表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ひらがなタイトル

せっけん

作者: 雪つむじ

最初に会った時から、ずっと、君はそうだった。

何にしたって、世界の汚れはもう。

自分が引き受けるんだって、そんな顔して。

きみは、もう、自分の居場所はここだって顔をして、そこに居たんだ。


それなのに、君の体ったら。

初めて会った時から、苦しそうに。

もう、弓なりにのけ反って。

そんなに、グイって曲がらなくたってさ、大丈夫だよって。

言った言葉も聞こえないふり、したんだ。


時折、君は。

僕の知らないところで、涙を流していた。

僕はそれに、気付いていたよ?

君を見た時、君の下が、涙で濡れていたことがあったから。

のけぞった体の上に、満々と涙をたたえているのだって。

たまに、そういうことがあることを。

内緒だけど、僕はみたことがある。

涙をたたえて。

それを、こぼさないようにして。

我慢して、我慢して。

それこそ、涙の縁に、泡を立てて、どうにか持ちこたえている。

そんな君を見ているのに。

その涙を、流させてあげることを、僕はしなかった。


久しぶりに、君を見た時。

もう、君は、小さく、小さく、しぼんでしまって。

もう、その体は、薄く、薄く、削れてしまって。

それでも、弓なりに、反っている所だけは、相変わらずだった。

手を伸ばして、何とかつかみ取ろうとしたけれど。

そんなことは、できないよって顔をして。

君は、排水溝の先へ。


どうして、逃げてしまったんだい?

穴を覗き込んで。

不謹慎だと思いながら、僕はそう叫んだ。

ねぇ、掴んだものが、するするって逃げていく時にはさ。

するするって行くのは、どんな気持ちでするするしている?

ごめんね、小さくなるまで、ごしごしして。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