第二十七話:試験開始!
魔物は魔石を失うとその肉体を崩壊させる。
魔石には様々な用途があり、物によっては高値で取引される。
「ここが試験会場か!」
俺達は特に問題も無くレイダル遺跡に到着した、レイダル遺跡は本当にゲームで出てきそうな遺跡の形をしている、構造的に見た感じ地下に潜って行くような遺跡なんだろうか?
試験は簡単だ、この遺跡の奥にあるパワースポットと呼ばれる場所で冒険者組合から渡されたマルマストーンという石にパワースポットの力を込める事。
そしてもう一つ、この遺跡はやっぱり魔物が出現するって事だ、出現する魔物は主にスケルトン種が多い事、やっぱり遺跡ってだけはあるのかね。
「よし、行こう」
俺は先頭で、アマネはその後ろを若干距離を置いて付いてくる。
遺跡の中に入ったら、それ程暗くはなかったけれど外に比べればやっぱり暗いな。
俺は事前に用意しておいたランタンに火を灯し、腰に付ける。
周囲に気を配りながら、慎重に遺跡を進んで行くと広く開けた場所に出た。
「見て見て、これ」
アマネがそこで何かを発見したのか俺を呼ぶ、アマネが見せたかったのはどうやら遺跡の所々で鈍い光を放っている鉱石なんだろう。
俺は一つ手に取って、それを持ち歩く事にした。今は少しでも光があれば良いと思った結果だ、石をベルトの右太股に付けてる小さな袋に入れておく。
袋越しでも光を放ってるから、無いよりはマシ程度に考えておこうか。
「ケギャギャ」
「スケルトン!」
どうやら魔物さんのお出ましみたいだな、数は四体か…思ったより暗くないせいか相手の姿が良く見えるし、スケルトン程度なら危険じゃない。
「アマネ!援護を!」
「うん!」
アマネは弓を引き絞り、スケルトン四体のうち一体の頭部を撃ち抜く。
スケルトンの陣形が崩れた所を狙い、近くにいたスケルトン二体の胴体を剣で力任せに切りつける。
まだ三体共動くな…おっと、余所見してる場合じゃなかったな。
「キシャァァ!!」
無傷のスケルトンが俺に向かってボロボロの銅の剣を振ってくるけど、俺は難なくそれを受け流してから三度切りつける。
そのスケルトンは足の骨を砕かれ、地面に倒れる。その際に素早く魔石を回収して一体のスケルトンを戦闘不能にする。
アンデッド系のモンスターは魔石を抜かない限り時間と共に再生するから、素早い行動が鍵になる。
「次!」
残りの三体を片付けるため、俺はスケルトンに向かって駆け出した。
「ふぅ…」
「ま、魔物多いね」
スケルトンを片付けた後も次々と魔物が襲ってくる、スケルトンだけではなくゾンビーやファットバットとか、ゲームのダンジョンで序盤で出てきそうな魔物がわんさかと。
流石に連戦に次ぐ連戦で疲労も少なからず溜まってきていた。ここまでくると流石に休憩を取りたくなるな。
「セーフポイントとか、無いのか?」
こういう場所は魔物とかが出てこないような場所があるのがセオリーなんだけど…
「それにしても、溜まったな」
魔物を相手にしているおかげで、袋の魔石も大分溜まっていた、これを売りに出すだけで最低でも銀貨40枚は稼げる筈だ。うん、ぼろ儲けだな♪
「そうだね…でも、銀貨とかじゃなくて紙幣とかにしてくれないかなぁ、私まだこの世界の金銭感覚が掴めないよ」
「銀貨=千円札って覚えれば楽だぜ、金貨は知らんがな」
「えっと…?」
「後でレクチャーしておくよ」
ま、銅貨とか銀貨だけじゃなくって元の世界で言う百円玉とかに値する通貨もあったからな、いわゆる重銅貨がそれに値するんだが…やっぱりそこら辺は複雑なんですよねぇ…ん?そういえばこの国は商業国家だっけか?お、いいこと思いついたぞ。まぁそれは後にしてと…
「おっ」
ここは…今までとは雰囲気が違うな、開けた場所でこの先の道は無い行き止まり、だけどその中心部が何か小さな光の柱みたいになっていた。ひょっとしてここがパワースポットか?
「ねえ、もしかして」
アマネが期待を込めた表情で俺を見つめてくる、そして俺も期待しながら袋からマルマストーンを取り出してその柱にマルマストーンを入れる。
触れていると、不思議と入れている部分が暖かく感じた。
「わっ…!」
やがてマルマストーンは紫色に光出した、きっとこれで試験は完了だな。
「やったねリクト君!」
アマネが大喜びしている隣で、俺はふと感じた。まだこの先がある事を…直感的になんの根拠も無いけれど、ここはこの場所だけじゃないって。
そして…
「パワースポット、ねぇ」
ゲームとかじゃこういう場所で封印されていた武器があるとか、または封印されてた武器の封印を解くっていうのがあるんだけれど………ちょっと試してみるか。
「よし」
俺は左腰に付けてる天翔大鷲をパワースポットに突っ込んで見る
「リクト君?何やってるの?」
「いや、こういうのってゲームのイベント的に伝説級の武器の新たな力を解放するのに必要かなーってさ」
「本当にそれどこで手に入れたの?」
「ん、内緒」
…暫く突っ込んでいるけど、特に何も反応は無いか?俺の思い過ごしだったのかなぁ…
__カッ!!!__
「なっ!?」
「ひゃあ!?」
突然、辺りが眩い光で溢れ出した。目が眩んで周わりが見えない!
「ぐぅ…!」
段々目が慣れてきて、周りの景色が見えてくる…そして見えた光景に、俺は言葉を失った。
「嘘…」
アマネも言葉を失っただろう、俺も言葉を失ったから当然だ。そこにあった光景は…
「な、何でだぁぁぁ!!?」
遺跡の外だったから。そう、俺達は遺跡の外にワープしたんだ。
「え?え?」
「お、落ちつけ!落ち着けよー俺ぇ!」
ワープなんてこっちの世界に来ても初めて、しかもあんな何か出てきそうな現象起こしておきながらこんなオチ…うっそだろ…
色々と力が抜けた俺達は、暫くその場から動く事ができなかった。
『報告、天翔大鷲のリミッターが一部解除されました。これにより固有能力「空間転移」が使用可能になりました』
銅貨系統
銅貨1=1円
重銅貨=10円
銅銀貨=100円
銅銀貨は10円玉に100円玉のギザギザが付いたイメージ。重銅貨は彫られてる模様と重さが違う。




