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「そんときの笑顔もそーだったけどさー、たまに私、天馬の笑ってる顔がこえーんだ。何考えてるかわかんねっつーかさ。」
「そうか?おいらは分かりやすいと思ってるぞ。どっちかっつーと、神塚昴の方がわかりづれぇ。」
「えっ!マジ?」
意外すぎてつい声を大きくしてしまった。
ダッちゃんではないクマとお喋りしている1人の女性を周りはチラチラと盗み見ている。
「ま、まぁ…確かにね。私も神塚のこと心底わかりづれぇって思う。でも天馬はさ、なーんかそれ以上なんだよね。」
冷静沈着なあのオーラとか、すごく優男だけどどこか凄みがある態度とか。
しかもそれは、里桜を連れてきてから尚更濃くなった。
以前は神塚と勝手なことばかりして明らかに問題児で、私もクズって呼んでいた。
でも、いつしかふざけることも減って、真剣な顔してる時の方が増えて。
神塚や自分と喧嘩することも減った。
「瞳、お前は分かりやすいぞ。それに、良い奴だと思う。」
ホクロもチャーミングだし。
とクマが付け加えた。
「ははっ、そりゃどーも。
あんたのお陰でホクロがコンプレックスじゃなくなったわ」
はっはっはと笑ってみせる。
クマと飲むのも案外悪くない。
どころか、すげーいいなと思えてきてしまった。
でもさ、たまにあんたも不気味に思うことがあるよ。
と心の中で言う。
「私もあんたは良い奴だと思うよクマ。いつも誰に対しても客観的に見ててね。でも1つわかんないのはさ、あんたは誰の味方なのよ」
新しい酒が運ばれてきた。
それを何食わぬ顔で飲みながらクマはつぶやくように言う。
「おいらは誰の味方でもねーよ。ただ里桜のことを大切に思ってるってだけだ。おいらの一部分を。」
もぐもぐ口を動かしっぱなしのクマを横目で見る。
言ってることいつもよくわかんないけど、やっぱこいつって可愛いなと思う。
周りが持ち歩いてるあの変なダッちゃんだかってやつよりも。
「……あっそう。」
とりあえず一言そう言う。
なんだか少しだけ頭がクラクラしてきた。今日は酔いが回り出すのが早いなと思った。
で、あいつらは楽しんでいるだろうか?
妙な関係性のあの3人は。
以前は神塚と魔術使って喧嘩をし合っていたってのに。
あれはマジで凄まじかった。
今思うと鳥肌モノだ。
でも今は、そんな天馬はどこにもいない。
だから私はますますあいつのことがわからなくなった。
そんな天馬のことを、神塚よりも分かりやすい奴だとクマは言う。




