第十五話:能力解放!ネルの実力 part1
主人公の周りには、何時もトラブルあり。
鷲から貰った太刀を装備して、俺は拠点に戻りはじめた。
装備してから改めて感じるけど、本当にま殆ど重さが無いな。背中の剣でもある程度の重さはあるのに、こいつは存在しているのか?そのレベルで重さが無い。
こんな序盤で手に入る武器じゃないだろ…おっと、思考がゲーマー的になっちゃう。
この世界は現実だからな、そこの所は気を付けなきゃいけない。
現実…そう、現実なんだ。魔法とか魔物とかファンタジーに溢れた要素に包まれてるけど、それは全部本物の、本当の現実。
改めて怖いと思うな、でも今更か…
考え事をしながら歩いてると、直ぐに拠点に着いた…………?
何だ?騒がしいな
「キェェェェァ!!!」
ッ!?
鳴き声。人が出してるとは思えない程の異質な声が、俺のすぐ後ろから聞こえた。
同時にその場から反射的に前転する、直後地面を棒かなにかで殴ったような重い音が聞こえた。
「ゴブリン…!」
どうなってんだ?商人の人から聞いた話じゃここは、色々な人間が野宿をしてる影響で魔物が余り近寄らない筈だ。
まぁ、現れたならしょうがない
「グゲァ!」
攻撃が避けられたのが悔しかったのか、ゴブリンは真っ直ぐに俺に向かって来る。
丁度良い、コイツの初陣を飾るには物足りないが。
「少なくとも、肩慣らしには良いかな!」
腰に付けてる太刀を、抜く。
すらぁっと、水が流れるような自然で綺麗な動作でそれが抜かれる。
自分の武器だというのに、オレンジ色の刀身が余りにも綺麗な模様と刃の鋭さに魅せられる。
これなら、どんな奴が相手でも
斬る。
「「ゲゲッ?」」
ヒュン、と風が切れる音が聞こえた。
「「ガァ?」」
ゴブリンは、縦二つに両断した。
けど、ゴブリンはそれに気が付かない。
「「………アガ」」
一秒後、ゴブリンは大量の血と共に半分に別れて、そのまま物言わぬ屍となった。
「軽い!」
実際使うと分かる、こいつの異常さが。これはチートも良いところだ、この武器だけで暫くは軽い無双状態になる程に…だからこそ
「頼ったら駄目だ」
この武器をなるべく使わないようにしないといけない。
優れすぎた武器に未熟な技量、武器に頼ってばかりの状態になってしまう。
だから、ある程度の実力が付くまではこの武器は使わない。幸い重さは殆ど感じないから、邪魔にはならないと思うしな。
太刀を鞘に収めて、代わりに背中の剣を抜く。
とにかく拠点に戻らないと、状況を確認しないといけない。
☆ ☆ ☆
拠点に戻ったら、そこにあったのは混乱した戦場だった。
ゴブリン達が商団の荷物を破壊して、商人を襲う。
俺達以外の冒険者も応戦しているが、それでも状況は最悪に近い。
「この混乱具合、奇襲でも受けたのか?」
冒険者と商人の慌てようから見て、そう思う。けれど魔物にそんな行動が取れるのか?
ゴブリンは異世界じゃ雑魚にカテゴライズされている筈だ、当然知能も低い。
なのにこいつら、さっきから見てると連携紛いの行動も取ってやがるな、とても知能が低いとは
「あんた!何ぼさっとしてんだ!」
思考してると、一人の冒険者に声をかけられる。
「協力しろ!今この拠点はどういう訳か、ゴブリン共に襲われてる!」
「見れば分かるけど…なぁ、この状況おかしいと思わないのかよ?」
「思ってるよ!何で人間が固まってる所に警戒心の強いゴブリンが襲ってくるんだよ!しかも妙に手強いしな!」
やっぱり、この状況は普通じゃなかったんだ。
なら益々変だ、何で警戒心が強いって話のこいつらは、リスクを犯して攻めてきた?
それに、よく見てみると…
「ゴブリンって、どれ位の知能があるんだ?」
「どれ位って、何がッ!!だよっ!」
「それはっ!このっ!あぁ、こいつらが連携をする知能があるかどうかだよ!」
ゴブリンを斬りながら、質問をする。
「ある!が、そんなの首領となる存在のゴブリンロードがいなきゃ取り巻きのゴブリンにはできない!
