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悪役令息の継母に転生しましたが、息子が可愛くて仕方ありません!……の裏事情

作者: あやとり
掲載日:2026/03/15

とても短いのでサクッと読めると思います。よろしくお願いします。

 

 私、マリー・ハオハヤ・オレツエーは【転生者】である。

 オレツエー辺境伯という人物の後妻になり、結婚式を終えた直後に、前世の記憶を取り戻した。そして、いま生きている世界の正体を知ったのだ。


「わわわっ、私っ、ファンタジー小説の世界に転生しちゃったーーっ!?」



 そう――この世界は、私が前世でハマっていたハイファンタジー小説の舞台だったのだ!



 現在の時間軸は、本編が開始する十数年前。

 そして、マリーの立ち位置は……【悪役令息】の継母だった。


「悪役令息の名前は、ナロード・ホンメイ・オレツエー。――圧倒的な美貌と魔力を持ち、悪事を働いて主人公たちを苦しめるも、最後は敗れて死ぬ……」


 ――ナロードは他者を容赦なく傷つける悪者だが、同時に、とても気の毒な青年だった。


 生まれた直後に母を亡くし、父は多忙のため触れ合う機会がほとんどなく……ナロードが三歳の時にやってきた父の後妻には虐められて、愛情を知らない人間に育ってしまった。

 彼が、他者を思いやることのできない悪人に――最期まで救われない悪役になってしまった原因は、その悲惨な成育環境だったのだ。


 私は、そんな彼が可哀想で、愛おしくて……私にとって、彼は一番の推しキャラだった。


 そんな、そんな推しが、



「はじめまちて、これから、よろちくおねがいしまちゅ。――おかあたま?」



「ぎゃんわいいいいいいいーーーーっ!!?」


 御年三歳の推しが! コテン、と可愛らしく首を傾げて!

 初対面の、わ、私に笑いかけている! 天国かここは!?


 こんな天使みたいな外見のショタを虐待するなんて、私にはできません!

 ――小説のストーリーなんてガン無視して、この子を愛し抜きますっ!!


 私は固く決意し――その日から、素晴らしい生活が幕を開けたのだった。


 ・

 ・

 ・


「おかあさま、おかあさま!」

「はあーい♪ どうしたのー、ナロちゃん♪」


 はい! 私の推し(幼年期)は今日も可愛い!

 幼い顔に愛くるしい笑みを浮かべて、小さなあんよをトテトテと動かして、私に駆け寄ってくる。楽園かここは?


「きょうも、ギューッてしてー?」

「ふぁぁ……! よ、喜んでぇ!」


 ナロードちゃんは継母わたしに抱き締められるのが好きだ。いつも、こうやってハグを求めてくる。可愛い!

 ちっちゃな頭を私の胸にうずめたナロードちゃんの、幼児特有のさらふわヘアーを堪能するのが、私の日課であり生き甲斐だ。


 このスキンシップの時間に限らず、お風呂の時も寝る時も、私はナロードちゃんと一緒にいられる。こんな美ショタを独占できるなんて、私はなんて幸せ者だろう。

 ナロードちゃんの父親で、私の夫でもある人物――将来のナロードちゃんにそっくりなイケメンだ――も、継子を可愛がる私に好意を寄せてくれているのが分かる。

 ……美ショタとイケメンのどちらからもモテモテなんて、なんて素敵な人生だろう……!


 私は幸福を噛み締めながら、すっかり甘えん坊になった息子を抱き締め続けるのだった。



 ああ、異世界転生って最高だわ!! 間違いなく!









 ・

 ・

 ・


 俺、ナロード・ホンメイ・オレツエーは【転生者】である。


 21世紀の日本人の記憶を持ち越してしまった転生先は、なんちゃって近世欧州『風』の、魔法が存在する世界だった。

 俺は裕福な辺境伯の一人息子で、生まれつき膨大な魔力を持ち、将来はさぞイケメンに育つだろうことも確定しており、おまけに三歳になった頃には美人な継母までやって来た。

 理想郷かここは? もしかして俺、前世でめちゃくちゃ徳積んでた? ただの中年男性おっさんだったはずなんだけど。


 というわけで俺は現在、俺を際限なく甘やかす人妻とのイチャラブ生活を満喫している。

 本日も『おかあさま』のおっぱいに顔をうずめて、極上の柔らかさと温もりを堪能中だ。くんかくんか。あー若い女の匂い最高!


 ただ、たまに思うのだ。いくら前世の感覚を引きずってたって……仮にも『現世の家族』にそんな欲望を抱くなんて、罪悪感を覚えるべきだろう、と。

 そして、その度に思うのだ。目の前の女に、罪悪感なんざ覚えられるわけねーだろ、と。


 だってこの継母おんな、俺の容姿が良いのと俺が反抗的でないのを良いことに……義息子おれのことを、ぬいぐるみやペットみたいに扱ってやがる。

 俺のあらゆる行為を肯定する、前世で言うところの「優しい虐待」をしているのも――「血の繋がらない子供も愛して、ついつい甘やかしちゃう優しい私」に酔いしれているからだと俺は踏んでいる。


 加えて、俺に対するこいつの態度は、人形ぬいぐるみ扱いとも言い難い時がある。

 ……なんつーか……オタクが、推しのキャラクターを偏愛しているような感じがするんだ。

 どちらにせよ、実在している人間に対する愛し方じゃない。


 そんな相手ヤツだから、俺だって、密かに欲求の対象にしたって負い目を感じない。

 感じることができないのだ。もう、それで良いのだと諦めている。


 俺は自嘲を噛み殺しながら、今日も、クソだけど美人な継母に抱き締められるのだった。



 あ〜、異世界転生ってのは最高だぜ!! 多分な。





【おしまい】

「悪役令嬢/令息の継母になりました」系の作品で、継母が継子の外見の良さばかり言及していたり、継子が不自然なほど良い子であることに違和感を覚えたので、この話を作ってみました。

身勝手な転生者には身勝手な転生者をぶつけりゃいいんだよ! というお話でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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