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悪意渦巻く集会

ドンッドンッとドアを叩く音が聞こえた。

次いで、ガチャとドアノブが回り、ドアが開いた。

「おぉっ!?」

清田は思わず声を出してしまった。部屋には、すでに人が集まっていた。結構な数の人数がいる。ざっと見て、30人くらいか。

「これで、え〜、揃いましたかね?うん、揃ったね」

深沢がそう言うと、手をパンッ!と叩き、椅子から立ち上がった。

「諸君!暑い中、よく来てくれた。この日を迎えられて、私は嬉しいよ。今日、今から、この場所から、私が社会を、いや…日本を統制する!!」

深沢の宣言に何人かが驚きの表情を浮かべている。清田もその一人だ。

「君達は、そこにいたるプロセスに欠かせない、貴重な人材である。非常に期待している。しっかり、働いてくれよ」その時、すっと一人の男が立ち上がり言った。「あんたの計画なんてどうでもいい。ちゃんと報酬さえもらえればな。条件次第で動く」「もちろん、報酬は半端なものにする気はないよ。それは心配しなくていい」それを聞いた男が座るのを確認し、深沢は再び話し始めた。「これからの行動については、各自に連絡する。いずれ、合同で動くこともあると思う。それでは、今日はこれぐらいで解散としよう」座っていた面々は立ち上がった。すると、深沢の正面にいた男が部屋中を見回してから聞いた。「深沢さんよ〜、トム・マッケンジーはいないの?奴もいると思ってたんだけど。あの殺し屋が日本に来てるって聞いて、絶対ここに来るなと思ってたんだけどなぁ」

「あぁ、来る予定ではあったんだけどねぇ、用事が出来て帰ったらしい。彼とは連絡が取れなくなってね。ねっ!吉岡君」深沢は窓際に立っている男に同意を求めるように言った。吉岡と呼ばれた男は、小さく頷いた。

「ちっ!面白くねえな。どんな奴か確かめたかったのによ。恐くなって逃げたしたんじゃないか?まあ、そこまでの奴だったってことか」そう言うと、男は部屋を出ていった。

部屋から続々と人が出て行った。清田は、エレベーターであの面々と顔を会わすのは緊張するし、嫌だったから残っていた。部屋を見渡して確認してみる。「あっ!」そこには、見覚えのある顔があった。部屋の奥の隅に前にビルの入口ですれ違った男と少女がいた。「やっぱり彼等も来てたんだ」再度、部屋を確認する。あとは先程、吉岡と呼ばれた男だけになっていた。そして、深沢と秘書の古閑。

小さく息を吐き、何気なく向けた視線が深沢の視線とぶつかった。「どうした、清田君?一人だと緊張したかい?」深沢は笑みを浮かべて言った。「ええ、人が多くてびっくりしました」「そうか。でも、これでびっくりしてたら仕事にならないよ。頑張ってくれよ」「はい」「それでは、私は失礼するよ」そう言って深沢は部屋を後にし、古賀もそれに続いた。清田もそろそろビルを出ることにした。部屋から出て、エレベーターに乗り、一階のボタンを押した。その時、吉岡が乗り込んできた。扉が閉まり、エレベーターが動き出した。「あの、緊張しましたよね」吉岡が清田に話し掛けた。「あっ、はい。人があんなに多いとは思ってなかったですよ」「ですね」頷きながら吉岡も同意した。「いろんな人がいましたよ。有名人とかも。見ました?」「いえ」清田は興味がありげな表情を浮かべながら聞いた「見る余裕がなくて。どんな人がいたんですか?」「ほら、さっき深沢さんに話し掛けてた男いたでしょ。あれは、俳優の牛尾コウスケですよ」清田は驚いた「えっ!そうだったんですか!あの人気若手俳優の!?」吉岡は頷いた。「あと、僕も驚いたんですけど1番後ろに帽子を被って

