第二十八話:覚醒の兆し
あぁ、本当に…この世界は、残酷だ。
中二病はともかく、最近寒くなってきました。皆さんも身体に気を付けて下さい!
試験は無事に完了…で良いんだよな?念のために取っておいたメモを見直してみよう。マルマストーンが紫色に発光したら、それ職員に見せること、それが試験完了の証拠になるか。
「よし、戻ろう」
「うぅ、またあの道を通るんだ」
げんなりとした様子でアマネが言うけど、仕方ない事だとも思う。遺跡まで来たなら帰る時も同じ道を通って行くことになるし、恐らく道中魔物も復活してるかもしれないから、また倒していかないといけない。
「ここの魔物が弱いのが幸いだったな」
「うぅ」
「ま、金も経験値も稼ぐと思えば幾らかは気が楽だぜ」
実際に俺のレベルは28になってるしな…そういえばステータスを最近きちんと見てなかったな。レベルとか簡単な項目だけはカードを見ればすぐに分かるけど、詳しいステータスは集中しないと見れないようになっている。
覗き見対策だとは思うけど…とりあえずっと
「さて、とりあえず帰るか」
「そうだねぇ」
何かアマネが不憫になってきたな…そういえばリーンネイションには有名な甘味があったな。この世界の甘味はまだ食べた事が無かったな、俺も興味あるし…うん。
「帰ったら達成祝いに甘い物でも奢るよ」
何気無い気持ちでアマネに言ったら、さっきまでだれてた彼女が急に背筋を伸ばして敬礼した。
「はい!アマネ・カグラ!全力で帰還します!」
「お、おう」
現金な奴め…まあ奢るって言ったし最近は身入りも中々の中々だから、一人くらいならなんとかなる…なるよな?
「さあ!早く帰ろ!」
「おい!先頭は俺が行くっての!危ないぞ!」
「平気平気!甘い物が私を待ってるのだよ!」
さっきまでの様子は何処に行ったのやら…元気になったら良かったけど。
それにしても、何で遺跡の外にワープしたのやら?試験が完了したら自動的に戻るっていう仕様ならあんなタイムラグは起きないだろうし…もしかしてこいつか?天翔大鷲、本当に何らかの能力が解禁されたのか?
ちょっと見てみよ…
「何してるの!早く帰るんだよ!」
…若干キャラ変わってんぞおい。
ま、確認なら後でいくらでもできるか、今はアマネと一緒に帰ることに集中しよう。
☆ ☆ ☆
はい!私です!マナちゃんです!只今私は前から欲しかった物を買いにクヴェランドの商店街に来ています!
それは、クヴェランド一のアイドルのアーラ様のフィギュアです!半分…いや、三分の一はこのフィギュアの為にクヴェランドに来たかったんです!リーンネイション限定プレミア付きのフィギュア…ぐへへ、です!
「これ!このプレミアのアーラ・ベガルデのフィギュア!これを下さいなのです!」
「こちら、天銀貨二十枚になります」
ぐぬぬ…や、やっぱり高いです!でもプレミア付きの限定フィギュア!ここを逃すとオークションじゃ絶対金貨2枚の価値になる代物!ここを逃せば手に入らない!
「です!です!ですぅぅぅ!!!」
「て、天銀貨二十枚丁度お預かりします、こちらが商品になります」
「ふぉぉ!!!アーラ様ぁぁ!です!」
「うわぁ…」
店員さんが引いてますけど知らねーです!私の異次元倉庫ならこのクオリティのまま保管できるです!はぁ…素晴らしいですぅ。
そ、そういえばそれだけじゃないです!
