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従順な彼女に突然別れを告げた結果  作者: 荒三水


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五日目 朝 教室 橋本

「おっす」


 あくる日の朝。

 時間ギリギリに登校した俺は、隣で腰を丸めてスマホをいじる北野へ声をかけた。

 昨日のこともあり、だいぶ距離が縮まった気もしたので、一応あいさつをしてやろうと思ったのだ。


 ……が、無視。

 向こうはどうやら、毎日リセットしてくるつもりらしい。

 まあ、イヤホンをしていて聞こえていない、という可能性もあるかもしれないが……一瞬だけちらっとこっちを見やがったからそれはない。

 しかもコイツ、俺が昨日買ってやったイヤホンを使っていない。

 さんざん汚ねえだのなんだの言ってたくせに、前のヤツを普通に使ってやがる。

 俺の自業自得ではあるが……なんだかカモられた気分だ。

 

 昨日俺の言ったことがわかってないのか、北野は相変わらずのメガネマスクだ。

 まあむこうがそういうつもりならそれで、こっちもこれ以上余計なおせっかいをする気はない。

 あいさつを無視されたがそのまま追撃することもなく、席に着いた。

 俺のほうにもまた一つ、厄介な、というか腹の立つ出来事があって、こいつにかまけている余裕なんてなかったからだ。

 

 席に座ると、前方でおしゃべり中の女子グループが視界に入ってくる。

 その中で、ケラケラと声高に笑う嫌に目立つ長い茶髪。

 橋本由希。

 今日の俺のイライラの原因はこいつだった。



 

 昨日の夜のことだ。

 その橋本から、駅で俺が北野と一緒にいたところを見た、と携帯のほうにメッセージが入っていた。

 駅付近をブラブラしていたら偶然見かけた、というのだ。時間的に、おそらく買い物をした後だろう。

 俺自身半ばヤケクソ気味で警戒はしてなかったとはいえ、よりによって橋本に目撃されるなんてついてない。


 橋本からは、なんで、どうして、としつこく追求をされた。無視してもよかったが、後々余計面倒になるのは明白だった。

 お前には関係ないだろほっとけよ、と返そうかと心底思ったが、自称純花の親友の橋本には関係があること、らしい。

 だが俺は、コイツが純花の親友面しているのがどうも気に食わない。俺がなぜ橋本を嫌っているかって、理由はそこにある。

 

『朋樹がバイトがある日は、一緒に帰れないからって、純花が言ってたけど』


 夏休みに入るちょっと前ぐらいから、前兆はあった。

 俺はバイトの日は疲れるとか、時間がどうとかって適当に理由をつけて、純花と一緒に帰るのを拒否するようになっていた。

  

『てゆーか昨日ってバイトじゃなかったの?』

 

 しつこく聞いてくるので、俺が北野にちょっかいを出して、イヤホンを壊して弁償することになったと説明した。

 大筋はその通りだが、だいぶはしょった上に、若干ウソも混じっている。


『マジ? ツイてなかったね。ていうかやっぱあの転校生ヤバくない? 弁償させるとかさ~』


 説明が不十分だと、こんな風な感想を抱かれる。

 にしても橋本の感覚はズレている。人のものを壊したら弁償するのは当たり前だろう。

 実際は壊してはいないんだが、事細かに説明する気はないし、北野をフォローする気もない。

 どうせなにを言ってもムダだからな。


 それで今度は、純花とうまくいっていないの? という話になる。

 一瞬、もしや純花があの別れ話のことを橋本に話したのか、と疑ったが、そういうわけではなさそうだった。

 橋本がこういう話題を振ってくるのは、今回が初めてじゃない。これまでも何度かあって、その度に俺はうんざりした気分になっていく。

 いや、うんざりどころじゃない。橋本に対する嫌悪感が、さらに募っていくのだ。

 そういう話が、親友として真摯に純花のためを思ってのことなら、俺だってそう邪険にはしない。

 だがこいつのなにがすごいって、純花がかわいそうだからちゃんと話してあげなよ、だとか俺を責めて来るのかと思いきや、いつもなぜか純花を叩く流れになるのだ。


『純花って天然で、結構鈍いところあるからね~。この前だってさ……』


 普通だったら、彼女の悪口を言われたら反感を買うだろうと、控えるところだ。

 だがコイツは、俺たちの関係がだいぶ前からぎくしゃくしているのを、見抜いている。


『純花もね~……ぶっちゃけここだけの話だけど、朋樹が何を考えてるのか、わからない時がある、とかって言ってたり』

 

 そしてしまいには、こういうことを平然と告げ口してくる。

 最初は、女の友情なんてこんなもんだろう、と思って聞き流していた。

 表向き仲良くしていても、裏でなにを言ってるのかわかったもんじゃないと。

 

 だが実際は、そんな単純なことでもなかった。

 ふと、あることを思い出して、それ以来それがもっとタチの悪いことであるのに気づいた。

 というのは、俺が純花と付き合い始めた頃、「橋本って、お前の事狙ってたらしいよ」と工藤から言われたこと。

 その時はまさか、と思ったが、思い当たるフシは確かにあった。ありすぎた。

 

 ……ああ、思い出しただけで気分が悪い。

 こみ上げてきたもやもやにじっと座っていられず、トイレに行こうと席を立ち上がる。

 その時橋本がこちらに気づいてかすかに手を振ったが、俺は気づかなかった体で教室を出ていった。

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