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小話2 お嬢様の狂詩曲 他2本

普段の本編の3倍近い文量です。

どうしてこうなったんでしょう?

■お嬢様の狂詩曲(ラプソディー)


「女子の物を取って虐めるなど、男子として情けないのではなくて?」

「うるさいな、どっかいけよ! 御堂」

「そうだそうだ」


(わたくし)は、クラスメイトの女子の縦笛を取ってからかっていた、男子三人と対峙する。

正義はこちらにあるのですから、堂々と正面から胸を張り、相手を見つめる。

元々後ろめたい気持ちがあったのでしょう。リーダー格の男子が、対峙に耐え切れず、前に出て私を突き飛ばそうとする。


「お前は関係ないんだから、どっか行けよ!」

「愚かですわ」


突き出された手を取り、円の動きで回るように巻き込み、その手を斜め下に引き落とす。リーダー格の男子は、引っ張られた手を追うように、前転しながら床に転がる。

何が起こったかわからず、固まっている隙に、手に持っていた縦笛を奪い取る。


「これに懲りたら、くだらない悪戯など辞める事ですわ」

「ってぇ、この暴力女! バーカバーカ」


程度の低い暴言を吐きながら、男子達は逃げていく。

痛くないように引き手を上げてあげたのに、暴力女とは失礼ですわね。それ以上に、小六にもなってバーカバーカとは、ボキャブラリーの無さに将来が心配ですわ。


「貴女も、またされないように気をつけるんですわよ」

「うん、御堂さん、ありがとう」


縦笛を渡してすぐに、その女子は仲良しグループの下へ去っていく。

その様子を見て、正義を行ったというのに寂しさを感じる。


孤独……ですわね。


男子の悪戯などを注意して、先程のように力でなんとかしようする男子を制していたら、男子には避けられるようになった。しっかりとした武術を習っている私に、一般的な小学生の男子が勝てるはずがないのですわ。


女子連中も、自宅に遊びに誘って一度来た人は、全員避けるようになった。そのうち、その連中の影響か、他の連中も表面上は普通なのだが、どことなく避けられている。


推薦で学級委員を務めてるというのに、周りの人間のなんと冷たいことでしょうか。


寂しさを感じるが、友人が居ないわけではありませんわ。

小学校は別々だが、一緒に住んでいる女の子の友人が居るのですもの。

自宅に帰って、友人の千早ちゃんと遊ぶ方法を考えるのは、とても楽しい事ですわ。




家に帰れば、護身術の練習が待っていた。

大変ではあるけれど、学校での勉強に比べたら、これがどれだけ楽しい事か。

楽しい理由は、一人ではなく、共に学ぶ友人が居るからでしょうね。


「月夜ちゃん、隅落(すみおとし)……空気投げって言うんだっけ? もっとこう、ふわっとしないと出来ないよ?」

「私には、そのふわっとがわかりませんわ。千早ちゃんは、きっと私より才能があるんですのよ」

「まったくじゃ。小六……齢11にして、何故に空気投げが出来る……。御堂の娘が可哀想でならん」


先生は、私が才能が無い事を同情して下さるけど、それでも楽しかった。

千早ちゃんと組み手をしても、勝てたことはないけれど、一緒に何かするだけでわくわくするのだ。


「処でお主等、あたしが武器術を教えると知ってるな? なのに、準備運動で柔術の組み手をするのは、何でかね? 解り易く、噛み砕いて、丁寧に、教えてくれると嬉しいぞ」

「それは、楽しいからですわ!」


そう、千早ちゃんと遊ぶのが、私には唯一の友人との遊戯の時間なのだ。

何をしても楽しい。そんな友人が居るのは、とても幸せなことですわ。


本心を解り易く教えて差し上げたというのに、その後げんこを貰ったのは納得いきませんわ。




「お父様、どう言う事ですの!」


中学入学を控えた数日前、同じ中学に入学するという二人を紹介された。

そこまでは良いのですが、二人の態度が問題です。


「お嬢様、私ではお側におけませんか。能力不足?」

「お嬢様、落ち着いてください」


二人が二人、私に(へりくだ)るのですもの。

その内の一人は、友人の千早ちゃんだ。

千早ちゃんが、私をお嬢様などと呼んだことはないはずだ。三学期中は、実家に戻って勉強する事になる。と聞いてはいたが、何を勉強させられたのか、彼女の態度を見ただけで一目瞭然ですわ。


「何故、千早ちゃんがお嬢様なんて呼ぶんですの!」

「お前は将来、二人を部下として使わなければならん。同時に、千早も上を立てるということをせねばならん。中学では、二人をお前の護衛として入学させる。丁度いい機会だろう」


何が丁度良い機会なのか、私には理解できません。

いつもなら、私に何かあればすぐに近寄ってくるはずなのに、今は一歩引いて待機している。


この日、私は友人を一人失った事を知りました。




中学も一年を過ぎ、二年目だというのに、退屈極まりありませんわ。

お父様が何かをなさったのか、千早も瑠璃も同じクラスで、絶えず私についてくるので孤独ではありませんが。いえ、護衛としてついてくるので、対等な人が居ないという意味なら、孤独なのでしょう。


