小話 逆襲の中華娘 他2本
嘘予告をしたら、ついサブタイトルを使いたくなったのです。
反省はしてないです。後悔はしてます…。
■逆襲の中華娘
目的を達する為の手回しを終えて、昼休みの教室に戻る。
クラスメイト一人を部活に勧誘する為に、本人ではなく周りの外堀を埋めなくてはならないなんて。
まぁそれだけ価値がある人だと思うから仕方ないかな。
自分でも少し、執着し過ぎな気はしている。何故かな。
さて後は、昔馴染みの友人にサポートを頼まないとね。
私は自分の席に座り、件の人と楽しげに話してる交渉予定の友人を眺める。
四月の落ち込みようが嘘のように元気になっちゃってまぁ。
彼が元気になる事は、友人として嬉しいが、落ち込んでた原因を思い出すと、悲しい気持ちにもなる。
そんな彼と彼女を見ていると、自然と『彼』のことを思い出す。
意識することなく、私の思考はゆっくり過去へと遡る。
私、菩比鳴は生意気な小学生だったと思う。
家が中華料理屋で、自営業だった為に、小さい頃から、しっかり働く両親や、生活を左右する収入である売り上げ等を見てきたからだと思う。
周りに居る同級生たちは、サラリーマン家庭で、親の仕事やそれに纏わる金銭のやり取りを見てないはずだ。
だから、私から見ると子供にしか見えなかった。
小学生である同級生を、子供っぽいと評する私も十分に子供っぽかったのだが、当時の私には自覚がなかった。
要するに、何が言いたいかというと、小学生の私は周りの同級生を自分と同等と見ない子だったわけ。
小学校でも、高学年になると色恋に目覚める女子って割と居るんだけど、私からすると同級生の男子なんてガキにしか見えなくて、信じられなかった。
でも、クラス替えがあった六年生で、そんな私が恋をした。
前言はどうしたって?
恋はいつでもトルネードなのよ。
…自分で言っといてなんだけど、意味不明ね。
私が恋した男の子は、他の子とは少々違った。
落ち着いた雰囲気で、暴力なんて振るわないし、目上である先生に話す時など、子供とは思えないほど丁寧に話していた。
後で知ったが、捨て子で孤児院――私達は施設と呼んでいた――出身だという。
その事を知って、自分がどれだけ恵まれているのか思い知った。
自分より大人なかもしれないと思うと、その子の事が気になって、いつの間にか恋してた。
好きになったら近寄りたいのが人の性。
しかし、それには問題があった。
恋に障害があるのは当然かもしれないが、問題はちょっと特殊だったのよね。
彼の容姿が、綺麗過ぎたのだ。
女の私から見ても、目を引くほど端整で、髪が短く男の子っぽいのに、逆にそれが中性的な魅力を出していた。
五年生の時から、彼は一部で有名だったらしく、私以外にも色々な理由で惹かれている女子は結構居たらしい。
故に、女子の中では暗黙の了解で、抜け駆け禁止のルールがあった。
破ったらどうなるか?
それはもちろん村八分というやつだ。
女子のはぶり方は恐ろしい。表立っては仲良く見せて、実態は仲間はずれ。
面倒なルールに縛られ、私も大人しくしてるしかなかった。
女子に大人気の彼だったが、男子からは不人気だったようだ。
彼と関わった男子が居ると、同性好き扱いしてからかっていた。
一学期中には、彼は男子の中で浮いていた。
まぁ一人だけ、まったく気にせず話しかけて友人をやっている男子が居たけどね。
特筆するような事もなく、小学校を卒業し、中学生になった。
中一では、彼と別クラスになってしまい、もっと積極的に何かしてれば!と後悔したものだ。
そのおかげか、中二で彼と同じクラスになれた。
相変わらず、女子は抜け駆け禁止、男子は積極的に関わらない状況だったが、例外一名も変わらずだった。
後悔を無駄にせず、行動を起こした私は、例外の男子に近づいた。
将を射んと欲すればまず馬を射よだ。
馬と仲良くなる為に、色々相談っぽい事をした。
実家の料理店が苦労してる振りをして、どうすればいいかと聞いたり。
私の適当な嘘の悩みに、馬――瀬田君は真剣に熱意を持って答えてくれた。
キャラ付けが大事だよ!中華屋さんの看板娘なら、しゃべり方を変えたらいいんじゃないかな!
