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告白

作者: ゅぅリン

「初めて会ったときからあなたのことが好きでした。付き合ってください!」

「ごめんなさい。」

 放課後の校舎裏、俺の渾身の告白を藤村柚莉(ふじむらゆり)はいつもどうりの冷ややかな視線でそう返事した。

「これで何回目ですか?」

 彼女は頭をかかえそうつぶやいた。

「今回のも入れて61回目です。」

 俺は精一杯の笑顔でそう返した。

 彼女、藤村柚莉はテストでは常に学年トップクラス。中学時代は陸上部で全国大会に出たとかまさに文武両道の学校で知らない人がいないほどの有名人だ。

 入学式の日、俺はそんな彼女に一目惚れしてしまった。

「入学式の日から毎日のように、ほんと懲りないですよね。」

「それぐらい好きだからさ!」

 俺は折れそうになる心を何とか保ちつつ笑顔で返す。

「自分で言うのも変ですが私はモテます。」

 突然彼女は自慢げにそう言い、こう続けた。

「この用紙のこともあり男子からよく告白されるのですが、その度に『私のことよく知らないのに告白しな いでください。』と断ってきました。」

「だから俺は藤村のこと知ったよ!」

「そうですね。休み時間にわざわざ私のクラスまで来て、その度に私は『また来たのか』とうんざりしてい ましたが。」

 藤村の冷たい視線と冷たい言葉がグサグサと心に刺さる。

「一緒にお昼食べたくてお弁当持って教室まで行ったり」

「私は食堂に避難しましたけど」

 更に冷たく返され精神へのダメージが重く積みかさなっていく。

「放課後になったら毎日会いに行ったり」

 藤村は大きくため息を吐いて、

「その度に告白されるこっちの身にもなってくださいよ。」

 と心底うんざりした表情で言った。

「それでもちゃんと最後まで話聞いてくれるよね。」

 自然に微笑んでそう言うと彼女は少し俯いてしまった。

 二人の間に数秒間の沈黙が流れる。

「・・・・・松下くん」

 突然、名前を呼ばれ、俺は確かに、鼓動が早くなるのを感じた。

「名前覚えててくれたんだ!」

「さすがに覚えますよ。こんなに印象深い人なかなかいませんからね。」

「それでも嬉しいよ。この間なんて『松本くん』って間違えられたし。」

 俺がそう言うとし越し申し訳なさそうに視線を逸らした。

「そんなことより、松下くんは私のどこが好きなんですか?」

 彼女は少し恥ずかしそうに聞いた。

「え?!急になんで・・・」

「別に深い理由はありませんが、何回も告白されているので少し気になって。」

 照れながらも藤村は返事する。

「理由と言えるかわかんないけど・・・」

 いざとなると急激に羞恥心が増した・・・頑張れ俺!!

「えっと・・・最初はただの一目惚れだったんだけど」

「容姿ですか最低ですね。」

 突然いつもの真顔に戻り、とつもなく冷たい声でそう告げられた。

「お願いだから最後まで聞いて?確かに最初は顔だったけど」

「やっぱり容姿ですか最低です。」

「お願いします最後まで聞いてください!!」

 藤村の冷たすぎる態度に思わず土下座しそうになったけど間違いなくドン引かれるので深々と頭を下げ切実に願った。

 彼女は渋々と了承してくれた。

「最初は藤村のかわいい容姿に惹かれたけど、今は藤村の優しいところが好きだよ。」

 藤村は初めて俺の言葉に動揺しているようだ。照れて顔が赤く染まっているのがわかる。

「もしかしてかわいいっていうのが嬉しかったの?」

「いえ、それは慣れているので。」

 一つ咳払いをしてからいつもの真顔になってこう答えた。

「ただ・・・・・」

 真顔から一転、先程の照れた表情に戻り俯きながら

「私、普段は人に冷たい態度をとってしまう癖があって、そのせいであんまり人から優しいって言われたことなかったから。」

と少し声を詰まらせて答えた。

「最初の告白の日から藤村は毎日俺の告白に付き合ってくれるし、会いに行くとなんだかんだでちゃんと話してくれるし」

 俺は藤村の目を見て、真剣な眼差しで言った。

「そんな優しさに俺は魅力を感じた。」

 その言葉に藤村は今まで見せたことのない表情でかわいらしく照れていた。

 俺は大きく深呼吸をして

「それじゃ改めて言うね。初めて会ったときからあなたのことが好きでした。付き合ってください。」

 62回目の告白。藤村はゆっくりと口を開き。

「ごめんなさい。」

 藤村はいつもの真顔でさらりと言ってのけた。

「やっぱ駄目だったか~」

 大きく息を吐いてわかりやすく肩を落とした。

「付き合うのは無理ですけど、友達からならいいですよ。」

 藤村はそう言うと静かに、かわいらしく笑った。

 その笑顔は今まで藤村が俺に見せた笑顔の中で1番嬉しそうなものだった。


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