第二十二話:新たな地へ
今回から第二章ですが、こっちはほのぼの異世界生活になりそう。
なりそう
村での休息を終えてから、俺達は出発した。
道中は特にトラブルも無く、平和に勧められた。その結果俺達はなんの問題も無く、クヴェランド王国の首都であるリーンネイションに到着できた。
商人達の護衛をしていたということもあり、首都に入る前の身分証明はステータスカードのチェックだけですんだ。すんだんだけど…その時にリクト・アルタイルのまんまだったから、門番の人に変な目で見られた。
これからは出入りする際にステータスカードの提示はしなくても良いらしい。一度提示したら登録所のような所に記録されるからだ。
それにしても…
「凄い…」
凄い。とにかく凄い。クヴェランドは色々な種族の人が街を歩いている。
獣耳と尻尾が生えた人や、背が極端に小さい人、逆に体格がとてつもなく大きな人もいるし、エルフみたいな耳の長い人もいる。
感動した。こんなの日本にいた時は二次創作でしか見られない光景だと思っていた。
けど、現実に俺の目の前に存在する!
「す、凄いよ!色んな人がいっぱいいるよ!」
アマネも目を輝かせて周りを見渡す。実際俺もそんな感じだ。
「クヴェランドは商業国家で有名な国。色々な種族が集まって商売する」
「そうか、だからあの商人達の人は」
「そう、クヴェランドで商売する事を決めた」
ネルの言葉に納得した。確かに色々な種族の人がいれば商売も繁盛するし、人との繋がりも出てくるよな。
「クヴェランドは冒険者も変わってる。リオナオンは戦闘特化だけど、クヴェランドは開拓に特化している」
「つまり、どういう事なんだ?」
「迷宮を新たに発見、攻略したり未開拓の土地を開拓したり…簡単なお手伝いや魔物の討伐まで幅広く、冒険者の従来の目的でもある何でも屋を重点的活動している。そして三カ国の中で一番冒険者が冒険者らしい事をしているとも言える」
ネルの説明を受けて、益々ワクワクが止まらなくなってきた。
「アルタイルさん、凄くいい笑顔ですね!」
「そりゃそうだ!」
こんな説明を聞いて、ワクワクしない男がいるか?いいや、いないね!
魔王討伐なんかより、ずっと面白い!迷宮を攻略してお宝をゲットしたり、未開拓の土地を開拓してまた迷宮を発見したり。
ああ、早く冒険したい!この異世界を隅々まで!
「意外、リクトにも子供っぽい所があった」
「何だよ!ロマンを感じないのか?こんな事やろうと思っても中々できないんだそ?」
「まぁ、確かに未知には興味はあるけど、私はやっぱり余り動きたくないな」
「何だよ〜」
やっぱりネルは自分が動くべき時が来ないと動かないのか?ネルの力はかなり助かるんだけどなぁ。
「でも、私達って結構バランスの良いパーティだと思うんだけど…」
アマネの言う通りだ。俺達は何だかんだ近接二人に遠距離二人がいる。
けど欲を言えばもう二人は欲しいんだよなぁ、ゲームでいうと盾役、それかデバフ役かヒーラー。
バフと支援ははアマネ、後衛火力はネル、近接火力は俺とマナ。まぁマナの詳しい実力はまだ分からないけれど、クロウの妹だし強いとは思う。
だけど、この中で盾役がいないから…そういったメンバーを新しく加えたいってのが心の中にある。
まぁ、今はこのメンバーで出来る事をやっていこうかな。
「とりあえず、冒険者組合に行こうぜ。そこで今どんな依頼があるかとかを見たい!」
もう待ちきれない、早く行きたい!
「さ、先に行ってるぞ!」
だめだ我慢できない!早く冒険者組合に行っていよう!
「ア、アルタイルさん!私も行きます!」
「おぉ!来い来い!」
ここからだ!ここから俺達の本当の冒険が始まるんだ!
「うぅ、リクト君…可愛いなぁ…」
「アマネ、ニヤケ顔が不気味」
「ネルちゃんこそ鼻血出てるよ」
「おっと、失礼」
☆ ☆ ☆
「うぉぉ…!!」
凄い広い、最初に来た冒険者組合よりも全然広いし、色々な種族の人がいる!
「ア、アルタイルさん早いです!」
「あぁ、ごめんごめん!でもさ!見ろよこれ!」
「え?…わぁぁ!」
俺が中を示すと、マナも花が咲いたような綺麗な笑顔を見せた。
「凄いです!これがクヴェランドの冒険者組合なんですね!」
「あぁ!本当に冒険って感じがする!」
凄い、それしか言葉が見つからない。
グリスレムの時は異種族はエルフしかいなかったけど、ここにはそれ以外の沢山の種族がいるし、冒険者の雰囲気もまちまちだ。
「や、やっと追いついたよリクト君!」
「二人共早い」
遅れてアマネとネルがやってきた。
二人共息を切らしている、でも仕方ないさ。俺の溢れるワクワク感が止まらないからな!
