第二十五話:早くも動き出す物語…だが、まだまだ先
二章はほのぼのです。
ぶっちゃけた話し、C級って大したこと無いんだなって思った。まあこいつが大したこと無いだけだと思うんだけどな…というかそう思いたい。
それにしても、あの名前すら知らない冒険者との一戦以来、俺達のパーティは注目されていた。
特にネルが注意を浴びていたな、数少ない文字詠唱の使い手というだけで。
おかげでネルが宿屋に引きこもりたいって耳打ちで行ってくる始末、ちょっとだけいい匂いがしたのは内緒だ。
でも、ネルの気持ちも分からなくもないな。何ていうかプレッシャーが凄い。
あ、後ルミナさんはB級の冒険者だったよ、あれからルミナさんにお勧めの依頼とか何を意識すれば良いかとかの簡単なレクチャーを受けた。
「帰りたい…」
隣で嫌そうな表情を浮かべながらネルがボソッと呟いた。
そりゃ美少女でしかも強いと来たら注目浴びてもしょうがないよなぁ?実際男性の中には嫌らしい目で見る奴もいるっちゃいるしな。
「所で私達はこれからどうするんですか?」
「んー…」
いや、短期的な目標は決まってるけどこれといった過程はまだ決めてないんだよなぁ。取り敢えず安めの家を買って、そこからランクを上げていくってのもアリだけど…
この怠がりな仲間、一度家を手に入れたらずっと引きこもりそうで若干心配なんだ。
だから、高値でもローンを組んでお金を払って行きたい。なるべく俺達の希望に沿った家を。ということで
「まず軍資金稼ぐぞー」
「依頼?」
「おう」
ネルの言葉に頷き、丁度興味があった依頼を受けようと思う。
俺は依頼の用紙が貼られている掲示板に近寄り、それを手に取った。
「探査…早速開拓するの?」
「報酬も良いし、何より難易度もそこまで高くないからな」
手に取ったのは、近場にある魔物の巣の探索。
最近魔物が活発化している為、調査を依頼したいとの事だ。
勿論内容も良く確認しておく、活発化といっても魔物はそこまで強い訳じゃない、ただ見慣れない名前があるのも事実だけど。
「ウェアウルフ、スケルトン、スネークヴァイター…わぁ、本当にRPGみたいだなぁ」
依頼の用紙を覗いてきたアマネはそう呟いた、実際俺も初めて見た時は同じ感想だったからな。
そうなると、色々と準備が必要になるな。
「とにかく今日は宿を取って休もうか、色々あったし…何よりこの都市に到着したばっかだからな」
「初めて来たとは思えない程に濃い一日だったよね」
アマネが苦笑しながら言ったことに、俺も同意する。
本当に今日は色々と疲れる一日だったよ、俺も冒険の準備が出来次第さっさと休もう…
俺達はギルドに依頼を受ける事を告げてから宿屋を探す事を職員さんに伝えたら、お勧め宿屋も紹介してくれた。
簡単にお礼を言った後に、俺達はその宿屋に向けて歩き出した。
☆ ☆ ☆
「ん?」
ふと、何かに呼ばれた気がした、誰かが俺の名前を呼んでる…そんな気が。
「ごめん、ちょっと先に行っててくれ」
「アルタイルさん?」
皆に断ってから俺は声が聞こえる方に足を運び出す。
暫くしてから、暗い路地に入る。そこにいたのは金色の毛並みをした一匹の狼だった。
そいつは俺が来たのを見ると、俺を品定めするような視線を向けてくる。
「お前が、俺を呼んだのか?」
俺はそいつに訪ねると、そいつは鼻を鳴らして俺の目を見つめた。
そして、また声が聞こえてきた。
__難儀な物だ、奴が選んだ人間が、こうまで奴に魂が似ているとはな。今代の勇者がこうまで似てるとは、意外な物だ__
奴が選んだ人間?それに今代の勇者?一体何の事だ?それにその言い方じゃ、まるで勇者が何度も召喚されているような…
__そして、世界に影響を及ぼす程の力か…だがそれは単なる付属品だろうな。重要な事を汝に告げる。奴に選ばれた時点で、汝は既に運命に巻き込まれた事を知れ__
選ばれたから、運命に巻き込まれたって?こいつは何を言いたいんだ?それに俺の力が付属品?
__我が選んだ人間が汝と手を取るか、それとも相対するかは…汝次第だ、その手を取るか取らないか…少なくとも奴は手に取ったがな__
「待ってくれ、ちゃんと説明してくれよ!」
急にこんな事を言われたから、思考が混乱する。聞きたいことは山ほどあるんだ!
「今代の勇者って何の事だよ!?それに、お前が選んだ人間?俺が選ばれた?説明してくれよ!」
__自身で理解も得ずに、他者に答えを求めるか…まだ未熟だな__
「なっ!?」
__少なくとも貴様の元には遠からず星が集まるだろう、その時に我等の星と雌雄を決する事になる、その時に汝がどう選択するか…見届けさせてもらおう__
瞬間、目の前から狼が消え去った。まるで最初から何もいなかったかのように。
選択がどうとか、雌雄決するとか、意味わからない…というか、俺はただこの世界に来て色々な物を見たいだけなのに。
どうも、厄介事が増えそうな気配がするな…本当に、今日は色々と…はぁ。
とりあえず宿屋に向かおう…
その時に俺は気が付かなかった、左腰に付けている星の武器がまるで再開を喜んでいるように鈍く光っていたのを。
そして世界は動き出した。狼と鷲の邂逅によって、世界の力を持つ者は動き出した。
魔の王はそれを懐かしむような素振りを見せ、傾国の少女は自国を飛び出す程の興奮を覚え、竪琴は愛しき彼に相応しい存在を見極め、白鳥はその二名を支えるべき人物を見極め始める。
また、狼は鷲と対抗するに相応しい人物を見極め、子犬は太極を見れる人物を見極め、狩人はそんな二人の矢となる人物を見極めに動き出した。
神話の再現は、近い。
ぶっちゃけた話し、リクトに喧嘩売った奴はC級の中でも下の下です。