正直、軽く引いたが、相談中に『隆一も読んでたラノベのそういうキャラが、今気に入ってるし』と聞き捨てならない事を言っていた。
瀬田君と仲良くなる為にも、進言を受け入れて言葉遣いを変えたんだっけ。
家族に笑われたけどね…。
それから、瀬田君とは色々な話をした。
彼が読むというラノベの話や、瀬田君の苦労話を。
彼が孤立しすぎないように、男子との間を取り持ったり、女子には情報を流して波風立てないようにしたり、教師間の評判を上げる様に噂を流したりと、聞くだけで苦労人とわかる。
その余りの献身っぷりに、思わず聞いてしまった。
彼の事好きなの?って。
この場合の好きは、もちろん、あっちの好きな訳で、聞くのにも勇気が必要だったんだけど、あっさり答えられた。
彼とは小さい頃からの友達だから、周りがどう思っても、ずっと友達だよ。彼が女の子だったら、僕もわからないけど、男友達としてに決まってるでしょ?
そう諭すように言われてしまった。
私が勢いで、彼の事を好きだと言うと、紹介しようか?とまで言ってくる。
友達の為に、要らない苦労をし、私の話もしっかりと聞いて助けようとしてくれる。
彼と仲の良い男子なのに、男子だけじゃなく、女子からも普通に接せられる理由を垣間見た気がする。
良い人過ぎでしょ。
瀬田君と仲良くなって、高校も彼と同じ所に入れたというのに、タイムリミットは唐突に訪れた。
最後まで、彼に紹介してもらう機会はなかったなぁ。
自分が彼に釣り合うかわからなかったし、瀬田君に比べると、自分が小人にしか思えなかったからだ。
まさか、女子ではなく男子に気後れしてしまうなんてね。
結局、私の恋は実ることなく終わってしまった。
私がもっと勇気を出して行動してれば、何か違ったかもしれないのにね。
もう彼がいないから、話し方も戻して良いんだけど…なんとなく寂しいので、このままで行こうと思う。
彼には紹介して貰わなかったけど、その分彼女に対するサポートをして貰おうっと。
今日こそ彼女を部活に連れて行くべく、放課後に思いを馳せる。
「逃がさないからネ。大日サン」
■ガールズトーク?
「おはよ~…あれ、御堂さんは?」
「おはようございます。大日さん。きょろきょろ警戒しないでも大丈夫ですよ」
「今日お嬢様は、諸外国のVIPとの打合せとパーティーがある為、お休みになられて学校にいらっしゃってません」
「そ、そうなんだ。ありがと。…えーと、千早さんと…」
「取巻きAでございます」
「あれ!? 今微妙にお、私の心を読んだ!?」
「やはり、我々の事は、相変わらず取巻きA、Bという認識だったんですか…」
「ソンナコトナイヨ」
「火之夜、事実私達は取巻きなのですから、問題ないでしょう」
「中学から変わらぬ認識を再確認して、私はちょっと悲しいんだけど…」
ガラララッ
「お前ら、席につけ~。出席確認をするぞー」
「さて、一時間目も終わった。お嬢様も居ないし、自己紹介したいのですが、よろしいですか? 大日さん」
「あら、取巻きBから独立したがるなんて、臣下としてどうなんですか?」
「今日は護衛役でもないから、私はあくまで一個人ですよ」
「立派な護衛ですね。尊敬します」
「け、喧嘩しないで」
「「喧嘩はしてません」」
「…仲良いんですね」
「こほんっ。取巻きA改め、私は火之夜千早と申します。お嬢様を武力によって護衛をしております」
「何故貴女がAなのかわかりませんが…」
「別に今から、君が取巻きAでも問題ないですよ」
「…どうせなら、仲良く話そうよ」
「まったくそのとおりです。大日様の広い心を見習うといいですよ。脳筋」