「はぁ……」

「お嬢様、どうかしましたか?」

「二年になってすぐ、林間学校とは面倒臭いですわね」

「四、五人の班を作れという事で、あと一人必要なのが問題で御座います。どう致しますか? お嬢様」

「はぁ……」


護衛二人を連れてる変人。

中学入学後にすぐ、私への認識はそうやって全校に広まった。

中学生の護衛を連れてる中学生。

自分でも、変と言うことに関しては、否定が出来ませんわ。

そのせいで他の人達は、既に別のグループで固まって班を作っている。


「私達と同じ班になる人など、おりませんわ。瑠璃、担任にその旨を伝え、三人の班での許可を貰ってきなさい」

「お嬢様お嬢様、あちらの方、一人のようですよ」


瑠璃に指示を出したら、千早が目ざとく一人の人を見つけた。


あの方は、確か……大日縁(おおひるゆかり)さんでしたか。

自己紹介のときに『堕天使、吸血鬼、異世界人以外の人は、興味がないから!』とか言ってた方ですわね。

私が言うのもなんですが……きっと、友達少ない方ですわね。


「そのようですわね。では、私達と班を組むように誘ってみましょう」


友人が少なそうと言う事で、親近感を覚えたので、班に誘おうと声をかける。


「大日さん、貴女一人のようですわね。私達と班になりませんこと?」


ゆっくりと、声をかけた私に見向き、ジロジロと私の顔を観察してくる。

どのような相手が誘ったのか、見定めるのは必要だと思いますが、こうも顔を見られると恥かしいですわ。


大日さんが、私を見てくることで、私も大日さんを見てしまう。

艶やかな長い黒髪に、長い(まつげ)に、綺麗で大きな黒い瞳。

あら、お人形みたいで、とても可愛らしいですわ。

同じ女同士だというのに、自然とそう思ってしまう。


「はん! あんたみたいなドリルお嬢様が、私と同じ班になるですって? 馬鹿な事言ってないで、本の中にでも帰りなさいよ! 二次元の世界に帰れ!」


……は?

その可愛らしいお人形から、何か理解不能な言葉が出ましたわ……。

予定外の言葉だったので、全部は理解できませんでしたが、わかったことがあります。

罵倒ですわね。私を罵倒したのは良く分かりました。


「お嬢様」


前に出ようとした瑠璃を、手で制す。

ふふふ、私を避ける人は数あれど、直接馬鹿にされたのは小学校以来ですわ。

ここは、私が相手をするべきところです。


「大日さん、いくら強がっても、班に入らねばならない決まりですわ。まさか、一人で参加するとか、林間学校行かない、等と子供じみた事を言うわけじゃありませんわよね? 今なら、私たち三人に加えて丁度四人です。さぁ、どうしますの?」

「うぎぎぎぎぎぎぎぎ」


ギリギリギリという音が聞こえてきそうなくらい、悔しがり歯軋りをしてますわね。

可愛い見た目と違い、物凄く気が強そうですわ。


「仕方ないから入ってあげるけど、そっちの二人みたいに、あんたに遠慮なんかしないからね!」

「えぇ、存分に好きになされたら良いですわ。好きに出来たらですけど。ホ~ホホホ」

「うぎぎぎぎぎぎぎぎ」


一切の気遣いも遠慮もないその態度に、とても気持ちいい気分になりますわね。

馬鹿にされて、嫌がられたというのに、私の心はすごく楽しい気持ちでいっぱいですわ。




体育の時間に、サッカーをしていますが、正直拍子抜けですわね。

ボールがある所にだけ、群れて集まろうとする相手チームの女子に対し、私と千早でロングパスをするだけで、決定的なチャンスが出来る。


相手の雑なプレイのせいで、タッタッタッと適当にドリブルしながら、相手ゴールを目指してしまう。


「お嬢様!」


千早が大きな声を出したが、理由がわからず一瞬動きが悪くなる。

その隙を待っていたように、横から気配がしましたわ。


「甘いのよ!」


滑るように、ボールを狙ってスライディングをしてくる人影が一つ。

いくら油断してたとは言え、同級生の女子にボールを奪われるとは思いませんでしたわね。


奪った相手を確認すると、小柄な女性が一人ドリブルで駆けて行く。

まさか、ボールを奪ったのがクラスで一番小柄な大日さんだとは思わず、ボーとその背中を見てしまう。


大日さんを止めようと、千早が前に立ちはだかるが……上手に体位を入れ替えて、ボールを取らせないように粘っている。その粘りも虚しく、最後は千早にボールを取られたようですが。

