第十九話:主人公には良くある事
またまた日常回。
拠点に戻ったら、今までの疲れがどっと吹き出してきた。
今日だけでも盗賊の撃退(そんなに疲れてない)、ゴブリンの群れとの戦い(ほとんどクロウが倒してた)、挙げ句の果てにはゴブリンロードとの死闘だ。(これが一番キツかった)
正直、ゴブリンロードとの戦いはステータス補正が無かったら死んでいた、それ程の強さだった。
まぁファンタジーとは無縁の場所から、いきなりこんな場所にやってきたんじゃ当然なのかもしれない。
でも、俺は生きている、戦える、剣を振るえる。
「案外、できるもんだな」
最初に一人でゴブリンを倒した時も、まるで当たり前のように斬ったりできた。元々そういう素質があったのか…だとしたら随分と物騒な素質だ。まぁこっちで生きる場合は願ったり叶ったりな才能だけどな。
「すぅ…すぅ…」
すっかり眠ってるアマネを起こさないように、そっと自分の寝床に入る。
そういえば、カズト君達はどうしてるんだろうか?今頃勇者として活躍しているんだろうか?
死んでなければ良いんだけどな…
駄目だ、眠い。
まぁ、今日はもう見張りの交代も無いし、少しは休んでおこう……………
☆ ☆ ☆
とある大陸にある巨大な城…通称魔王城。そこでとある集団が集まっていた。
各々見た目も種族もバラバラな者。そんな12人。
通称、天道十二門。その者達は大きな机中心に、囲むように座る。
「集まったな、天道十二門よ」
そして席で一番豪華で丁度中央に位置する席に座るのが、魔王城の主である魔王であり、この者達の主である。
「相も変わらず双子、獅子、天秤、乙女、山羊の座は空いたままか」
魔王が溜息を付きながら呟く。
「仕方ないよ、天秤と山羊と乙女は呼んでも来ないし、獅子に関しては無期懲役の幽閉状態。それに双子は探そうとしても見つからないしね」
蟹の描かれた席に座る、奇抜な服装の小柄な少年が、知恵の輪を弄りながら魔王の呟きに答える。
「獅子の奴も、そろそろ反省すりゃええんじゃがのう。儂等の同士が幽閉されとるのを見りゃあ、そりゃあ気の毒だと思うんじゃが…のう?魔王様や」
次に魚の描かれた席に座る老人が、魔王にそれとなく聞いてみるが。
「ふむ、まぁ検討はしておくか。獅子の資格を持つ者も現れそうにないしな」
魔王にとっては苦渋の決断だが、それ以外に道が無ければその方法を取る気でもある。
それを聞いた老人が嬉しそうに自分の髭を弄りだした。
「ぁ、ぁの…どうして私達を集めた…んです?」
羊の絵が描かれた席に座る少女が、恐る恐る魔王に訪ねた。
「この場に双子か天秤がいれば話は早かったのだがな…まぁ仕方ないか。諸君…暫く前から世界に干渉する力が発覚した」
その言葉に周囲がざわついた。
髭を弄っていた老人は目を細め、知恵の輪を弄っていた少年は獰猛な笑みを浮かべ、気弱そうな少女は涙目になった。
「ほほう、では計画を早めるつもりかのう?」
「その通りだ」
魔王の答えに、更に周囲がざわついた。
計画は3年後で、それまで狂いが一切生じなかった計画に初めて狂いが出たからだ。
「イレギュラー…成程成程、私の計算が狂うとは、面白くなってきましたねぇ」
弓が描かれた席に座る眼鏡をかけた青年が、愉しそうに笑い始めた。
「魔王様、では動かれるので?」
蠍の絵が描かれた席に座る青年が訪ねるが、魔王は首を横に振ってこう答えた。
「今すぐ動く訳では無い。先ずは見極める必要がある。アリエス、キャンサー」
「は、はぃぃ!!」
「うん」
魔王の呼びかけに答えたのは、蟹の席に座る少年と羊の席に座る少女だった。
「両名に命ずる、今代の四人の勇者について調べるのだ」
「勇者?確か今代の勇者はカズト、スズカ、アマネ、リクトの四人で、そのうちリクトとアマネは調べる価値も無い雑魚との話ですが?」
「念には念を入れてだ。今は手掛かりが欲しい、無駄にはなるまい」
弓の席に座る青年の疑問に魔王が答えると、青年は納得したように頷いた。
「了解したよ魔王様、この僕…レイジ・キャンサーがその任務、遂行してみせる」
「ハ、ハナ・アリエス。了解ですぅ!」
「期待している」
こうして、彼等の会議は終了した。
☆ ☆ ☆
「んあ…」
ま、眩しい…朝か。
野宿なんて初めての経験だったけど、意外と眠れるもんだ…
くぁ、眠っ……今何時だ?
まだ眠いな、二度寝しようかなぁ…
くにゅん。
ん?何だ?クッションみたいな感触が
「んぅ」
ん?俺の横からなんか変な声が…
もにゅっ
「んあっ…」
あ、なんか気持ちいい…っ!?
「な、何でアマネが!?」
ど、どういう事だ!?何でアマネが俺のすぐ隣にいる!?
「にへへ、あったかぁい」
呑気に寝言言ってる場合か!
むにょん、むにゅん
「あ、ふぁぁ…」
あ、意外とあるな。じゃない!何故俺は揉んでいる!
むにゅむにゅ
「んにゃぁぁ………」
「な、何でだ!?手が離れない!」
「おい」
「くそ!これは魔物の仕業だ!俺の両手を磁力でくっ付けたに違いない!暴れれば暴れる程に柔らかい!何て最高…卑劣な!」
「おい」
「何だよさっきから!今いい所」
「死ね」
「ぐはっ」
あ、頭にダイレクトアタック…ネ、ネルか…
く、くそ、意識が…あ。
「し、縞パン」
「もう一回死ね!」
ぐはぁ!?
ついにパーティ全員がラキスケ?の餌食になりました。