「ぐぅっ…」
「実は仲がいい?」
「「仲良くありません」」
「…そうですか」
「では、僭越ながら、私が取巻きAこと尾母鐘瑠璃です。知力による護衛をしております。どうぞ、気軽にルリルリとお呼び下さい」
「る、瑠璃さんで」
「三つ編みメガネですので、あだ名は図書委員ちょが最適と愚考いたします」
「瑠璃さんで!」
「変わらぬ孤高さ、尊敬いたします。大日様」
「あ、あははー…。で、でもあれだね、学校で護衛とか大変そうだね」
「そうでもありませんよ。所詮護衛などと謳ってても、私は未成年の女子です。出来る事なんて高が知れてます」
「そうですね。認めたくありませんが、私達は学内での嫌がらせを防ぐぐらいが精々でしょう」
「でも、忠義をもって護衛してる感じがすごいと思うよ!」
「御堂グループに何かあると、うちの一族も路頭に迷いますからね。一族の為というのが大きいですよ」
「武士っ娘なのに、忠義薄っ!?」
「私は違います。お嬢様を通して色々な物を見れるので、とても感謝して仕えております」
「おぉ、文系軍師のほうが忠義が高いのかぁ。色々な物って言うと、上流階級の世界とか?」
「いえ、中学時代の大日様の私服姿などは、筆舌を尽くせぬ感動でございました。外食で可愛らしく食べてる様などは、その気がないのに、そそられる物がありました」
「見てた物が身近すぎる!? というか、今まさに私にこそ護衛の必要性が!?」
「調査は、我ら火之夜の領分でしたので、外出の状況など、一部しか報告しないように気を使ってました。自宅内等のプライベート全てを報告したりはしていないので、ご安心を」
「安心できないし!? プライベートの全てをどこかの諜報員が見てるってことでしょ!?」
「お嬢様に、ご友人となった今は、余計な事をしない方が良いと進言してしてからは、一切調べていないので、ご安心を」
「うふふふ、あのような事、自分主体でやっては危険すぎます。お嬢様を通して存分に堪能できましたので、とても感謝しております」
「それ忠義じゃないよね! 忠義じゃないよね!」
キーンコーンカーンコーン
「次は体育ですね。更衣室に行きましょう」
「そ、そうだねー!」
「あら? そんなに可愛らしくソワソワして、誘ってるんでしょうか。大日様」
「誘ってない! 誘ってないよ!」
「そんなに慌てずとも、冗談ですのに」
「君のそれは、本当に冗談なんだろうね?」
「時間もないですし、火之夜は置いて行きましょう」
「…今、無理やり話題を変えた?」
「ホホホホホ」
トコトコトコト―――
「体育だと、なんとなく元気がでますね」
「そんなのは男子か貴女くらいです。ゴリラ」
「ぐぅっ」
「で、でも、元気に体を動かすのは、ちょっと楽しいよ」
「そうですね。健康の為に運動するのは大事です。慧眼、恐れ入ります。大日様」
「しかし、大日さん。先程からチラチラ此方を見つつ、オドオドされてますが、どうかしましたか?」
「…本能と理性で板ばさみと言うか、天使と悪魔がハルマゲドンで…」
「貴女の割れたお腹を見て、気持ち悪がってらっしゃるんですよ。アマゾネス」
「ぐぐぅ…。やっぱり、腹筋割れてるのとか気持ち悪いですか…」
「き、気持ち悪くないよ! 綺麗だよ! 神秘だよ!!」
「大日さん…! そんなこと言われたのは初めてです。ありがとうございます」
「く、くるぅれし…うにゃぁ」
「大日様、体の成長のことを気にしてらっしゃるのかもしれませんが、貴女様も十分に魅力的でございます」
「うんうん、私達と自分を比べて、オドオドしなくていいんですよ」