サッカーとは言え、千早と五分に渡り合うとは、恐るべしですわね。


その後も、大日さんは右へ左への大活躍で、私や千早にタックルやスライディング、果てはヒールリフトやマルセイユターンまで使い翻弄された。


言葉だけじゃなく、こういった事でも私と張り合おうとするとは。


結果は、2対1で私達のチームが勝ちました。

試合後に文句を言ってくる大日さんが、楽しくて堪りませんでしたわね。




大日さんの事がもっと知りたくて、なんとかならないかと瑠璃に思わず聞いてしまいました。

そうすると『では、火之夜と私で調べておきます。粉骨砕身』と快く、行動に移してくれましたわね。


報告書を見て、感嘆の声をあげてしまう。


「素晴らしいですわね」

「ありがとう御座います。有言実行」


ドレスを着るのや読書が趣味だとか、ドレスパーティーや日本文化のイベントによく参加してる等が書かれている。多少ぼかしてあるのは、これは明らかに覗き見と変わらず、最低限のマナーだと思ったからですわ。


「お嬢様、自宅内での行動も、調べられますが…」

「あまりプライベートな事を調べすぎるのは、良くありませんわ。ある程度で自重なさい」

「了解いたしました」


最近、瑠璃ともよく話すようになったが、この子は実に丁寧だ。

私の意を汲んで、積極的に動いて調べてくれるのも、好感が持てる。

やはり、護衛だからと距離を置くより、もっと話すべきだったのかしらね。




自分の入りたい高校に入学が出来たので、満足して午後の紅茶を楽しめますわ。


一般的な世間の事を学ぶ為、小中は公立へ。そして、より自分を高める為、高校は私学の女学院へ行かせるのが、お父様の予定だったのですけれど。

私が行くべきは天原学園、と説得が成功して何よりですわ。

それについては、瑠璃が色々手を回してくれたらしいので、お礼を言わねばなりませんわね。


「お、お嬢様、はぁ、はぁ」


噂をすれば影、息を切らせて瑠璃が来ましたわね。

……息を切らせてる姿は初めて見ましたわ。


「瑠璃、高校の事だけど良く「お嬢様!それどころではありません!」」


私の言葉を遮り、大きな声を出してくる。

大きな声も、私の発言を遮るのも初めてですわね。……嫌な予感がしますわ。

目で合図し、次の発言を促す。


「大日様が、事故に遭われました!」


言葉が聞こえ、意味を理解し、それでも納得するのに数秒かかる。

今、事故に遭ったと言ったのかしら?


「事故に遭ったと…それで、容態はどうなんですの?」


冷静に言ったつもりが、声が震えているのが自分でも分かる。

返事は、せいぜい骨折した位だろうと思ってるというのに。


「落ち着いて聞いて下さい…。頭蓋骨、右腕、肋骨、両足の骨折、内臓も複数損傷。靭帯も複数個所傷つき、生きているのが奇跡的な状況との事です……」


報告を聞いて、目の前が真っ白に。

重力の感覚も分からず、椅子から落ちてしまう。


「お嬢様!」


瑠璃が慌てて体を支えてくれる。

あぁ、このままでは、私と唯一対等に接してくれる人が居なくなる。友人が居なくなる。お互い明言した事はないけれど、私にとっては快い友人なのですわ。


「る、瑠璃、病院は? 医者は?」

「国立の防衛大付属病院に運ばれたようです。設備に関しては問題ないかと」

「では、医者は、お金はかかるけど、あの最高位のお医者様をお呼びしなければ」

「彼の方は、国外に居るのか所在がつかめず。しかし、同じく高名なKなるお医者様をお呼びしておりますので、ご心配なさらずに」

「大丈夫なのね?」

「そのドクターは、奇跡的な治療を数多くこなしております。ご安心して下さい」


あぁ、神でも仏でも誰でもいい。私の友人を助けて下さい。

祈った事がない私ですが、今だけは祈ります。

どうか、私の大切な友人を、元の最高に健康な状態に回復していただけるように。




大日さんが事故に遭って早一ヶ月。


瀕死の重傷だったのに、一ヶ月で治るとは、きっと色々な者に愛されてるのですわね。

今日が復帰の初日、また前のように楽しく言い合いをしたいものですわ。

クラスも寄付金を餌に、同じクラスになってますわ。

まぁ最後は理事長と話し合いで解決したので、寄付金は意味がなかったのですが。


抑えきれぬ程の気持ちを秘めて、今か今かと彼女を待つ。

すると、担任と一緒に大日さんが教室へ入ってきました。

何処となく緊張してるのは、さすがに復帰初日だからですわね?


「お、大日縁と言います。一ヶ月遅れですが、よろしくお願いします」


挨拶で、頭を教卓にゴチンとぶつけた彼女に違和感を持つ。

ビクビク怯えて、まるで小動物のようですわ。それはそれで可愛いのですが。

昔の彼女との違いに、違和感を感じながらも、復帰した事は素直に嬉しい。


さて、昔のように話しますわよ。




「御堂、大日を苛めるのはやめたまえ」


帰りのHRで、担任から唐突にそう言われましたわ。


苛め?誰が誰を?

私は、普段どおりに大日さんに接していました。

お昼ご飯も一緒にと、誘ったくらいなのですわ。


この担任、頭が膿んだのか、訳の分からない事を捲くし立てます。

しかし、聞き捨てならない事を言ってましたわね。

大日さんを愛でるとかなんとか…気持ちは分かりますが、許せない事ですわ!