それにある程度の実力があるゴブリンロードじゃなきゃ取り巻きのゴブリンに連携を仕込むこともな!それがどうした!」
あぁ、理解したよ!
「こいつらは!時間稼ぎって事がなぁ!」
「はぁ!?どういう事…んなっ!?」
時間稼ぎと分かったからには、急いで皆と合流しないといけない!
出し惜しみは無しだ!無属性魔法アタック、シールド、スピード、マジックブレイクを合わせた…
「この剣に断てぬ物は無し!ステータスブレイク!」
俺が剣で斬ったゴブリンは、全て動きが遅くなり、皮膚が柔らかくなり、攻撃が軽くなる。
魔法を使う奴がいないからマジックブレイクの効果は分からないけど、それでも充分だ。
ゲームでいうデバフ効果付きの攻撃、この世界じゃ闇属性魔法にカテゴライズされている攻撃。
でも、これは無属性による俺オリジナルの攻撃だ。
詠唱っぽいのはカモフラージュみたいな物だけど、あんまり意味無いだろうな。
「な、何だよ今のは!」
「説明は、後だ!」
それより今は、皆と合流するのが先だ!
俺の予想が正しかったら、多分
今度こそ、Aランクのゴブリンロードが来る筈。
☆ ☆ ☆
「あ、あぁ」
「何でだよ、何でゴブリンロードが…」
そこにいたのは、私が見たゴブリンロードよりも大きく、体格が凄い個体。
何、あれ?あれがゴブリンロード?
「まさかとは思った、ゴブリンに連携みたいな動きが見た時点で、もっと早く気付くべきだった」
ネルちゃんが普段より声を低くして、そう言った。
「気を抜かないで…あれが本当の…Aランク指定の」
ゴブリン、ロード。
そいつは、ニタリと不気味な笑顔を見せ、品定めをするような視線を私達に向ける。
「こ、このぉぉ!」
一人の男の人が、武器を持って突貫する。
「いけない!下がって!」
ネルちゃんが大声で呼びかけるが、遅かった。
一瞬でその男の人は、ゴブリンロードに叩き潰された。
無謀にも立ち向かった男の人の剣は、防がれること無く…男の人の攻撃ごと地面に叩き潰された。
その身体ごと
男の人は、全身が真っ赤に染まって地面に倒れた。
「ラ、ランスゥゥ!!」
その男の人と一緒にいた冒険者の人が、聞いてる自分も痛々しい気持ちになるほどの、悲痛な叫び声を上げた。
「あ、あ、ぁぁ」
震えが止まらない。
これが、魔物
本当の、魔物!
甘く見ていた、異世界召喚されてもやっていける自信があった。
私は、きっとここで…
「第一陣から第三陣にかけて、設置完了」
ふと、落ち着いた声色の声が聞こえた。
「落ち着いてアマネ、貴女は死なない。死なせない」
ネルちゃんの周囲には、無数の魔法陣が彼女を囲っていた。
「一斉掃射」
直後、爆炎が、氷槍が、暴風が、ゴブリンロードを襲った。
「グォォォ!?」
ゴブリンロードは凄まじい威力の魔法に押され、尻餅を付いた。
「私の手札の一つを見せよう」
そこには、何時もの怠そうな雰囲気を纏った彼女ではない、凛とした雰囲気を纏った彼女がいた。
「耐えようとしても無駄だ、私の魔法は世界を超える。魔法連携、魔法補充」
そして、次々と魔法陣が現れ
「第一陣から第十二陣設置完了、始めるが…耐えられるか?」
それが、解き放たれた。
ネルだって、やる時はやります。
魔法連携。本来魔法は詠唱をしないと魔法を使用できないが、一つの魔法を使用した場合この能力を発動すると、事前に設定した魔法同士で、連続で魔法が発動する。
例えばフレイムアローとサンダーアローを接続すると、フレイムアローの次にサンダーアローがほぼ同時に発動するという感じです。
まずはこの能力の説明を、次は魔法補充の説明をします。
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