「貴女も、嬉しいのはわかりましたので、もう離れなさい」
「あいたっ」
「そこのアラホラッサッサーズ、のんびりしてると授業始まるネ。早く大日さんを着替えさせて外行くネ」
「む、私とした事が迂闊だった」
「貴女は割と日常で迂闊でしょうに。あら? 大日様? 顔を真っ赤にされて、ぼーとして…大丈夫でございますか?」
「あ、あれ? 加減を間違えたかな?」
「時間がありません。私達がお召し物をお取替えして、外にお連れしますよ。早く自分の上着を着なさい。単細胞」
「それはただの悪口ですよ…」
キーンコーンカーンコーン
「さっきは、楽しそうに大日サンと話してたネ。私も仲間に入れて欲しいネ」
「大日様の熊さんに興味がおありとは、見所がありますね。青椒肉絲」
「私は大日サンと親睦を深めたいだけネ。似非文学少女」
「な、なんでそんなに私と仲良くなりたいの?」
「半分は意地ネ! 手回しに、過去の回想までして盛り上げたのに、断られては、引くに引けないネ!」
「菩比、君はまだ、部活にスカウトできてなかったんですか。お嬢様の裁可を得たというのに」
「今は一旦諦めたネ。まずは仲良くなるのが目標ネ」
「そんなに熊さんが見たいのですか」
「あれ!? 話をそこに戻すの!?」
「尾母鐘、失礼な事を言うのはやめるといい。大日さんは私達ですら持っていない大人の下着を…」
「わーわーわーわー!」
「まぁ貴女の家業のお店には、ちょくちょくお世話になってますので、邪魔をするのも程々にします」
「ん? あんたみたいなの、店に来た覚えがないんだけど?」
「普段は、髪型も違いますし、眼鏡をかけておりませんから。それより、素が出ていますよ。パチモン」
「どうもご贔屓にして頂きありがとネ。腹黒メガネ」
「「ふっふっふっふっ」」
「ねぇ、千早さん。なんかあの二人って似てない?」
「そうですね。普段が演技臭く、根回しとか得意そうな処がそっくりかと」
「悪口は、本人の居ないところで言うとイイネ」
「ご、ごめん」
「気にしてないネ。その分仲良くしてくれたら嬉しいネ」
「ぐ、具体的にどうしたら?」
「そうビクビクしながら、覗う様に見られると、意外と傷ツクネ…」
「そうですよ、大日様。正面から堂々と見下せばよろしいのです」
「えっ!! 見て良いの!? でも、それは人として駄目なんじゃ!? うぅ…院長、一体どうしたら…」
「君が変な事言うから、混乱してるじゃないか」
「つい、お嬢様に接するようにしてしまいました。反省します」
「あんたら、お嬢様居ないとフリーダム過ぎるわね」
「「失礼な」」
「あー、大日サン…? …戻ってこないわね。ボナンザシスターズ、着替えさせて教室戻るわよ」
キーンコーンカーンコーン
「今日は午前授業だけだからな。これで終わりだ。帰りのHRはしないから、そのまま帰っていいぞ」
「大日サン」
「う? 菩比さん、なんですか?」
「露骨に警戒シタネ…。はぁ、仲良くなる方法考えたんだけどさ、うちに泊まりにでも来る? 中華料理くらい出すよ」
「フカヒレ、干しアワビ、金華豚!」
「…興味が出たようで幸いネ」
「そんな楽しそうな話は、放っておけませんね。北京ダック」
「あんた、地味に自分の食べたい物言ってるだけでしょ。お嬢様に黙って実行すると危険そうだし、適当に取り纏めて欲しいネ」
「了解した。私は満漢全席が嬉しい」
「あんたもかい…それは流石にお金取るわよ…。頼んだわよ」
「「任されました」」
■頑張れ信幸くん
今日は休日で、友人を招く為に、家に案内をしている。