「法で裁けぬならば、力で成敗するまでですわ! 全員!構え!」


私の号令と共に、道理を弁えたクラスメイト達が担任に天誅を行う。


昔の彼女なら、このような騒ぎになる前に、何かしら自分で言い返したりしてたでしょう。

何故今はそうしないのか?その心当たりがあるだけに、余計に彼女を心配してしまう。


瀕死の重傷を負う事故に遭ったのでしたわね。生存が奇跡と言われたほどの。

その事故で、今後に何も影響が出ないはずがないのですわ。

あの強くて孤高だった大日さんが、小動物のようにビクビクするのも当然なのかもしれないですわね。


今、誓いますわ。私が彼女を守っていこうと。




誓った翌日の朝から大失敗ですわ。


守ると誓い、うっかり膝の上に抱っこしたのがまずかったですわね……うぅ。

弱っていても、獣は獣。孤高な強者は、やはり保護には反対でしたのね。

後悔先に立たず……い、いえ、ここは彼女の元気な姿を見れて嬉しい、という事にしましょう。


そんな風に、必死に失敗を前向きにしようと愚考していると、天の声が聞こえましたわ。


「えっと、御堂さん。友達になりたい…」


それはもう、考える前に体が動き、彼女に近づき確認をしてしまう。

大日さん、本当ですの?と言った筈だが、上手く口が動いた自信はないですわね。

私の心配も杞憂に終わり、彼女は何度も頭を縦に振って、YESの意思を表してくれた。


お互いに、意識してたであろう人との明確な友人宣言。

それは、とてもつもない甘美な喜び。


私の胸は思わず高鳴る。


それは、彼女と友人となった今後の学園生活を夢見てですわ。






■お子神様の昔話


小さな村の中に、大きな蛇、それも八つの頭をもった大蛇の死骸が鎮座する。

その死骸のすぐ傍に、村中の人間から傅かれ、一人の男から剣を捧げられる女性が一人。


その女性は、長髪の黒髪に金の眼をし、神官服を身につけ、眼下の人々を見下ろす。


「お主が、あれが邪龍を屠りし者か? そして、(われ)を召喚した者は」

「へ、へへぇ~」


剣を両手で捧げる、ただの村人にしか見えない男に、呼び出された女性―――天照は問いかける。


死んでいる大蛇は、ヤマタノオロチと呼ばれる邪龍。

神々すら厄介者とし、近く高天原の神々が討伐しようとしていた相手である。


信じられぬ―――本来ならば、この村は、オロチに滅ぼされ、無くなる筈だった。

我ら神にとって予定外の事態が起こり、その直後に強力な神気を持つ者に呼びかけられた。

その呼びかけに応じ、来て見れば、神気を発するのは冴えない村人じゃとは。


「重ねて問う。あれが者を倒したるは汝か?」

「い、いえぇ、オラは倒してなどおりませんだ」

「では改めて問おう。アレはどうして死んだのじゃ?」


オロチには傷がなく、どのようにして倒されたのか、天照もわからなかった。

目の前の村の男から、オロチを倒して奪ったであろう神気を感じ、この男が倒したと言う事だけは理解していたが。


「あの化け物はぁ、酒が大層好きと聞いたんで、オラが酒に毒を仕込んだんですだ」

「毒じゃと?」


それは異な事だった。

彼の龍は、易い毒では死ぬはずがないのだから。

男の言葉に、天照が訝しげな視線を投げる。


「と、鳥の鶏冠(とさか)に似た毒の花や、ぷくっと膨れた魚の肝、黄色い石を粉末にした物、後ついでに茶葉もぶち込んでやりましただ!」

「(トリカブト、テトロドトキシン、ヒ素、カフェインも獣にとっては猛毒じゃな。まだ、発見されてないじゃろう毒をこうもまぁぶち込むとは…。)」


さすがのオロチも、複数の猛毒にさらされ命を落としたようだと結論付けて、次に男の処理をどうするかと意識を向ける。

男は既に、オロチを倒した因果により、神力を得ている。その力たるや、天照から見ても驚異的なものである。

だがその前に、自身を呼び出した理由を聞いてない事に気づいた。


「して、我を呼び出した理由は何じゃ」

「へへぇ、このすごそう剣を神様に納めようと思ったら、あなた様が来ましただ」


先程から男が掲げる剣こそ、死したオロチの尾より生まれし神剣である。

天照は警戒しつつ、その剣を手に取り空に掲げる。


凄まじい力を秘めた剣じゃな。だが、オロチの神力持ちし者しか力を出せぬか。厄介な。


男に対する警戒を強め、凝視する。

しかし、何処からどう見てもただの村人。

見るからに強い力を発する剣を、迷いなく天照に捧げるのは、力を求めず平穏な性格なのかもしれない。


