色欲との邂逅
…………ふむ。
これからどうしよう。
私は屋敷内の長い廊下を歩きながら考える。
先程無駄にカッコつけてマリアの部屋から出てきたはいいものを、その後の事を全く考えていなかった。
きっとマリアはこれからの私について、"傲慢"からなにか聞いているはずだ。…それを私は拒んできたわけだが。その結果がこれだ。傑作にも程がある。今更戻る気はないが。
「…………やはりマリアのあの性格は好かないね……」
----------所詮、私はマリアなのです…
マリアのセリフが脳裏をよる。先祖、…初代マリアが犯した『罪』と、今の今まで先祖代々受け継がれている『罰』。
この贖罪の鎖は一体いつまで彼の一族を縛り付けるのだろうか。
「…ま、私には関係のないことか。」
こればっかりは私にはどうすることもできない。せいぜい頑張れ、としか言いようがないからね。マリアのあの様子だと鎖を断ち切るのは難しそうだけど。………それにしても初代マリアは一体何をやらかしたのだろう。少々気になるところはある。
「……で、結局行き先は決まったのか?」
「それがまだ決まってないよ。そもそもこの建物の全体像がわかっていない以上、行き先もなにも………って、え????」
私はつい廊下を歩む足をとめる。突然の人の声。中性的な声だ。……ああ、よってびっくりした。どこから発せられたものなのだろう。私はあたりをキョロキョロと見渡す。
「……あれ、……だれもいないな……」
おかしい。声は確かに私の周囲からしたはずなのに。
「下だよ、お嬢ちゃん。」
「下………??……え、……うわっ…」
「なんだ、対して驚かなかったね。つまらん。」
「いや、十分驚いてはいるんだけどね……」
声の主に下、と言われたので言われたままに下を向いたら、そこにいたのは
「蛇、かい…………?」
まさかの喋る爬虫類だった。大きさはアオダイショウくらいだろうか。昔動物園で見たアオダイショウを思い出す。全身が透けるような綺麗な白の蛇で、全身のところどころに入っている金色のラインがなんとも美しい。皮をはいで売ったら大層な金額になりそうだ。
「まあ、蛇だな。」
私の足元で弧を描きながら蛇は言う。
「そして」
蛇は一旦セリフをそこで止め、私の足伝いに私の体に巻き付き、頭の部分を私の肩に乗せた。………意外と蛇って重いね……
蛇は私の耳元で囁く。
「同時に大罪の七魔が1人、"色欲"のルーフェ・ネイトだ。よろしくたのむ。」
色欲……!!……なるほど。
「こちらこそよろしくたのむよ、ルーフェ。私は…」
「ああ、お前の自己紹介はいらん。既に"傲慢"から大体のことは聞いている。新しい"嫉妬"の時雨雨織、だろ?」
「…ああ、ご名答だよ。」
どうやら私の情報は大体あちらさん側には行き渡っているらしい。…あの"傲慢"のおっさん、どうやって調べたんだろうか??
「"傲慢"が知らないことはないからな。便利だよな…あの『能力』…」
「能力……?」
『能力』、か……
「……おっと、なんでもない。きにしないでくれ。」
「む、そうか……」
すごく気になる。…が、問い詰めても教えてくれそうにないので私はしぶしぶ引き下がる。
「済まないな、言えないのはまだ君が正式に"七魔"になってないからだ。」
「……その"七魔"というものがよくわからないな。」
七魔。この世界の全てを支配する7つの大罪。そこまではわかった。だが、それが『どんな存在意義があるのか』までは知らない。
「………どうやら詳しいことが知りたいらしいな。」
「うん…そりゃあ、ね……」
私が突然放り込まれた状況。少しでも追加情報を得られるのだったら嬉しい。
「だったら俺が教えてやるよ。ここで立ち話もなんだから俺の部屋にでも行ってな。」
蛇に部屋なんぞあるのか。流石無駄にでかい屋敷だ。それにしても急にどうしたのだろう。さきほどは教えられない、とか言っていたくせして。
だが教えてもらえるなら教えてもらおう。どんな些細なものでも情報は貴重である。
「教えてくれるのか。」
「ああ…俺が言える範囲までだがな。」
「十分だよ。……で、部屋はどこだい??」
「行く気満々だなおい。……ついてきな。」
「了解。」
ルーフェは素早く私の体から地面へ降りるとするすると前方へすすんでいく。意外と速い。
「速いぞ、ルーフェ……」
「おっと、それはすまないな。」
こうしてルーフェと私はルーフェの部屋を目指し屋敷を進んでいった。
(……"色欲"と二人きりになる……この意味、お前さんはわかっていないだろうな………………)
白き蛇の企みを、潔き(しろき)少女はまだ知らない。
閲覧ありがとうございます。こんにちは澪標です。
ついに色欲さん出ました。
蛇さんですよ蛇さん。
こいつがどんな動きをしてくれるのか、楽しみです。