「これ!これも下さいです!」
「えっと、アーラ・ベガルデ公開ライブの…S席ですね、こちらは天銀貨一枚ですが」
「受け取りやがれです!」
「は、はい」
こ、これで…私のほぼ全財産を叩いた、私の、夢がひとつ叶いました…ッ!!もう、死んでも良いですぅ……
ライブは明日なのです、もう待ちきれません!…はぁ、早く明日になぁれですぅ。
☆ ☆ ☆
やあ皆、ネルだよ…と言っても誰と話してるのか。隣には誰もいないしね…今私は数日ぶりに外を出歩いてる。太陽が私を浄化しようとしてるけど、まだ耐えられる…それに今日はどうしても確認したい事がある。
マナから聞いた話…ひょっとしたら規格外の冒険者…冒険者と言っていいのか?まぁその冒険者がこの国に来るかもしれないから、私は商店街を出歩いていた。
理由?実はこれでも旨いものには目がないから、ニートだからかな?楽しみは魔法の研究と美味しいものぐらいしか興味は無かったからね。
リーンネイションの食べ物は美味しいものが沢山あるから、食べ歩きも偶には良いかもしれない。なるべく動きたくないけれどね。
あっ、フェザーバードの串焼きがある…銅銀貨五枚…まぁ美味しいし偶には贅沢にお金を使っちゃおっかな?
そう考えてから、私は何気無くあるブースに目をやった。
「ふぉぉ!!!アーラ様ぁぁ!!です!」
何やってんのあの子…うん、他人のふり他人のふり…っ!?
「あれは!」
マナのいるブースには女の子のフィギュア?があった、でもそのフィギュアの人間が問題だ。
それは私のよく知る人物で、一般人…いや、冒険者達でさえ姿すら知らない存在。
その姿を知る者はS級冒険者や王族といった極わずかな存在…なんでこんな所に!
「レリィ・T・アマテラス…!」
☆ ☆ ☆
ちっくしょ!行きはよいよい帰りは怖いってか!?何でこんなに魔物がいるんだよ!
帰っている最中に急に魔物の群れに襲われた、数は…数え切れない位だ!正直こちとらもうくたくた何ですがねぇ!?
「リクト君!フォーメーションアヴァランチで行こう!」
「あいよ!」
フォーメーションアヴァランチは、俺がアマネの能力による強化を利用して、魔物の群れに突っ込み陣形を崩してから、その隙だらけの魔物の群れに高火力の遠距離攻撃を与える事、ネルがいないから陣形を崩すだけだけど、それでもフォーメーションとしては可能だ!
「突き破ってやる!」
アマネの強化の恩恵を受けた俺は、剣を真正面に構えて全力疾走した。
その速度は多分他の魔物からは認識するのが難しいレベルの速度、ある程度魔物の群れを強引に突破したら、その中心部から無属性の魔法を込めた剣で周囲を薙ぎ払った。
「ガォォ!?」
よし!良い感じだ!
「一旦下がって!」
アマネの指示に従って下がると、アマネはバイオリンを使って音を出す。
「えぇい!」
その音は衝撃に変わり、体制が崩れた魔物達を攻撃した。音を操る能力…中々使えるな!
「なら俺も!」
ここで、常識を無視する!…えっと、どうしよう。アマネだけで正直倒せるんだよなぁ…うーん…あれ?常識凌駕の使い道を見失った…い、いや!まだあるぞ!
『人は念じるだけじゃジュースが入った水筒を作り出せない!』
__創造
っ!?
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「リクト!?」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!
あがぁぁっ!!頭が、割れるようだ!!何だこれは!痛すぎる!いや、痛いなんて次元じゃない!言葉通り、頭がわれるような…!
「ぐぁ……」
うあ、ま、まわりがぐるぐるまわって…
体が地面に落ちた感覚と一緒に、俺の視界も暗く染まって行った、最後に見たのは前の世界で愛用していた俺の水筒だった。
『報告、リクト・アルタイルが特別能力常識凌駕から派生した能力唯一能力物質創造を獲得しました。また現在のリクト・アルタイルではこの能力を使いこなせません。
また、物質創造を獲得したため、唯一能力物質破壊を獲得しました、また現在のリクト・アルタイルではこの能力を使いこなせません、またこれらの能力はリクト・アルタイルにはその時が来るまで認識できません』
主人公成長しすぎ?S級にはまだ余裕で蹂躙されるレベルですよ、刀使っても。




