第1話:事務員募集中
初めての投稿です。小説初心者なので気楽にみてください。
空が暗くなりはじめ、子どもの遊ぶ姿も見えなくなった公園で、コーヒーを飲みながらブランコに乗っている少年がいた。
はぁ〜、と溜め息をつく姿はリストラされたオッサンさながらである。
彼の名前は有田一郎。今年で高校2年生になる。明らかに染められたとわかる金髪に、今時の若者といった風に学ランを着崩している。
「やべーなぁ」
とポツリと独り言をもらしてみる。一郎はつい先日に、客とのいざこざのせいでずっと勤めていたバイト先をクビになってしまった。
今新しいバイト先を探している最中なのだが、今のところ全滅だ。
このさい時給800円以上は諦めるか、と考えながらふと顔を上げた時、その女はいた。
腰ほどまである長い黒髪に、真っ白なワンピース。5月にはいったばかりのこの時期には不釣り合いな格好だ。
さらにその顔色は青白く、まるで死人のようだ。
またか、と一郎は思った。死人のようなその女は世間で言う幽霊、というやつだ。彼は昔からその幽霊、とやらが見えてしまうのだ。
それはもうバッチリ。
小さい頃は生きている人間とその幽霊の区別ができないくらいだった。そのせいで昔は変な子ども扱いされて困ったものだった。
だが今は区別できる。顔色がいいのが生きている人間で、悪いのが幽霊だ。
それにその幽霊とやらは変な格好している事が多いので間違えて話しかける事はもうない。
とりあえず無視だな、と思いそのまま公園を出た。ああいうのに話しかけると愚痴を延々聞かされるか、頼みを聞いて欲しいとすがられるからだ。
コンビニで求人雑誌でも買おうかと思い、繁華街の方に向かっているとき、その張り紙が目に入った。
《オサダ相談所》
『どんなご相談、ご依頼も承ります。』
また随分と大雑把だな、と思いつつじっと見ていると、
『事務員募集中。
年齢・経歴は問いません。』
事務員…こういうバイトは楽な割に時給がいいのだ。歯医者の受付しかり、だ。
高校生は無理だろうか…と考えていると、
「何か用かな?」
と突然話しかけられた。びっくりして振り返ると、ニコニコと笑っている男がいた。30代後半ぐらいだろうか。ボサボサの頭によれよれのスーツ。ネクタイはつけていると言うよりぶら下がっている、といった感じだ。
不審そうな目で見つめていると、
「それ、僕の事務所なんだ。」
と男が指指す先を見ると、《オサダ相談所》と書かれた張り紙があった。
ああ、と思い男を見ると、ニコニコとこちらの返事を待っているようだ。
「いや、事務員募集って書いてあるから…高校生でもいいのかなって思って…」
と答えると、目を一瞬見開いた後、嬉しそうに目を輝かせて、もちろん!!と言った。
「いや〜ずっと募集してるんだけど誰も面接に来なくてね〜。
嬉しいなぁ〜。あ、今からヒマ?だったら事務所に来て面接しない?」
と一気に言われたため、はい、何てつい言ってしまった。
じゃ、こっちだから、とスタスタ路地裏へ進んでいく男を慌て追いながら、大丈夫かなぁ、と一郎は不安になった。