対なる幼子
「…………ん…………………………ハァ……」
……突然だけど、問題を出すよ。次のヒントを見てね。
①フリルたっぷりの天蓋付きキングサイズベッド(白と黒が基調とされているね)
②ふかふかな絨毯(白と黒を基調とry)
③アンティークっぽい窓にレースのカーテン(白と黒をry)
④成人男性も軽く眠れそうな大きいソファ(白とry)
さあ、これらはなんでしょうか。
………答えを言っていいかい?
正解は「今、私の視界に入っているもの」だよ。あ、言っておくけど正解しても特になにも無いからね。なんだい、この異常な白黒率……家具全てが白黒だよ…視界の暴力だ…純粋にめまいがするよ……
自殺しようと思って行った学校の屋上で、突然目の前に現れた金髪イケメンに腹を殴られ、意識が飛んでいたという非常に理不尽な目にあった私は、目を覚ましたら何もかもがモノクロな異常空間のベッドの上で寝ていた 。そして冒頭へ至るよ。メタ発言?ナンノコトカナー
…で、極め付きはその金髪イケメンの背中には羽、と……なんとも某アリスもびっくりなメルヘンだね…
私があまりの白黒率にドン引きして(現実逃避とも言う)立ちすくんでいると、私の後方にあるドア(やっぱり白黒)からノックの音と共に2つの声が聞こえた。
「"嫉妬"のお姉ちゃん起きたー?」『起きたー?』
声から察するに、どうやら声の主は幼女二人のようだ。……それにしても"嫉妬"のお姉ちゃんとか…あの金髪イケメンの【"嫉妬"の君】も大概だったけど今度も変な呼び方をされているね……どうでもいいけどさ。
あまり客人(?)を部屋の外に待たせるのはよろしくない。私はめまいを抑えて部屋のドアへ向かい、ドアを開けた。
ドアを開けるとそこには私の予想通り7歳くらいの同じような身長の女の子が二人いた。七五三のときに着るような真っ赤な着物に、おかっぱ頭が良く似合う。そして何より特徴的なのは二人の顔だった。失礼だが、気持ち悪いほどに似ている。違いが全くわからない。唯一違うのは二人が着ている着物の刺繍だろうか。右の子は金のトレニアの花の刺繍、左の子は銀のユウガオの花の刺繍をしている。花言葉は確か、《欲望》と《罪》か……
…おかしいな、この二人にぴったりだと思っている私がいる……どうしてだ……
「……ちゃん?……聞いているのお姉ちゃん!!」
「……っと、すまないね、なんだい?」
………いけない、いつの間にか深く考えていたみたいだ。どうせ結論なんて出やしないのに。
「だーかーら、これからお姉ちゃんを"傲慢"のところまで連れていくよ!」
『"傲慢"、遅いと怒るから早くしてね!』
……状況に全くついていけない。誰だよ"傲慢"って。絶対人の名前じゃないよね。……ん?名前?
……あ、そういえば
「君たちの名前はなんだい?」
この二人の名前を聞くのを忘れていた。これで多少の呼び分けの不便はなくなる。
私が本来ならば出会い頭に言うはずの疑問を二人に投げかけると、二人はお互いに1回顔を見合わせてから、
「私は一二三 四五(ひふみ よいつ)だよ!」
『私は六七八 九十(むなはち くじゅう)!』
と、元気な声で自己紹介してくれた。……ずいぶんと個性的な名前だ。名づけ親の顔が見てみたい。
「四五ちゃんと九十ちゃんか、よろしく頼むよ。私は時雨 雨織だ。」
「うん、よろしくね雨織お姉ちゃん!」『よろしく〜!』
私も同じように自己紹介すると、四五と九十はいい笑顔で返事をしてくれた。はっきり言って癒しだ。この笑顔プライスレス。
「で、君たちは"傲慢"のところに私を連れていく係なんだね。」
「うん、そうだよー!」『早くいこー!』
「わかっているよ。なにごとも早いに越したことはない。迅速果断だね。」
私はこのなんとも可愛らしく、怪しい少女たちについていくことにした。虎穴に入らずんば虎子を得ず。なんの行動もとらなければいつまでもなにも進展はしない。そこに少なからず危険があったとしても、だ。この少女たちに付いていき、"傲慢"なる人に会って話をきけば、この部屋のことも、あの金髪イケメンのこともわかるかもしれない。
「じゃあお姉ちゃんいくよー」『れっつごー!』
私は二人の少女に両手を引かれ、まるでどこかの西洋の城のような長く、豪華絢爛な廊下を歩いていった。