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破滅への潜入

大阪府中央区難波駅を出たところでは、昼休憩で昼食を食べに行くサラリーマンやOL、

遊びに来ていた若者などが集まっていた。テレビ局のカメラマンもいる。

すでに警察によって現場は立入禁止になっている。

加藤正義は、銀行の中から外の様子を見ていた。

「騒がしくなってるな」

この銀行はビルの中にあり、ATMが数台とカウンターが一つ、敷地も広くはない。

「こういう銀行があったんか、知らんかった」

頭をかきながら再度、銀行のカウンターに向かった。

カウンターにいる女性にもう一度聞いた。

「ほんとに返すって言ったんだね?」

「はい、すぐ返すから心配しないでって…」

加藤はため息をつきながら首を振った。

自分はここで働き始めて30年だが、ここまで意味がわからない事件はない。

犯人は、現金輸送車から店内に運ばれてきた金を奪い何もなかったかの如く帰って行ったらしい。

しかも、脅しもせず…。

「一億取って、すぐ返すか…どういうつもりなんや」



受け付けにて用件を言い、しばらく椅子に座っていた。

「坂本弘幸様、本城和也様」

名前が呼ばれ、椅子から立つと、

「ご案内します」

と二人いた受け付けの女性の内の一人が先に歩き始めた。

そこからエレベーターで15階につき、フロアに出ると、

少し広い空間になっており、正面奥にはソファーが二つあり、

男が一人座っている。置かれているテレビを見ている。

「こちらです」

女性に促され、右側の通路に歩き出す和也とひろ。

和也はソファーの男の後ろ姿を一目見てから視線を前にもどした。

通路を進んだ先に部屋があった。女性がノックすると、

「どうぞ」と中から男の声が聞こえた。

ひろがドアを開け、中に入る。それに和也も続いた。

部屋に入ると、スキンヘッドの男が部屋の奥にある椅子に腰掛けていたが、

こちらを見て二人を確認すると、笑みを浮かべた。

「すばらしいよ!君達の活躍ぶりはテレビで見たよ。現金輸送車から取ったんだって?」

男は立ち上がって部屋の中央に歩いてきた。テーブルを挟んで奥のソファーに座った。

そして、二人にも手で座るよう促していた。

ひろはすっと座り、和也も頷きながら座ったが、

一瞬、ゾッとするような寒気を首筋から背中にかけて感じた。

和也はすぐに部屋の中を見渡した。

すると、部屋に入って来てから今まで気付かなかったが、後ろに人の気配がする。

確かにいる。和也はひろをチラリと見たが、ひろは特に気にしているそぶりは見せてはいない。

ひろは、正面に座っている男に言った。

「これで組織に入らして頂けますか?」

男は笑みを浮かべながらひろを見た。

「もちろんだとも、もう君達は同志だよ!」

そう言うと握手を求めてきた。ひろはそれに応じた。その様子を鼓動を高鳴らせながら和也は見ていた。次いで和也にも手を差し出してきた男に、和也は胸の内の動揺とは打って変わった冷静さを装って応えた。

「これから何をしたらよろしいんですか?いや、それ以前にこの組織の計画を教えていただきたいんですが…」

ひろは真剣な顔で聞いた。男の眉毛がピクリと動いた。

「聞いてないのかい?」

「ええ、優秀な人材を探している組織があるとしか聞いていません。

「フッフッフッ」男は堪えられずといった様に笑った。そして、言ってのけた。

「革命だよ、坂本君」

「革命?ですか…」ひろは怪訝な顔をした。

「まあ、それはおいおい話していく。とりあえず、待機していてくれ。用件があれば連絡する」

「了解しました。連絡は深沢さんからですか?」

男は首を横に振った。

「いや、申し訳ないが私は少し忙しい身分でもあるものでね。連絡は、後ろにいる秘書の古賀がする」

ひろと和也は、ようやく後ろを振り向き先程からの気配を確かめた。

そこには女性が一人立っていた。二人と目を合わせると、会釈をして言った。

「古賀春香です。よろしくお願いします」

和也は、戸惑いを感じていた。この女性が先程の気配を出していたのかと。

「わかりました。連絡を待ちます。今日はこれで失礼します」

ひろが席を立った、和也がそれに続く。

「そうだ、お金はどうするんだい?」

深沢が興味深そうにた尋ねてきた。

「返します」

「貰えばいいのに、君達の戦利品だよ」

「なんというか、信念みたいなものです」

「そうか、確かに信念は大事だ。あっでも返す時に捕まらないでくれよ。大切な同志なんだから」

ひろは苦笑しながらドアへ向かう、和也も慌ててついていく。

「それでは、失礼します」

「ああ、ご苦労様」

二人は会釈し、ドアを開け、部屋から出た。

テレビを見ながらソファーに座っていた男は、まだいたが、気にせずエレベーターに乗り込んだ。

そこから二人は、ビルから出るまで一言も言葉をかわさなかった。

1階に着きビルから出た時、前方から二人の男女が歩いて来た。

男と少女?だろうか。すれ違い様に、和也に少女がぶつかった。

「あっ!ごめんね。大丈夫?」

心配そうに見つめる和也に少女は頷く。

「大丈夫」

そう言うと男とビルの中に入って行った。

ひろは、何か考え込んでいる

「今の男…どこかで見たことがあるような…思いだせん。ただ、相当な奴なことは確かやけどな」

「ですね」

和也は同意した。

「今日は、とりあえず成功したんですよね?」

「まあ、そうやな」

それを聞いた和也は満面の笑みを浮かた。

「じゃあ、お腹空いたんで韓国料理でも行きましょうか?」

「またかよ…、まあいいけどな。その前に報告しとかないとな」

二人は、駅に向かって歩き出した。

ビルのエレベーターの中には男と少女がいた。

「さっきの人達、私達と同じ用事だったゆたい」

少女が男に言った。

「そう。なら、またどこかで会うことになるだろうね」

男がそう言い終えた時、エレベーターは15階で停まった。


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