まぁ家の場所は知ってるんだけど、徒歩だと結構かかるので、途中で待ち合わせをして一緒に向かっているんだよね。
わざわざ迎えに行ったのは、相手は一応、女の子だから心配だったんだよ。
「でさ~トイレの壁に変なボタンがあってさ、押して吃驚だよ。押すと音楽とか、水音が出るんだぜ。知ってた? 知ってた?」
「いや、それは知らなかったよ。男子トイレには、そういうの見たことないからね」
「だよなー」
女子トイレの個室について、楽しそうに語る人物こそ、今日招く友人の隆一だ。
いや、今は縁さんと言うべきだろうか。
死んで女の子に転生とか、ラノベの主人公を地で行く大物だ。
「ん? さっきからどうした? 腹でも壊した?」
「お腹は壊してないよ。隆一が楽しそうに話すのを聞いてたんじゃないか」
「そうかそうか、あ、そういえば、着替える時のスカートの使い方がすごくてさー」
本人は、女の子の自覚がないのだろう。
さっきから楽しそうに、女子トイレやら着替えやらの話をされる。
隆一は、可愛い女子から、女子の生態や実情を聞かされる男子の気持ちを考えたことはあるんだろうか。
絶対にないだろう。
僕の気持ち的にも複雑だが、それ以上に周りの目を考えて欲しい。
そんな空気読めるなら、中学時代僕は苦労しなかったとすると、現状も仕方ないのかもしれない。
「あー、もうすぐ信幸ん家か、楽しみだなー」
キラキラした笑顔で、ずっと楽しそうにして話している。
気持ちは分からないでもないけどね。
昨日一緒に、孤児院の様子を見に行って、皆がしっかりしてるのを見て安心したんだろう。
根が真面目だから、自分が居なくなった孤児院が、ずっと気になってたようだ。
「でも、大日さんとしてうちに来るの二回目だし、目新しい物なんてないでしょ」
「そうかもしれないけどさー。んー、その大日さんってのなんとかならない? 他人行儀っぽくて嫌だ」
気軽に言ってくるけど、それって難しいよね。
名前で呼べって事なんだろうけど、同級生の女子を名前で呼ぶとか、恥かしすぎる。
それに、隆一の場合、さらに特別に難易度が上がる。
男子の目はもちろんだが、うちのクラスの担任とお嬢様がまずい。
隆一は、人付き合いや、空気を読むのが壊滅的に下手だ。
原因の一部は、僕自身にもあると思うと、責められない。
「大日さんとしては、僕との付き合いって高校に入ってからだからさ、急に名前で呼ぶと問題があると思うんだ」
「そっかなぁ?」
「別に拒否してるわけじゃないって。問題がなくなったら、そのうち名前で呼んだりするよ」
「そっか、さすが信幸。頼りになる」
単なる先送りの誤魔化しだが、通じてよかった。
昔も苦労したが、今の苦労はそれ以上だ。
隆一はきっと、今日僕と遊ぶのを楽しみにしてくれてたんだと思う。
服装が、すごく気合入ってるようにしか見えないからね。
半袖の白いブラウスに、襟や腕の部分に赤い模様があって、襟元にはピンクのリボンがついている。
スカートはピンク色で、上と同じ赤い模様が所々についていて、裾部分は二重三重になってるのか、スカートが重なってる様になっててふわふわして可愛らしい。
腰まで伸びたストレートの黒髪に、睫毛が長く上に伸び、黒目が大きくくりっとしてる。
色白だからか、頬や唇の朱色が映えて、笑顔と合わせると反則だ。
艶のある黒髪と、ピンクのスカートは、一見ミスマッチに思えるのだが、上衣に白主体のブラウスを持ってくることで、黒白ピンクを見事に融合させている。
確かなファッションセンスを感じる服装だなぁ。
これは誉めた方がいいのかな?
