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私は、レイナ=シェイラン。
シティ:ロマージュ在住、白樺高等学校生。アース系人種。
家族構成、父カオシン、母マリーヴィエ、愚弟クリスレードの四人家族。うん、間違ってない。
『○月×日 異世界一日目
記念すべき異世界旅行ですもの。今日から忘れずに、日記を残すことにしたわ。
何となく、朝から雰囲気が変だと思っていたけれど、ほら、学校帰りに異世界にとばされるなんて、思わないじゃない?
驚いたわ。とっても驚いた。急に落ちると思ったら、変な街に来ているでしょう?
これまでは意識体みたいになって異世界を眺めるだけだったから、ちょっとだけ新鮮ではあったわよ。けれど、まさか人の上に落ちるなんて考えもしなかったわ。そういえば彼は大丈夫かしら。数百年前に惑星アースの人間がコンタクトを取れた異星人、グランディス人のように、アース系にはあり得ない、青い髪をしていた彼。巨木みたいに大きな人だったし、“警察官”みたいで身体も丈夫そうだったから、さほど心配はいらないと思うのよね。明らかに迷子な私を、中心街のパン屋さんに預けてくれたし。
…考えたら、名前も知らないのよね。明日聞いてみる事にする。』
『○月×日 異世界二日目
朝起きて自分の部屋じゃないことに気がついて驚いたけれど、そういえば異世界に来ていたんだったわ。慣れない環境で戸惑うことも多いけれど、そうなると一日の流れって早いわね。もう夕方。
今日は朝起きて、昨日の彼とそのお母さん―――二人暮らしみたい―――と朝食を取った後、彼はお仕事に、私は彼のお母さん(以下オーナー)の後ろにひっついてお店―――パン屋さんだったのよ―――の様子を見学したわ。カウンターに座ってお客さんが来る度に奥のオーナーを呼びに行く、楽なお仕事。ちょっと心苦しいけれど、言葉がわからないんだもの。しょうがないわ。
一日座って過ごして感じた事だけれど、いやに学生が多いじゃない?
近くに学校でもあるのかしら。
彼らは皆、カウンターに座っているけれど何もしない私を不思議がっていたわ。嫌だ、そんな珍動物を見る目なんてしないでよ。私にとっては、グランディス系人類みたいに、鮮やかな髪の貴方達の方がよほど珍しいわ。
夕方になると、オーナーの身振り手振りで料理を手伝う。うん。異世界でも野菜やお肉を切って料理するのは変わらないのね。調味料だって、普通にお塩やお砂糖なんかだし。ただ、料理しているお肉がどんな生き物の物なのか、またお野菜がこちらの世界とは形や味が違ったのが、ちょっと不安。それでも六時ぐらいに帰ってきた彼と、三人での夕食はおいしかったから、この際目をつぶることにする。その後、お風呂から上がると、オーナーの服を借りて過ごす。洗濯ぐらいなら一人で出来るわよね。明日から、そうしましょう。
さて、今日は彼の名前を聞くわよ。夕食の片付けを済ませて、……居た居た。青い髪って思いの外目立つのよね。まぁ、この家には三人しか居ないから、あまり関係ないけれど。
トテトテと傍にやってきた私に、彼は少し驚いた顔をした。嫌だわ。貴方まで私を珍動物に見立てないで頂戴。そんな事を思いながら近くの椅子に座る。こちらの出方を伺っている気配が、びしばし。ちょっとだけ顔を顰めてみせると、彼は慌てたのか、苦笑してみせた。貴方、とっても笑顔がぎこちないわ。そんな風だと、女の子にモテないわよ。
さて気を取り直して、私は彼に指を向けた。あら、やっぱり真意は伝わらないわね。首を傾げる彼に、私は少し悩んだ後に、「レイナ」と名前を言ってみる。すると彼はものすごく驚いた顔をした。まぁ、まぁ!
やっぱり貴方、私を呼ぶときに、「君」とかそんな風に言っていたんでしょう。私にだって名前はあるわ。さぁ、貴方の番よ。
彼を指さすと、「ルオス」と低い声が返って来た。「ルオス?」って試しに呼んでみる。あら、そんな顔も出来るんじゃない。とても嬉しそうな顔。私は満足して席を立とうとしたら、代わって彼が私を呼んだ。あら、ちょっと嬉しい。やっぱり名前を呼んでもらった方が良いわよね。少しだけ気分が良いから、彼に笑いかける。あら、顔が赤いわよ、ダーリン。
それから、オーナーにも名前を告げる。彼女は頭を撫でてくれたわ。そして、彼女自身の事を、名前とは違う呼び名で呼ぶように言われたのだけれど、どういう意味なのかしら。いつまでここにいるかわからないし、言葉を覚えることにするわ。』