さらに、この男は神力を得て、既に神と言える。この国で生まれた神ならば、高天原を納める天照にとって、弟神に等しい。

人の身で、新たな神と成りし弟を心配こそすれ、始末しようと思ってたことがバカらしくなる。


「この剣はお主が持つが良い。お主は既に神気を得た神の身なれば、望むなら高天原へ連れてゆくが?」

「か、神といわれても困るですだ。オラは嫁さんも居て、まだこの村で暮らしたいだ」


神の力を得たところで、所詮は村人一般人。

その望む展望も、お嫁さんと村で暮らしたいという平穏そのもの。

その望外に平和な男に、逆に心配の念が起こる。


「ならば、お主が得た神力を慣らすまで、我も共にこの村に住むのじゃ。して、お主名はなんと申す」

「す、すさのおですだ。神様」

「良し! ならば、お主は今後、建速須佐之男命たけはやすさのおのみことと名乗るのじゃ! そして覚えるが良い! 我が名は天照大神(あまてらすおおみかみ)じゃ!」


へへぇえ、と再び村人全員から傅かれる。

こうして、天照のスサノオへの指導が始まった。




ある一軒の家の前に、大きな穴があいている。

その穴から、神々しい光の輝きが溢れ出ている。


「ハッハッハ~、スサノオ、な~んで(われ)は落とし穴に嵌っているんじゃの~?」

「家に入ろうとする猪なんかを、落とす為の罠ですだ。下に竹やりを敷いてるので、殺傷能力もばっちりですだ!」

「それはあれか? 穴を知らぬ客人も落ちるのではないか? 我の様な!」

「いやぁ、ちゃんと目印の棒立ててるので、落ちませんだよ。落ちた人は天照様が初めてですだ」

「ハッハッハ~、中々愉快な奴じゃのぅ。我が神でなければ即死じゃろうに」

「はっはっはっはっ、いやぁ褒められると嬉しいですだ」


ハッハッハッと、和やかな笑い声が、穴の上と中で響く。

笑いが響く中で、いつの間にやら片方の笑いが止まる。

果たして、どちらの笑いが止まったのか。


「ちょっと痛い目を見るといいのじゃ。神の天罰の雷を食らうが良いわ!」

「ぎょぇぇぇぇぁあぁ!!」


その日、村の人々は晴れてる日なのに雷を見たとか見ないとか。




木々茂る山の中、バギボギバギと木々の折れる音が鳴り響く。

木をへし折り、押し倒し、二人を追う影は数メートルはあろうかと言う巨躯の猪。


「このバカタレがぁぁあ! 何故いきなり天叢雲剣あめのむらくものつるぎをぶん回すのじゃ!」

「天照様の(やしろ)を建てようと木を切ってただべが、斧が折れたで、剣で斬ってみたんですだ」


二人は猪に追われながら、普通に会話をする。

さすがに、両名とも過大な神力を持った神である。

走りながら会話など朝飯前だ。


「まだ扱えんのに、振るな! 山をぶっ飛ばされて、土地神が怒り狂っておるじゃろが!」

「まさか、木どころか山ぁ吹き飛ばすなんて、恐ろしいだぁ」

「我は、お前の迂闊さこそ恐ろしいわ!」


自分の土地を、山ごと消し去られた土地神こと巨躯の猪は、怒りで真っ赤な眼を光らせ、二人を猛追する。


「天照様ぁ、神様なんだら、なんとか土地神様ぁ沈められねぇだか~?」

「我が大和の神を統べるといっても、各地の土地は土地神の管轄じゃ。今回は明らかに我等に非があるので、あやつが怒るのも当然で、止められぬわ~~」

「それは残念だぁ」


そうやって会話をしながら、二人と一匹は駆けて行く。


七日間走り通した後、猪神に謝り許されたという。




ゴゴゴゴゴゴゴゴと言う威圧と共に、海より伸びる長い首が海岸の人影を見つめている。


「フッフッフ~、スサノオ、念話で呼び出されてすぐで悪いが、我は用事があるので村に帰るのじゃ」

「そっただ事言わねぇで、何とかしてくだせい」


どう考えても怒ってる様子の、海から顔を出してる蛇のような生物を仕方なく見る。

その威容は、黒い表皮から怨念のようなオーラを出し、二人を威嚇どころか、殺意をもって睨んでいた。


「念の為聞くがの、お主何やったのじゃ?」

「剣の練習に山とかだとまずいと思い、海に向けてやってたですだ」

「……ちなみに、どのくらいの時間、どの程度の事をじゃ?」

「朝からお日様が一番上に上がるまで、海に向かって山ぁ削ったやつをたくさん打ってましただぁ」


そのあまりの遠慮のなさに、立ち眩みする天照。

スサノオは確かに気を使ったのだ。

先日、猪神に迷惑をかけた事を心底後悔し、剣を扱えるように練習しようとした。そして、海に向けてなら、削り取るような山もないので安心だと、場所まで考慮して、練習場所に海岸を選んだのだ。


