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9

それは下へと落ちていき、トンビのようにザザザザ〜と人間たちの上を通り抜け、全ての魔物を消して行った。


人間たちはただ大きな風が突然吹き抜けたとしか感じていないので、皆声を上げてキャラクターの帽子や耳を抑えたり、立ち止まって突風に耐えたりしていた。


「ふぅー。これでよし。」


魔物は里桜の中へと戻って行った。

それを翔は苦い顔で見つめる。


「… 里桜、君は今何体の魔物を使えるんだい?」


「んー、確か今は5、6体…かなぁ」


「っ。もうそんなに…」


「そんなにって、翔なんて何百体も持ってるくせに〜

いつか追い越してやるからね!あ…さすがに無理か、何百体じゃ。はははっ」


満面の笑みで笑う里桜を引き寄せて抱き締める。


こんなに細くて小さい体で…

そう思いながら彼女の背中を優しくさする。


「…どうしたの……」


「…いや… 里桜と共通点を増やせるのは嬉しいけどさ…あまり無理しないでくれ。あれは不味すぎるだろ」


すると里桜はくくくっと肩を震わせてギュッと翔を抱き締め返した。


「確かにあれはなかなか慣れないものだけど…でも翔が今まで感じてきた辛さだと思うと、全然辛くないよ。むしろ愛おしく感じるの。

それにさ、1人より2人で共有したほうが辛さは半減するでしょ。だから翔はもう1人で背負うような感情を持たなくていい。私にも分けてよ」


そう言って今度は里桜が翔の背中を撫でた。

どこまでも優しく、逞しいその大きな背中を。



翔は見開いていた目をギュッと瞑り、奥歯を噛み締める。


「… 里桜……っ…」


耳元にかろうじて届くくらいの、掠れて震えた声。

小さく泣き叫ぶような声にも聞こえた。


僅かに翔の体も震えているように感じて、里桜は更に強く抱きしめ返した。



「私ホントに嬉しいんだよ?翔と同じものを感じて、味わって、見て、聞いて、触って、…全部全部、翔と同じがいい。これから先、どこへ行こうと…必死で追いかけて行きたい…」


そう耳元で囁くと、翔の腕の力がみるみる強まって行った。


「…うっ……翔?…くるしっ…て」


「・・・」


「・・・」


「… 里桜…君が一生幸せな人生を送れるように…それだけを考えるようにする…」


「…すっ…」


「それだけを……誓うよ…」


「…っ……」


耳に届いたのは、弱々しくも強い声。

大好きな人から聞こえる鼓動は早くて、伝わる体温はとても熱い。



「おい、翔よ。里桜が窒息死するぞ」


クマの冷淡な声に、翔はハッと気がついたように瞬時に体を解放した。


「ごめん…つい。」


里桜が顔を上げると、

そこにあったのは、目を無くして優しく微笑むいつも通りの大好きな顔だった。


「大好きだよ翔…はははっ」


「うん、私もだよ…ふ…」


なんとなく照れくさくてお互い笑い合う。



「ふんっ、イチャつきやがって…」


そう言い捨てて伸びをするクマを翔が抱えた。


「さぁ、お風呂もう溜まっただろ、入ろうか。

クマ助、君も入った方がいい。今日はだいぶ汚れただろ」


「そうだねクマも一緒に入ろう!」


確かにいろんなものを食べ漁ったり、乗り物に乗りまくっていたクマは確実に汚れているだろう。


「えー…おいらもー?水遊びはあまり得意じゃないんだが…」


「何言ってんの?水遊びじゃなくてお風呂だよ」


「・・・」


2人は顰めっ面のクマを抱えて浴槽へと足を運んだ。

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