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「きゃはははは!!クマやばーい!雪だるまにしか見えなくなってるよ〜」
泡まみれのクマにザブンとお湯をかけ、ブルブルブルっと毛並みを振って逆立てるクマのせいで盛大に飛沫がかかる。
それに顔を背けながらも、里桜と翔は湯の中にクマを引き込んだ。
笑い声ばかりが浴槽に鳴り響く。
こんなに楽しい入浴は初めてだ。
長い髪を下ろしてそれを手でかきあげる翔が非常に色っぽくて、ついついチラチラと見てしまう。
モコモコの泡で埋め尽くされているおかげで、互いの裸が全て見えないことが、情欲を抑えるなによりの救い。
しかし当然、ドキドキする鼓動は収まらない。
風呂に浸かりながらも、ガラスウォールのおかげで見える外は絶景で、なんとも贅沢な入浴だと思った。
「ふはぁ〜キレーだなー…」
そう言って窓の外を見る里桜の体を翔が後ろから包み込んでこめかみに口を寄せる。
翔の熱く甘い吐息が耳にかかってヒクッと身を震わせながらクマを抱き締めた。
「それにしても…隣の2人は何をしているかな…」
やはり気になってしまってついそう呟いてしまった。
「おいらに見に行ってこいとか言うなよ?」
「言わないけどさー」
クマはなんだかんだ言って気持ちよさそうに足を泳がせている。
それがなんとも愛らしくて笑ってしまった。
「それより里桜疲れてるだろ?
今日は早く寝よう。明日もあるんだし」
「んー眠れるかなー?なんだか明日のこと考えると興奮しちゃって!」
すると翔はそっと耳に口付けをしながら囁いた。
「じゃあ私が手伝った方がいいか?強制的に寝かせてあげるよ…」
「っ……!」
声を発する間もなく頭を振り向かされ、口を塞がれる。
危うく抱えているクマを落としそうになってしまった。
「んっ…あっ…ちょっ…ちょと…」
唇が離れたかと思えば何度も啄むようなキスをされ、いつの間にかクマはするりと腕の中から抜け出てしまった。
ピチピチとクマが泳ぐ音が聞こえる。
「っ……あ…」
翔の手がするすると首を這い、脇腹を這い、太ももを撫で上げたかと思えばまた戻ってきて乳房を優しく揉みしだいてきた。
「ん…は…すぐ…る……」
「っは…… 里桜…ふっ
またそんな顔して…私を強請るのがうまいよな…」
色欲を纏った熱い視線が交わる。
「翔のっ…せいでしょ…」
もう…と言いながら赤らめた顔を隠すようにして翔の首に巻き付く。
口角を上げ、熱のある瞳でジィっと見つめられ、さすがに目を合わせていられなくなり視線を逸らすと、
窓の縁にちょこんと座って夜景を眺めているクマがいた。
その小さな背が、
おいらのことは気にせずご自由にどうぞ。
と言っているように見える。
ぐいっと顎を掴まれて、翔に顔を合わされる。
熱い視線で射抜かれて、眉をひそめてしまった。
「ふっ…ごめん。なんにもしないよ。
疲れてるだろ」
「じゃーこれはどうするの…?」
「な……参ったな…だんだん積極的になってくるのはなんなんだろな…」
苦笑いする翔の唇を奪ったあと、里桜は火照った顔で眉を下げて笑った。
「翔が…そうさせたんじゃん。私のことを。」
「……そうかもね。でも君は…
…純粋無垢なままのはず…だろ…
私しか知らないんだから……」
「っあぁ!…っー!」
クマは、ガラス窓に映るそんな2人を見ながら呟く。
「はぁー。夜景の邪魔だな。向こうで見てこよっと。」