「男の子ってみんなそうなのかな?」
「そうだぞ?男はロマンを求める生き物だ!さあ、ここで登録をしようぜ!」
俺達は、冒険者組合の冒険者登録所を目指して進んでいく。すると何処からか
「おいおい、あの武器って…」
「ああ、天翔大鷲のレプリカだよな?」
「アルタイルに憧れる新人って所か?」
「さっきも新人っぽい雰囲気出してたからな、まぁあそこまで露骨だと逆に可愛いもんだがな」
「そう考えると、リオナオンで登録しなくて良かったなあいつ」
ふむ、やっぱり偽物だと思われてんのなこれ。
まぁ当然か、本物持ってるなんて想像もしないよな。
「いらっしゃいませ、クヴェランド、リーンネイション冒険者組合にようこそ!私はリーネ・シゼリスと申します!この冒険者組合総合案内受付を務めさせていただいております!本日はどのようなご要件でしょうか?」
受付は前と同じようなエルフのお姉さんだった。彼女は燃えるような赤髪に黄金の瞳をした柔らかい雰囲気を纏った女性だった。
「俺達はパーティを組んでいるんだけど、パーティで登録をしたいんだ」
「かしこまりました!それではリーダーのステータスカードの提示とパーティ名の申請をお願いします!」
あ、リーダーだけでいいのね。それとパーティ名の申請か…仲間の方を見てみると、ネルは興味無さそうに欠伸をして、マナとアマネは期待してそうな眼差しを向けてきた。
あぁ、俺が決めろって事ね。うーん…この世界はアルタイルといい、元の世界の星が深く関わってんだよなぁ…よし。
「銀河…銀河の冒険団です!」
「かしこまりました、銀河の冒険団の皆様ですね!…はい!登録完了です!これからのご活躍頑張って下さい!」
さあ、ここから俺達…銀河の冒険団の始まりだ!
(リクト君がロマンチスト説出てきたなぁ)
(眠い…)
(カッコイイです!素晴らしいです!流石です!)
☆ ☆ ☆
ある土地にある牢屋、ここでは一人の青年が長い年月の間幽閉されていた。
そしてその牢屋に、一人の青年が近寄り、牢屋にいる青年に声をかけた。
「よぉ、レグルス」
声をかけられたレグルスと呼ばれた男は、牢屋の外を見て驚いた。
その男は現在行方不明になっている自分の仲間の一人だったからだ。
「あ?ってかお前…良くここまでこれたなカストル。お前だけか?銀髪長髪碧眼の…なんつったっけか?」
青年__カストルには双子の妹がいる。似てないと良く言われるが、立派な血を分け合った妹が。
いつも隣にいる彼女がいない事を不思議がったレグルスは、カストルに聞いてみる。
「アルヘナは置いてきた、あいつは優しすぎるからな…これから起こる出来事には関わらせたくない」
「お前は相変わらず、妹には優しいな」
カストルの返答に、満足そうに呟くレグルス。そんなレグルスの様子を見て、前から聞きたいと思っていた事をカストルは聞いた。
「たった一人の家族だからな、で…お前はいつまでここにいるんだ?」
「そりゃ許されるまで」
「相変わらず律儀だな…」
カストルはレグルスの答えを聞いて、レグルスは相変わらずの奴だと思い、今回ここまで来たことの本題を話し始める。
「一人の勇者に会った。そいつはアルタイルに選ばれたよ」
「ア、アルタイルに…!?」
「それだけじゃない、もう一人の勇者にはベガの気配も感じた」
「はは…んで、デネブは?デネブは誰だ?」
「まだ分からないが、少なくとも、選ばれた者と合流はするだろう。そして七天の気配も感じたがな。強欲と嫉妬、そして色欲と傲慢…それが今代の勇者の性質だ」
「そうか、これで七天は揃ったか」
「ああ、既にいたのはリオナオンの怠惰、クヴェランドの憤怒、グリスレムの暴食だけだったからな。これで…後はシリウス、ベテルギウス、プロキオンが揃うのを待つのみ」
「そして、計画が始まるか…」
二人の間に、緊張が走った。
計画の遂行、それが何を意味するか…それが分かるからだ。
「伝えたかったのはそれだけだ」
「おうすまないな、こんな所じゃ外の様子も分からんからな」
「計画が始まれば、お前も解放されるだろ。それまでの辛抱だ」
「そうだな…んでお前は?近況はどうよ」
「…想像に、任せる」
そう言い残し、カストルは牢屋を去った。
レグルスは彼の背中を黙って見送り、去ったのを確認するとボソリ、と呟く。
「カストル、お前のその様子だと、今代の勇者のどれか…そいつが何かをやらかすと思ってんだな?親友として止めるべきか手伝うべきか…俺も、見極めてえなぁ、今代の勇者…その為にも、こっから出してくれそうな口実を考えとくかね」
ほの…ぼの?
主人公のやりたい事がこれから沢山できそうで、ワクワクが止まらないようです。