「海にもの、しっかり縄張りがあっての……あれは海神と言われる、この海域を納める土地神じゃ」

「あ、それはそれは、新米神のスサノオですだ。よろしくお願いしますだ」

「挨拶してる処悪いのじゃが、たぶん怒りで聞こえておらんぞ」

「何かあっただ?」


スサノオの悪意のない様子に、絶望しか感じない天照。

何故、こやつに剣を渡したんじゃろう。

何故、こやつの面倒を見ようとか思ったんじゃろう。

何故、もっと早くオロチを倒さなかったかな我は。

等々と、過去の自分にしきりに後悔する。


せめてもの慰めにと、アホゥな弟神に現状を理解させる。


「自分の納める土地、海域に、山もを削る斬撃を朝からずーとされたら、誰でも怒ると思わんか?」

「な、なるほど…。オラはなんてことしてしまっただ…」


現状を理解し、同じく絶望した弟神に多少の溜飲を下げる。


「で、怒られたらどうなるだべ?」


弟神が、まったく理解してない事を悟り、逆に笑いがこみ上げる。


「フハハハハ、そうじゃなぁ。ちょぉっと数万から数十万リットルの海水を、我等二人だけにぶつけて来るんじゃないかのぅ? 何、季節も夏じゃ、良かったの~」

「あははは、水浴びは気持ちいいだでな!」


二人の笑いが木霊する中、上空からドドドドドドドという咆哮と共に、大量の水が降り注ぐ。 

降り注いだ海水による虹を見て、村人達は綺麗だと喜んだという。


数日後、漁をしていた漁師が海に浮かぶ男女の兄弟を、拾ったとか拾ってないとか。




村に神様が現れてから、あらゆる物が豊作となり、記念に宴会を開く村人達。

その中に、崇められるべき光り輝く女性は居ない。


酔っ払いの男が一人、近くの岩場に向かい話している。


「天照様ぁ、でてきてくだせいー」

「嫌じゃー、我はもう嫌じゃー」


その岩場は、元々洞窟となっていて、そこに篭った天照が岩で蓋をし篭っているのだ。

篭った理由はというと。


「なして、いじけるだぁ」

「いじけて等おらぬ! ただちょっと、高天原の主たる我が、穴に落ちたり、土地神に怒られたり、漂流したりと、納得がいかぬだけじゃ!」


すっかり拗ねていじけた天照を、スサノオが宥めている。

スサノオも悪いという気持ちはあるのだが、どう言えばいいか分からない。

過去の運の悪いことを嘆いても、どうにもならないので、楽しい事を薦めようと言葉にする。


「天照様ぁ来てくれたおかげで、稲穂や鳥も大量だぁ。魚もいっぱいで美味しいべよぉ」

「我が食い物でつれると思うてか? …じゅる」


岩戸に篭り既に数日、神とは言え食べ物は食べたい。

じゅるという音に手ごたえを感じ、スサノオはさらに言葉を進める。


「あれだぁ、村一番の踊り手のうずめの舞を見てほしいだぁ。天照様だってきっと喜ぶだぁ」

「はぁ~~~~~~~」


色々な失敗を悔いてるのは我だけか?

そんな疑問が天照に浮かぶ。

スサノオの無邪気に薦めてくる声を聞いて、悩んでるのが自分だけだと馬鹿らしく感じてしまう。


「そうですよ、天照様、うずめちゃんは踊りが上手なんですよ。機嫌を治して一緒に見ましょう」


あげくには、その嫁ごにまで慰められる始末。

岩戸の中にまで、村人の楽しい声が聞こえてくる。

自分だけが、その楽しみを味わえない事に、今してる事を振り返り、がっくり肩を落とす。


ゴガガガガガと音が鳴り、岩戸の扉が開く。


「クシナダ、お主、このアホゥに付き合って疲れぬのか?」

「そのあほぅな処が楽しいのですよ」

「オラァあほじゃねぇだ。ちょっとうっかりなだけだぁ」


ちょっとのうっかりで、神を翻弄するでない!

そう叫びたかったが、弟神の笑顔を見てると、どうでもよくなる。


「えぇぃ、我にも酒をよこさんか! して、噂の踊り手はどこじゃ! こうなれば、とことん見てくれるわ!」


結局、宴会に加わり楽しそうにする天照。


そんな天照とスサノオの珍道中は、もう暫く続いたとさ。






■続・頑張れ信幸くん


「僕は、新しく入った部活の会合に行かなきゃいけないんだ」


そう、親友である隆一……いや、もう大日さんか……。

そう、親友である大日さんに言って、会合がある視聴覚室へやって来た。


入るために扉を叩く。

すると、中から合言葉を要求されるはずだ。


「山」

「ぺったん」

「谷」

「ぺったんこ」

「入れ」


どうでもいいけどこの合言葉、一部の人に激怒されるんじゃないかな。誰とは言わないけど。

中へ入ると、カーテンが閉められ、電気も消され真っ暗だった。

カーテンから微かに漏れる日差しで、中の様子が少し分かる程度だ。


「この覆面を被れ。自由に意見をする為、顔を隠し参加する義務がある」

「わかったよ」


入り口に待機してた三角覆面を被った人から、同じく三角覆面を受け取る。

それを被り、部屋の中を見回してみると、同じ様なのが二、三十人ほど居るようだ。

暗い中でもその光景は、怪しさ満点だった。いや、暗いからこそだろうか?