いた女がいたんですけど、あれはたぶん、モデルの藤堂ユリです」「ええっ!あのユリっぺですか?」藤堂ユリは、20、30代の女性に人気の雑誌QUEENの専属モデルである。「え〜」清田はまだ素っ頓狂な声をあげている。「近くで顔を見たから間違いないと思うよ」「そうですか…、なんか複雑な気持ちです。彼等に裏の顔があったなんて」「そうですね…」二人は残念そうな表情を浮かべながら顔を見合わせた。その時、エレベーターが一階に到着した。一階のフロアに出て、清田は吉岡に言った。「あっ、僕はちょっとここで休憩してから帰ります」近くのソファーに手をかけていた。「そうですか、それでは僕は帰りますね。また、会いましょう!たぶん会うでしょう、何となく」「はい!そんな気がします」「それでは、さようなら」吉岡が右手を挙げて合図をし、清田も同じようにして応えて別れた。清田は、ソファーに腰掛け、肩から斜めに掛けていた鞄から清涼飲料水入りのペットボトルを取り出し喉を潤した。携帯を開き、ニュースを見た。今日も、日本全国では様々な事件が起こっていた。「ネット犯罪に、青年が暴行され重体。はぁ…」まだあったが読むのをやめた。

そし

て、スポーツ情報を見ようとした時、足音が聞こえたので顔を上げると、あの男と少女の二人だった。男が軽く会釈をしたので、清田も返した。横にいる少女にも視線を向け、笑顔で会釈した。「こんにちは」少女は少し照れた顔をしながら

言った。

「あっ!こんにちは!!」応えてくれたことに少し驚いたが、嬉しくて清田は挨拶を返した。

「今日は、一人ですか?」男はその場に立ち止まり聞いてきた。

「はい、用事があるみたいで…」男は頷いた。そこで会話が途切れてしまい、少し沈黙の間ができた。

「えっと…あっ、そうだそうだ!さっきの人達の中に有名人とかいたみたいですよ」このフレーズに賭けた。

「そうなんですか?やっかいな事になりそうですね」反応は上々かな?と思いながら続ける。

「ですね。後は、あの殺人鬼が来る予定だったのもびっくりしました」「あぁ、用事で帰った殺人鬼ですね」男は少し笑いながら言った。「でも、殺人犯を入れるとはちょっと…」

男は清田を見つめて少し間をあけてから言った。「彼にとっては、あなたたちや僕たちと同じで、実績をつくる為の行為だったんじゃないですか?」清田は驚いた。

「殺しが実績!?そんな!」

「僕たちがやったことも重罪ですよ」

「でも、人殺しは酷すぎる…」

「まあ、あんな組織じゃ、何がいてもおかしくないとは思いますが」

「ですね…」まったくだと清田は思った。「あの…」清田は少女をちらっと見てから質問した。「その危険な組織に入るにはそれぞれ理由があると思いますが、あなたたちは?」

男は苦笑いのような表情を浮かべる。「それを聞きますか、あなたたちの敵かもしれませんよ?」

「僕たちは組織を潰そうとしてます!」

清田の思わぬ発言に男は驚いた表情を見せたが、一瞬間を置いてから男は笑った。「面白い人ですね、あなたは」男は清田の顔をじっと見つめた。

「それだったら、あなたたちとは戦わないですみそうです」「えっ!?」

「僕たちも組織を…深沢を潰すつもりですから」「そうなんですか!よかった〜」安堵しながら清田は喜んだ。その時、清田の携帯が震えた。つい先程から三回目の震えであったので、これは取らないといけない震えだと思い携帯を開いた。「あっ、ちょっと用事ができたんで、僕行きます。話せてよかったです」男は頷いた。立ち上がった清田に言った。

「じゃあまた、どこかで近いうちに」

「はい」そう清田は言うと、ビルの入口に向かって歩いていった。その姿を見送っていた男と少女。入口付近まで行った清田の背中を見ながら少女は言った。

「あの人、いい人だね」そう言った表情は少し寂しそうでもあり、悲しそうでもある。

「うん、そうだね。…いい人すぎるかも知れない。これからたぶん、大変なことが起こっていく。それを乗り越えていくには甘い。キャラメルマキアートぐらいにね…」

「それはよくわかんないけど」少女は苦笑するしかなかった。

「でも、嫌いじゃないけどね」


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