないと!今まではリクト君に助けられてきたから!だから今度は私が!
「当たって!」
弓矢を射る。何度も、何度も、何度も射る。
けれど駄目だ…!全然足りない!魔物の数が多いよ!せめてネルちゃんかマナちゃんがいれば…!
「グルァァ!!」
「っ!!」
死角からウェアウルフ_駄目、避けきれない!!なら!
「キャウン!?」
「うぁぁぁっ!!…くぅッ!」
咄嗟に矢を手に取って、噛み付いてきたウェアウルフの頭部に突き刺した。でもそのせいでウェアウルフの牙が左腕に突き刺さってしまう。
痛いよぉ…!どうしても涙が出ちゃう…ッ!こんな、こんなに痛いなんて…今までリクト君やマナちゃんが魔物を私達には近寄らせなかったから、知らなかった痛み…でも。
あの時のゴブリンロードにやられたネルちゃんは、もっと痛かった、だから私にも耐えられる。
歯を食いしばる、こんな痛みは耐えてやる。諦めない、私は絶対に諦めない。諦めるという選択肢なんて、私の中には絶対に存在しない。だから!
「アァァァァァッッッ!!!」
叫ぶ、自分を奮い立たせる、痛みでまともな感覚もないし回復魔法の詠唱もする隙もないから、そのままの状態で弓矢を射る。けど弓矢だけじゃない。
矢が風を切る音を出した瞬間、その音を増幅させて相手の鼓膜に直接届ける。
音楽奏者。私のチカラ。
「ギャウッ!…ギャワン!!」
巨大な音量を直接耳に届けて怯ませてから、一体一体確実に射る。でも
「あうぁっ!!」
あはは、数ってやっぱり凄い戦力だなぁ…捨て身の攻撃をしてくる相手には、私の攻撃は遅すぎる。
右腕を噛まれて、足を噛まれて、鋭利な爪で背中を切られて…私は地面に倒れた。
辺りには私の血が沢山飛び散っている。あはっ…軽いスプラッター。
でも、私は絶対諦めない。ほら、まだ右腕が動くよ?
「すぅぅ…」
右手にハーモニカを握り締める、深呼吸して肺に空気を入れる、適当でいい、ただ音を出せれば私の能力は発動する。
「「「「グルァ!?」」」」
全ての魔物は私の音に怯んで、そして狂ったように鳴き始める。
これが今の私の全力…ッ!!
「こふっ」
音を奏でてる最中、勢い良く私の口から血が吹き出した。
あっ、やっちゃったなぁ
「ゴァァ!!」
魔物の一匹が立ち直って、私に向かって直進した。でも私は諦めない。右手に矢を持ってそいつを迎撃しようとする。けど…
血で手が滑って矢を落としてしまった。
「あっ」
呆気ないな。私の人生。
ザシュッ
え?生きてる?……………あっ。
「風が教えてくれたのさ、君達の危険を」
私の目の前には、金色の髪をツインテールに束ねた片手剣を持った女の人がいた。
「ウェアウルフの大量発生…一足早く戦闘していた人間がいたというが…君達とはな、他の2人が気になるが…加勢が必要なのはこちらと見た。なに、安心したまえ…私が来た」
彼女は私に優しく微笑みながら、杖を掲げた。
「癒しの風は汝らの傷を癒す…ヒールウィンド」
回復魔法…?あっ、痛みが引いていく…傷も塞がって…凄い、こんな回復魔法…私は見たことないよ。
「貴女は…?」
「魔法剣士を目指して修行している人間…と、覚えておきたまえ。そこで倒れてる彼を背負って下がるといい、私が二人の背中を守ろう」
「ううん、私も…!」
動けるなら動く、少しでも彼女の助けにならないといけない。私は後衛彼女は前衛、私が頑張れば彼女の負担が減る…!
「ほう、中々根性があるな。ならば逆に背中を守られる立場になるな」
「うん!任せて!」
「ふっ…」
女の人に返事をしてから、後ろで気を失っているリクト君に目を向ける、そして改めて決意する。何時までもリクト君に守られてばかりの私じゃない!リクト君を守れるくらいに強く…強くなってみせる!だからリクト君はちょっと休んでてね!
こんな奴等、私が倒してやるんだから!
『報告、アマネ・カグラの性質が覚醒しました。大鷲と歩む竪琴…ベガを獲得しました、これによりステータスカードのネームが変更され、アマネ・B・カグラとなります。またアマネ・B・カグラが新たな能力不屈の心を獲得しました』
アマネ・B・カグラ
リクトに対する心構えから新たに星に選ばれた勇者。彼女は人並みに恐怖を感じたり絶望を感じたりもするが、彼女の心は絶対に折れない。折ることは無い。何者にも折られない。
「諦めたら未来は無い、だから私は絶対に諦めない!そりゃ怖いなーとか、もうダメかもって思う時もあるよ?でも…それでも私は絶対に前に進むよ、それが私だから、じゃないと生きていけなかったからね!」
彼女はどんな状況でも明るく振る舞い前に進む、自分の心が不安や恐怖で押し潰されそうになっても、弱音を吐くことがあろうとも、必ず前に進む道を見つけ出して誰よりも早く希望を持つだろう。
それが彼女の在り方、それが彼女の心。一般的で何処にでもいる明るい女の子な彼女が唯一誇れる武器である。




