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「…その頃1度、合コンに連れてったことがあったわ」


「ごーこんってなんだ?」


「ふははっ、それはあの時の里桜と同じセリフだね」




思えばあれも、こんな風に暑い夏の日だった。


よく分かっていない顔をしている里桜を、他校の友達に誘われた合コンに連れていった。


服装や化粧をそれらしくして大学生とか偽って、酒を飲みまくった。


男性陣は皆お金持ちそうな20代後半くらいで愛想が良くて盛り上がった。


しかし里桜だけはめちゃくちゃ控えめで、会話もたどたどしくて、そんな姿が逆に男たちを煽いだのか、かなり話しかけられていた。



里桜がお酒の飲み方すら知らないことに、完全に私は失念していた。

いつの間にか、かなりの量を飲んでしまっていたらしく、潰れてしまって…


それに気が付かないほど私は飲んでしまっていて…



で、里桜の姿がないことに気が付いて一気に正気に戻ったんだった。


皆に聞いたら、一人の男に連れられて行ったと…。


超焦りまくって、店を出て何度も里桜に電話を掛けたけど繋がらなくてまた焦って…



そしたらなぜか、神塚から電話が来た。


"おい瞳!お前今どこいんの?"


「どこって……どこだここ…」


"何してるわけ?とりあえず△△駅に来いよ!南口!"


「いや、里桜を探してんだよ!いなくなっちゃっ」


"里桜はここにいるよ!いーからはよ来い!"



プツッと切れて、急いでそこへ行くと…



なぜかそこには天馬に抱えられている里桜と、めちゃめちゃ不機嫌そうな神塚がいた。


「っえ!どーゆーこと?なんでっ」


「合コンに連れてってたんだろ?飲み会の最中に里桜がひたすら傑にLINEしてたんだよ。こーゆー場合ってどうしたらいいですか?ってな」


何かある度に天馬にすぐに相談や質問をする里桜だから、それには納得した。


しかし…


「どこでなにしてたの?里桜は…」


「スーツの男にタクシーで連れ去られる寸前だったんだぞ。お前が目ぇ離すからだろ」


「…あー…ごめん…ほんと。」



さっきからずっと黙ったままの天馬は腕の中の里桜をひたすら心配そうに覗き込んでいる。

彼女は火照った顔をしてぐったりしている。



「反省してます…。で、どうやって連れ帰した?」


その問に、神塚がニヤリと白い歯を見せた。


「そりゃもう強引に、乱暴に、狡猾に。」


「っえ?!うそ?!」


「はは、うそうそ。でも半分ホント。

ここにいる翔おにーさんがね。」


そう言って神塚は親指で天馬を指した。



その後の神塚からの説明には目を見開いた。


いつも通り深夜徘徊していた神塚と天馬は、里桜からのLINEを受け取ってから、聞いた店の近辺で待機していたらしい。


すると、ヘロヘロに酔っ払った里桜に肩を貸しながら出てきたスーツの男がタクシーを呼び止めたのが目に入り…


瞬時に神塚と天馬が駆け寄って、乱雑に男を引っ張り、そして男の胸倉を掴んだのは天馬だったらしい。



いつもの笑みで微笑みながら、


"この子は私のものなんですよ。

お兄さん、殺されたいのかな?"


と一言言って勢いよく押し飛ばし、そのタクシーに里桜と3人で乗り込んでここまで来たということだった。


神塚が言うには、その時の天馬の笑みが人を殺めそうなほどのオーラを醸し出していて、超絶怖かった。との事。


天馬が誰かに乱暴な真似をすることが予想外すぎて驚きだった。



「し、しばらくは禁酒します…」


「あぁ、そうしろよ。それと里桜を合コンに連れてくのも禁止だ。2度目はないと思ってくれよ、瞳。」


そう返した天馬の笑みも怖すぎて萎縮したのを覚えている。


そしてその時初めて知ったんだ。

里桜に対する天馬の気持ちを。

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