「隆一、服似合ってるね」
「こ、これは、お母さんが『友達の家に行くなら、これくらいはしなきゃ駄目よ!』って無理やり…」
そうか、お母さんのチョイスなのか。
恥かしがる姿も、可愛いから困るよね。
今は背が低いから、皆小さい子として扱ってるけど、後四,五年もして背が伸びたら、絶世の美女になると思う。
僕だって男で、こんなに可愛い子と話していると、色々思うところがあるんだけど…。
そういうのは、きっとお互い望んでない。
なので、自分のその手の感情は、封をして無視すると決めている。
「着いたね、んじゃ入ろっか」
「ういー、お邪魔しまーす」
玄関に入ると、丁度弟が靴を履いていた。
遊びにでも行くところだったんだろう。
「に、にいちゃん、またその子連れてきたの?」
「うん? 友達だからだけど、まずかった?」
女の子を家に連れてくるなんて、彼女とでも思われたかな。
それ位は勘違いされると思ってたから、あとで誤解を解かないと。
「にいちゃん、小さい子が好きなの…?」
「な、何を言ってるんだ。正樹」
「だって、その子どう見ても、僕と同じかそれ以下に…」
確かに、見た目は中一くらいに見えるかもしれない。
しかし、それは誤解だ。
彼女とか思われるよりも、厄介な誤解だ。
僕は担任とは違うのだ。
隆一に聞かれると面倒なので、少し離れて弟に説明する。
「彼女は、同級生で同い年なんだよ。それに、恋人じゃない、友達だ。それと、大事だから言っておくけど、お兄ちゃんは、小さい子に一切興味はない」
「そ、そうなんだ。よかった。にいちゃんが、あの人のこと好きなのかと思っちゃった」
「いや、まぁ好きか嫌いかで言えば、好きだけどさ」
友達としては、もちろん好きだ。
弟の誤解を解いたら、後ろから爆弾が飛んできた。
「ま、まさか信幸、男が好きだったのか…!?」
なんでだろう。
隆一は何を言ってるんだろう。
何が起きてるか情報を整理しよう。
・彼女、恋人の話をしてた
・僕は小さい子に興味がないと念を押した
・好きか嫌いなら、好きと言った
少し離れて、小声で話していたのに、聞こえてたとしたら…。
今の隆一を僕なりに分析した結果を足すと…。
・女子としての自覚がない
・自分の意識は男だと思ってるはず
・僕の友達として、という心の声は聞こえていない
つまり、今の隆一を好きカテゴリーに入れると、中身である男の隆一を僕が好きだという話の流れに聞こえたと。
落ち着いて状況を把握出来たので、誤解を解かなきゃと隆一に向き直ると、後ろから叫び声が上がる。
「に、にいちゃんが、男好きだったなんて、うわぁぁぁぁぁぁぁあん」
弟が、恐ろしい事を大声で口にしつつ、泣きながら走っていった。
隆一も放っておけないが、弟を放置するとご近所さんとの付き合いが確実に悪化する!
「りゅ、隆一、先に部屋に上がって待ってて! ちょっと用事が出来たよ!」
「お、おう、頑張れ?」
弟の誤解と、僕の尊厳を守る為に、全力で追いかけよう。
弟の誤解を、半分ほど解いて自分の部屋に戻ると、寛いでいる隆一が居た。
「大丈夫だったか?」
「ん? あぁ。男好きって誤解は解けたよ。年下好きって処で納得してもらったよ…」
「そ、そうか、お疲れ?」
今度は、隆一の方の誤解を解かなきゃいけないと思うと、ちょっとだけ肩を落としたくなる。
「信幸、俺たちは親友だからさ、大丈夫だよ」
あぁ、何も言わずにこっちは大丈夫みたいだ。
そうだよね。小さい頃から、ずっと友達で居たんだ。
ちゃんと、僕の事も隆一は分かってくれていた。
「俺に手を出さない限り、ずっと友達だよ」
僕たち…親友だよね…?
■逆襲の中華娘
主人公以外の一人称の練習話です。
中華娘が、意外と真面目で疲れました…後悔の理由。
あ、もちろん色々なシーンカットされてます。
外伝的な話で、主役になっても出番をカットされるのは、もはや運命です。
■ガールズトーク?
主に台詞で進めたらどうなるかの練習話です。
対男子用の秘密女子トークになるはずが…。
取巻きA&Bの漫才トークになっちゃった?
■頑張れ信幸くん
瀬田君を弄りたかっただけのお話。
作中で、縁(二世)の事を、ラノベの主人公ーみたいに言ってますが…。
信幸くんのほうが、主人公ポジションじゃないかな?
俺っ娘兼ロリッ娘、お嬢様、武士っ娘、眼鏡っ娘、中華っ娘のコミュニティに関わる運命ですし。
密かな、ハーレム系主人公だと思います。
本編と違いますが、こういう話はいかがでしたでしょうか?
本編以上に感想が気になります…。