「さて、予定の時間だ。諸君、秘密部活OYMCの会合に集まってくれて感謝する」


僕がきょろきょろしてると、部屋の前方の壇上に立った白衣を着た三角覆面が、話し出した。

ちなみに、OYMCとは、O=おおひる、Y=ゆかりを、M=見守る、C=クラブの略称だ。


「この会合は俺が仕切るが、決して俺が諸君の上に立つわけではない。我らは役目こそ違うが、皆が同等に同じ目標を掲げた同士である!」

「「「「おぉおおお!」」」」


白衣の人物の発言で、歓声が上がる。

僕はその光景を見て、げんなりする。


白衣って……あれ、どう考えても担任の天之先生だよね。

あの人、四月中はまともだったはずだ。対象が居なかったからかもしれないが。

三年担当の美月先生という婚約者が居るというに、この部活の顧問をして大丈夫なんだろうか。


「諸君に集まってもらったのは他でもない、我らがOYMCの組織構成と行動指針を説明する為だ」

「「「「おおぉぉおおぉ」」」」


一々盛り上がる室内に、僕のテンションは最底辺だ。

誰もこの様子に疑問を持たないのだろうか。持たないんだろうなぁ。


「まず、組織構成だが上から、ゴールド、シルバー、ブラックという段階毎に権限を分けている」


皆各自、自分が持っている会員証カードを取り出している。

僕のは、菩比さんが用意してくれたゴールドだ。


「ゴールドだが、これは幹部の証だ。同等である我らの中で、幹部という役割があるのに疑問がある者も居ると思う。だが、組織として運営する以上、最低限の上下関係を許してほしい」


説明を受けながら、疑問が浮かぶ。

皆のこの盛り上がり方は、やはりおかしい。


「ゴールドの権限だが、これを持つ者は自分から我らが女神へ、接触を計る権利を有する。さらに、シルバー、ブラックに対し、絶対の命令権がある」

「「「「ぶーぶー」」」」


ゴールドの説明を受けて、僕以外の全員がブーイングをする。

……いや、前の方にいる三名もしてないね。


覆面のサイドから、穴が開いてるのか、巻いた髪が出てる女生徒。

それと、同じく穴が開いてるのか、後方からポニーテールが出ている女生徒。

そして、覆面の上から器用にメガネをしている女生徒。


おそらくだが、うちのクラスの三名に違いない。


「次のシルバーだが、女神へ挨拶する権利を有する。さらに、有事の際にブラックを率いて女神を守る義務がある。まぁ守るのは義務と言ったが、自主的に行ってくれると期待する」

「「おぉぉおぉ」」


ゴールドの時と違い、少しだが歓声が上がる。

それを見て、前から思ってた疑問を考える。


前から思ってたんだよね。

女の子に転生やら性転換した子が、普通の女子よりモテる話はいっぱいだ。

告白の嵐やら、ファンクラブやら、果ては同性にまで好かれるのだ。

だが、常識的に考えて、そんな事になるはずがない。と。


色々な手入れや、仕草、女子同士の縄張りの距離感。

そういう物が決定的にない、或いは普通以下の女子が、ちょっと可愛いくらいでモテるだろうか?

まして、今参加してる実質ファンクラブが作られるなんて、ありえないだろう。


「最後にブラックだが、女神への自分からの接触、及び挨拶は禁止だ。女神から接触された場合のみ、会話が許される。寂しく感じる者もいるかもしれない。だが、ブラックの諸君には重要な使命がある」


まぁ、美人で故意じゃない仕草が可愛いからモテるんだよ。

他人事なら、そういう物だ。で済むかもしれない。


しかし、現実として大日さんはモテる。こんな部活まで出来るほどに。

親友としては、可愛いからモテるんだよ。では済まないのだ。


何故モテるかに、僕は一つの結論がある。

それは、大日さんがロリ神様から貰ったチート能力だ。


「ブラックの諸君は、告白者及び、それに類似する行為、手紙などを使った情報伝達の阻止だ。これは極めて重要であり、我らOYMCの根幹を成す主戦力だ。誇りを持って行って欲しい」


大日さんはロリ神様に、最高に健康な体を貰ったはずだ。

では、最高に健康とはなんだろうか?

