4.兄妹
「ブライ兄さま!」
朝起きると、次兄がそこにいた。
ブライアンは宮殿でとても重宝されているため、長期休暇どころか休暇すら望めないほど多忙であるため、今回は会えないかもしれないと半ば諦めていたので次兄がいたことにコーデリアは心の底から喜んだ。
「おはよう、コーデ」
「おはようございます、ブライ兄さま! どのくらいこちらに?」
「お前が宮殿に上がるのと一緒に戻るから」
「じゃあ、ブライ兄さまと一緒に行けるのね、嬉しい」
コーデリアの喜んでいる顔を見て、ブライアンも苦労が報われたと微笑んだ。
上官を机に縛りつけるどころか、米神にナイフを突きつけ脅して書類を進ませてきてよかったと、心の底から思ったのはコーデリアには秘密である。
「ブライ兄さま、明後日からの視察にはブライ兄さまもついてきてくださる?」
「もちろん、可愛いコーデの頼みならね」
「嬉しい!みんなで旅行できるみたいで、夢のようです」
ああ、本当に可愛い。
本当だったら、この可愛さに一昨日の時点であえていたはずだということを思い出すと、ナイフでは物足りなかったと反省をした。次は、斧でも突きつけよう。うん。
ブライアンが物騒な想像をしているなんて露知らず、コーデは幸せそうに微笑んでアルベルトのもとにかけていく。
「アル兄さま!ブライ兄さまが帰ってきてるの!明後日からの視察も一緒に行ってくださるって」
「ブライは強行軍で帰ってきたんだから、昨日帰って明後日から連れ回すなんて無体なことはしてはいけないよ。休ませてあげないと」
「ちょっと待て、兄さん。俺に休みなんて必要ないし、行ける」
「冗談だよ。お前の体力馬鹿は俺が一番知ってる。……ブライの活躍は騎士団まで届いてたよ…」
アルベルトはため息をついた。
騎士団の第三団の団長を務めていた自分だが、それでも、ブライアンの所業は耳に届いていた。
槍で上官の服を切り裂いただの、消えた上官を見つけるために油をまいてみたりだの、果てない上官との攻防を。
「それは、あいつが悪いんだって!なんであんな奴が、この国の法務大臣なんだ?!まず、あいつが法に裁かれろ!」
「それをいうなら、なんであんな無能なのに父様が運輸大臣なのかって話になっちゃうから、やめましょ」
いや、それかなりの毒舌だからとアルベルトは可愛い妹に対して思ったが、この一年でありえないくらい領土の管理が杜撰だったことの尻拭いをこの3日で手を回し立ち直したからこそ出てしまった言葉だと思いたい。
……いつしか自分も言われるのではないかと思うと少し恐ろしい。いや、だいぶ恐ろしい。
ひきつってしまった顔をみて、コーデリアは笑顔で言う。
「大丈夫、アル兄さまにはちゃんと基本を教えていきますから!しっかり今日もついてきてくださいね」
いや、コーデリア。心読まないでくれ。
兄の叫びは聞こえたのか、うでを引っ張って執務室へ連れて行かれる。
そこにはすでに失格者の烙印を押された父親の姿はなかった。世の中、世知辛い。
******
月は闇夜を引き連れて、我が物顔で付き従わせている。
光に反射する肌で、自分が闇の呑まれていないことをコーデリアは確認して安堵をした。
あの人に誇って逢いたいのならば、闇に呑まれるわけは行かない。
けれど、涙を流すくらいは、この闇夜のどこかにあの人がいることを望んでしまうことくらいは、まだ許して。
昼間は笑っているから、お願い。
だから、まだ、私でいさせて。
疼く体を、必死に押さえつけた。
月日はあっという間に経ち、コーデリアは王宮に上がる前日を迎えた。
それはコーデリアの予想より3日も遅く、けれど世間の予想より1月も早かった。
コーデリアの母は、現王の妹だった。
そのため、コーデリアもアルベルトもブライアンもすべて王族の血を継ぐ。
そして王子、王女は彼女らのいとこにあたった。
グレースでは、王位継承権は男に縛られるものではなく、女にも平等に与えられるものであり、近年では男王が多くはあるが、初代国王は女王であることから女王も多い国である。
王位は直系が継ぐことが多いため、傍系は臣籍降下や降嫁することでほとんど王政に関わることはない。
コーデリアたちもそういうつもりであった。
コーデリアの「証」を見つけるまでは。
父も母も知らない。
ましてや、現王すら知らない。
「国主の証」をコーデリアが持つことは。
証をもつからには、「国」を継ぐことは、覚悟していた。
唯一そのことを知るアルベルトもブライアンも、「妹」を手放し、コーデリアに仕えることも覚悟していた。
だから、王宮からの使者が来たときは、ついにその時が来ただけだとコーデリアは悲しく微笑んだ。
覚悟ができたといっても、心の底から信じてきた兄弟との別れは辛かった。
「今生の別れではないよ」
だから、胸を張って行け。
アルベルトは、コーデリアの背を押した。
ブライアンはコーデリアに付き添い、笑んだ。
「俺は、ちゃんと見守ってやるから」
コーデリアは静かに頷き、ブライアンとともに遣いの馬車に乗り込んだ。
とりあえず、兄はギャグ要員でした(書いててびっくりしました)。
もともと二次創作書いてたときはギャグ書きだった昔を思い出しました(笑)。
次回から、ようやく逆ハーレム要員が少しずつ出てきます。
ええ、多分ね!きっとね!願望だけですが!!




