第十六話:能力解放!ネルの実力 part2
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「第一陣から第十二陣、一斉掃射」
魔法補充で補充されていた分の文字詠唱魔法を一斉に放つ。
炎、氷、雷と色々な属性の魔法が奴を襲う。
「グォォッ!!」
効いてはいる、でも油断はしない。
相手はAランク、元々戦う予定だったのが今になっただけ。
なら、次はこれを使うだけだ。
「走れ豪炎、焼き尽くせ業火。ブレイズストライク」
炎の上級魔法、それと同時に
「魔法連携」
私の能力を使う。
「グラウンドノヴァ」
土属性最上級魔法、グラウンドノヴァ。
これを使ったら地形が変わるけど、致し方無い。
「アグォァ!!」
炎に飲み込まれ、もがくゴブリンロードにそいつの周囲の大地が盛り上がり、一斉に土の槍がゴブリンロードを貫く。
そして、盛り上がった大地がゴブリンロードを飲み込んで行った。
ゴブリンロードが立っていた大地には低めの山が出来上がり、その周囲の大地は陥没していた。
グラウンドノヴァを喰らって生きてる魔物なんて、数える程しかいない…っ。
「フラフラする」
「ネ、ネルちゃん!」
力を使い過ぎてガス欠気味か、本当燃費悪いな。
でも奴は倒した………
「グァァァ!!!!」
地形が変わった大地かは緑色の腕が生えてきた。
奴はまだ、生きていた
「冗談」
私がそう呟いた瞬間、グラウンドノヴァによって出来た大地を吹き飛ばしながらそいつは現れた。
「全く、最近のAランクは成長してるな」
私が知ってる限りの魔物なら、これで決まってたんだけどな…前よりも魔物の質が上がってるのかな?
そんな事を考えながら杖を構えたら
「ネ、ネルちゃぁぁん!!!」
__え?__
「ごっ!?」
「グルゥ…」
な、にが
気が付いたら、私の身体が空へと弾き飛ばされた。
口の中を私が苦手な味が広がる。いや
「ご、ぼぉ」
血だ。
内蔵でもぐちゃぐちゃに掻き回されたかな?
誰が見ても分かる、これは致命傷。
不味い不味い不味い不味い!
このままだと全滅する。
「回復陣一陣…ごふっ!?」
血を吐きながらでも、補充していた回復魔法を使う。
目が霞む、でも相手を見るんだ。
でも、不味い。補充している魔法も心許ない、数でも威力でも駄目だ。
このままじゃ………
__バイバイ、ネール__
「ッ!!もう誰も!死なせない!!」
致命傷を負った?身体は動く。
血を吐いて詠唱が上手く行かない?気合いでどうにかしろ。
これ以上は無謀だ?可能性があるでしょ。
私の前でもう大事な人を死なせる訳にはいかない。
_私の過去を何も聞かないでも、私と一緒にいてくれる二人の為なら…!_
「私はまだ、生きている!」
さあ、こっちを見るんだ。
その瞬間、お前は死ぬ!
「だ、駄目!ネルちゃん!」
「グァ?」
奴が私を見た、ここだ!
「魔法陣構築完了ッ!!」
三十を超える魔法陣が、私を囲む。
これが私の全てだ、喰らえ魔物!!!
「全補充魔法陣一斉掃射ァァァァァ!!!!!」
私が放った魔法は、轟音と共に奴を飲み込んで行った。
今度こそ終わったの…?駄目、もう動けない。
「ギャオオオオ!!!」
え?そんな、まだ生きてるなんて
もう駄目だ、全てを出し尽くした。
もう一つの手札は今は使えないし、私の全てを出したのに奴は生きてる。
これはもう、Aランクなんてものじゃない。
まさか、伝説級の…なら、こいつはゴブリンロードじゃないの?
「ネルちゃん、こっち!」
アマネが倒れた私の前に立つ。
駄目、あいつの前に立ったら
私でも攻撃を見切れなかったのに、貴女が立ち塞がっても。
「弓じゃない本物の楽器で!」
アマネがある物を取り出す、あれは確かハーモニカ?
アマネがそれを吹いたら、あの魔物が頭を抑えて苦しみはじめた。
これは、アマネの能力なの?でも……
「グガァァ!!」
「駄目、こんなんじゃ倒せない!」
アマネの能力は、きっと援護に突貫している。
そんな彼女じゃあいつは倒せない。
「か、彼女達を守るんだ!」
「やぁぁぁぁぁ!!!」
他の冒険者がゴブリンロードに立ち向かうけど、ゴブリンロードはそれを無視して私達を見る。
この中で誰が一番厄介か、分かってるんだ。
だからこそ、あいつはまるで邪魔な無視を叩き落とすような仕草で、周囲の冒険者を蹴る。
それだけで、冒険者達は動かなくなった。
「やあぁぁ!!」
アマネが叫びながら弓矢を放つけど、ゴブリンロードはニヤニヤと笑いながら近付いてくる。
「そんな…」
もう、打つ手が無い。
また、私は大事な人を死なせるの?
でも、もう動かない…
「諦めない!私は絶対!」
アマネ、でもこの状況じゃ…
「死なせない!ネルちゃんは絶対に!」
「アマネ…どうして?」
どうして?どうして諦めないの?
もう、こんな絶望的な状況なのに、何で貴女は…
「諦めたらそこで終わりなんだ!死んじゃうんだよ!私は死にたくないし、ネルちゃんも死なせたくない!だから私は諦めない!絶対に!!」
アマネ………
そうだ、何を諦めていたんだ私は!
さっきの誓いは何だったの?思い出すんだ、さっきの心を。
可能性がある限り諦めない…!
「あ…あぁぁぁぁぁ!!!!!」
ほら、立てた。
ほら、動けた。
じゃあ次は、反撃の時間だ!
「ネルちゃん!」
「アマネ!」
魔力を練る、もう補充は切れた、なら次は詠唱の魔法だけ。
出来れば文字詠唱が望ましいけど、それじゃ威力が弱まる。この場合どっちが正解?
「グァァァ!」
考える時間はくれそうに無い!
回避をっ!
「あっ」
駄目だ、私達の後ろにはさっき吹き飛ばされた冒険者がいる。
女の子だ、目が開いている。まだ生きている。
守らないと、でもこいつの迎撃をしないと、私達もろとも!
「逃げてください!」
女の子が叫ぶけど、遅い。
私とアマネは躊躇った。それが決定的な隙になった。
あいつの持つ棍棒が、目の前に
「ギャアアア!?」
えっ?
ゴブリンロードが、吹き飛ばされた?
「悪い、遅れた」
「マナ!無事か!」
「お兄ちゃん!!」
そこにいたのは、一人の見知らぬ冒険者と
「リクト…っ!」
私が良く知っている人だった。
『リクト・アルタイルの特別能力守り抜く者が発動しました。これより全能力が三乗されます』
能力説明
ネル・クライス
魔法補充
文字詠唱をストックする事ができるスキル。登録には第一陣から順にする必要がある、ただし最初に第一陣を使うと、次の第二陣は第一陣に繰り上がる。一気に使う場合も同じ。
尚、消費魔力量は変わらないので、一斉に発動すると想像以上の魔力を消費する事になり、一気にピンチになる事もある。
ただし、使用者のネルはとある事情により本来の魔力を十二分に発揮できないので、この力は本来の姿ではない。