無病息災に、怪我に対する超回復力、さらに運動能力の向上がパッと思い浮かぶ。


甘い、甘いんだ。

世に言うロリ神が、そんな簡単に、常識的なチートで済ますはずがないんだ。

そこで、今の状況を鑑みて、僕が結論したのは『異性に対する魅了効果も最高なのではないか』だ。


一般的に言うなら、フェロモンだろうか。

生物が、異性を惹きつける匂いというイメージがある。

そういう物も、最高になっているんじゃないかな。


「最後に、行動指針だが、我らは女神を孤独にする為の組織ではない。その為、安全保障がされているゴールド及び、シルバーには、自分から関わる権限が与えられている。特にゴールドは友人として、友人としてだぞ、頑張ってもらいたい」


担任の発言を聞き、かなりの確信を持ってしまう。

ついでにあれって、僕に対する忠告だよね。

今後のことを考えると、溜息しか出てこないよね……。




今日は御堂さんと部活見学に行くようだ。

僕だけじゃなく、女子の友人と行動するのは良いことだと思う。


しかし、油断してはいけない。

最近の大日さんは、大分周りに気を許している。気が緩んでると言ってもいい。


孤児で、孤児院育ち、仲間は居ても家族は居なかった。

その上、院長は愛情を持ってたけれど、いつか独立させる為に一定の距離を置いていた。

さらに、容姿のせいで友人も僕しか居ない時期が長かった。


そんな隆一、現大日さんに、家族が出来て、友人が一気に四人も増えたんだ。

愛情に飢えてたであろうから、今みたいな状況になれば…。


心を許した人達に甘えるよね。

言わば今の大日さんは、デレ期なのだ。似合わない俺とか言う一人称を使い、肩肘張ってた昔がツンかな。


だから、決して油断してはいけないんだ。




「信幸、一緒にご飯食べよう」


大日さんが、昼休みに僕をご飯に誘ってくる。

先日、ゴールド会員証を披露する機会があり、クラス内では僕は安全だ。

だが、あまりに気軽に誘われると、少しドキリとしてしまう。身の安全の心配で。


「うん、いいよ。じゃあ、学食に行こうか」

「あ、今日は中庭に行こう」

「じゃあ、僕はパンでも買ってくるよ。先に行ってるか教室で待ってて」

「大丈夫大丈夫、ちゃんと作ってきたから」


あぁ、なんだろう。

こんなにも不安にされる、大丈夫という台詞があるんだね。




中庭に出て、二人で芝生の上に座る。

いつもは人がそれなりなのに、今日は妙に少ない。

少ない理由は故意的に考えない。そうじゃないと、僕の平穏が破られる。


「ん、信幸の為に、お弁当作ってきたんだ」


そう言って、ピンクの可愛らしいお弁当箱を渡してくる。

中身を見ると、ハートやLOVEとか書かれたそぼろがないことに、心の底から安堵する。


「ありがとう」

「ん、気にするな」


お礼を言うと、顔を赤くして目を逸らし恥かしがる。

そんな可愛い動作をしないで欲しい。


残念な事に、大日さんは僕から見てもとても可愛い。

肌とか髪とか綺麗だし、睫も綺麗に伸びてるし、爪も手入れをしているのか綺麗な桃色で輝いている。

シミとか肌荒れなんか、一つもないんだよ。


「大日さん、爪とか肌の手入れ頑張ってるんだ?」


今後も、女の子として生きていくのだから、女子としての手入れを学んで頑張るのは好ましい。

親友として、素直に応援したくなる。


「ん? 別に爪とか肌の手入れなんてしてないぞ? せいぜいお風呂でリンスをするくらい?」


そんな馬鹿なと、思わずには居られない。

僕は知っているのだ。女子が普段、どれだけ色々頑張って可愛さを演出してるかを。

何の手入れもせずに、リンスだけでこの可愛さを出せるはずがない。髪だけなら別だけど。


そこでハッと気づく。

まさか、これもチート能力!?


最高に健康とは、まさか、最高の美貌すら兼ね備えるというのだろうか。

とてもありえそうだ。


「毎日お弁当を作ってやりたいんだけど、月夜さんも食べたいって言うから、順番に作ってくる事になったんだ」

「そうなんだ」


先程から雑談する時の仕草や、お弁当を食べる姿が、小動物チックで可愛らしい。

普通の女の子が、同じようにしてくれたら、僕は両手を上げて喜んだと思う。


「で、結局さ、皆食べたいって言うから、五日に一回になるけど、我慢してくれ」


毎日気を使わずに済むという、素晴らしい情報を得られた事は素晴らしい。

しかし、菩比さんに後で伝えねばならない。

僕が頼みたいのは、男子が望む女子的行動ではなく、男女の距離感などの、女子としてのあり方を教えて欲しいのだと。


無邪気に笑いながら、色々話す親友を見る。

その笑顔に、今後の苦労を想像して内心溜息をついてしまう。


可能ならば神様に聞いてみたい。


ロリ神様、これは何の試練ですか、と。




■お嬢様の狂詩曲

御堂さんの小学校から、現在までの話。

なんだか、普通に苦労してますね。


■お子神様の昔話

三人称での練習話。


天照とスサノオのコンビって、思ったよりコメディチックに。

スサノオファンから怒られそう…。


■続・頑張れ信幸くん

普通に現在進行形での苦労人。


院長や信幸君が居なかったら、主人公はどうなってたか。

私も最高に健康なチート能力ほしいです。



この三本、普通に本編1話分の文字数あるんですよね。

纏めないで、1本ずつアップしたほうが良いんでしょうか?

でも、外伝なんですよねぇ。

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