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玉(ぎょく)

全ての生き物が等しく持つエネルギー「ぎょく」を駆使して生きる人々。

「玉」のスペシャリスト「演算士」によって繰り広げられる戦いに憧れ、巻き込まれながら成長していく1人の青年の物語。

この世界には「玉」と呼ばれる単純なエネルギーを全ての生き物が持っている。その「玉」をエネルギーとして体外に放出するためには「変数値」と呼ばれるフィルターのようものを通してエネルギーを増減させる。




「よーし1列に並べ」と60手前の学年主任の教師が生徒たちに言う。


高校1年生になると変数値を測定することが義務となる。この日を境に演算士としてスカウトされる生徒も少なくない。そのため、胸が高鳴る生徒で溢れている。変数値は「玉」に足したり掛けたりしてエネルギーを増幅させる。平均5程度で8を超えると必ずと言っていいほどスカウトされるらしい。


測定用の機械は都道府県庁に1つずつ設置されているため、ほぼ社会科見学である。



「ヤッター俺7だって!!演算士になるのも夢じゃないぜ」


列の前の方で測定が終わったらしい生徒の喜びの声が聞こえる。あいつ誰だっけ?先週入学式だったからまだ顔と名前が一致しないやつが多い。



「ああ〜緊張してきた」俺の小学校からの親友であるユッケが呟いた。


「そーかー?てか昨日の第7隊の訓練見た?テレビでやってたやつ。やっぱ隊長の火力エグかったなぁ」ごめんホントは俺もキンチョーしてる。


「うん。見たよ。やっぱあんなの見せられると演算士に憧れちゃうよね」


「石神隊長カッコ良かったなー

あんな若いのに隊長になるなんてさー」



雑談をしていると俺達の番が来た。

「やっぱり緊張する〜」と呟きながらユッケが測定室に入って行った。







「まあ期待してなかったけど」と言いたげな顔をし、右手で「4」を示しながら測定室から出てきたユッケに「ドンマイ!気にするな」と顔に書きながら笑いかける。


やっと俺の番がきた。測定室に入ると近未来チックな2メートルほどの高さがある大きな機械が仁王立ちしていた。手を置いてくださいと一目で分かるような手形に手をあわせ、測定されるのを待つ。






絶望した。俺0だったよーアハ、アハどうしよ。0とか聞いたことないんだけど。。。


体操座りをしながら俯いてるユッケのところに行く。


「どうだった?」


俺は握り拳をユッケに見せた。ポカンとしているユッケに「0だった」と言い、ため息をつく。


「……ま、まあ演算士とは関係ない仕事なんていくらでもあるしね…」


やめろユッケ親友に気遣われるのが1番今の俺に効く...


「でもさー世の中の連中は何かと変数値気にするよなー.....関係ない状況でも」


「ま、まあそうだけど、そういうの気にしなければいいじゃん」


「そりゃそーだけどさー0だぜ、ゼロォ」




そうやって傷を舐め合っていると

「1年2組如月悠聖さん至急応接室まで来てください」という放送が入った。



あれ?俺じゃない?カッコいい名前で良かった。取り柄が0じゃなくて。でもなんで?あぁやっぱり測定ミスね。いや、変数値が低すぎて入学早々退学とかもありえる。なんだ??なんだ??


「測定ミスじゃない?」


「や、やっぱりユッケもそー思うよな!」


多分引き攣ってる笑顔をユッケに見せながら不安と期待を胸に呼ばれた部屋へ行く。


応接室ってなんだよ。とゆーかそっちが来いよ。



イライラしながら応接室まで行き、雑にドアを開ける。するとビックリ。昨日テレビで見た第7隊の3人が応接室にいる。The好青年の石神隊長と若い生意気そうな女、それとスマホを横向きにしてニヤニヤしてる男。多分音ゲーやってるんだろう。それくらい激しくスマホを触っている。音無しで音ゲーやってんだあの人。




第7隊全員来るっておかしくない?とゆーか石神隊長以外しょうがなく来たみたいな雰囲気出してるんですけど。


「ナ、ナンデショウ」


「別に緊張しなくていいよ。リラック〜ス」


「まあ、単刀直入に言うか。第7隊隊長石神努として君にお願いがある。基本術式をマスターするまで鍛錬を積んでほしい。」


「い、いやいや、基本術式をマスターできるのなんてほんの僅かだし、それに僕の変数値0でしたよ。意味ないんじゃないかなと思うんですけど。」


「はあ?お前変数値0なの?石神さんなんでこんなやつのために私たちまで付き合わなきゃいけないんですか。無駄ですよ。というかもう結構な不利益が発生してますよ。」

と女隊員が早口で言う。



あぁ、やっぱり無理矢理連れて来たのか。


「ごめんね〜。こいつ誰に対してもズバズバ言っちゃうから気にしないで。まあ、伝えたいことは伝えたから。次の任務に行くね。あーあと基本術式をマスターするためには毎日体内の玉が無くなるまでエネルギーを放出することが1番確実だから頑張れ!結構辛いけど。それじゃ!」

ニカっと笑いながら応接室から出ていく第7隊の3人。相変わらず女隊員は文句言ってるし、音ゲー隊員は音ゲーしてる。


「なんだったんだ?マジで…」


全速力で事務員が走って来た。

「もう行っちゃった?はぁはぁ。あーサイン貰いたかった〜せっかく買いに行ったのに〜」


まだビニールに入った色紙を抱えている。

百均のレシートを握りしめながら。

え?うわこの人色紙買いに行ってたんだ。。。

演算士は「ぎょく」を使った仕事をしている人です。難易度は高いですが、それなりの収入があります。

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