4
時に絶叫したり、時にびしょ濡れになったり、時に恐怖したり…
食事も建物もなにもかもが可愛くて写メをたくさん撮った。
夜になると、さすがに脚が疲れてきてしまって、歩きやすい靴で来たのにそれに気がついてくれる翔がさすがだった。
「大丈夫か?おんぶする?」
冗談なのか本気なのか分からない顔をしてそんなことを言われる。
「ふははっ、さすがにここでそんなことは…
てか大丈夫だよ、まだいける」
「休憩しよう、昴」
「あ?」
前を行く昴に声をかけた翔。
しかし昴は振り返って苦笑い気味の里桜を見てこう言った。
「おーけーおーけ。んじゃさー休憩できる乗り物に乗ればよくね?あれなんかどうだ?よし、あれだ。」
そうして勝手に決めてしまったのはスモールワールドという船のアトラクション。
「全く……ホントに大丈夫か?里桜」
「うん真面目に大丈夫だよ!」
そう笑顔を作ってみせると、昴の隣にいたはずの瞳がいつの間にか自分たちの前にいた。
「ちょっと天馬ぁ、私の心配もしてくんないー?」
「…瞳は余裕そうだからな」
「チッ、バレた?ほら行くよ里桜」
そう言って手を引かれ、もう片手は翔に引かれる。
この状況がなんだか子供になった気分で照れくさくて、けれど嬉しくて、何も言えなくなってしまった。
スモールワールドは昴の言う通り、本当にただ船に乗っているだけなので脚を休ませることができた。
けれど、目だけは休まらない。
そこかしこに可愛い人形が歌を歌っていて、装飾も綺麗でまさに夢の空間のなにもかもに目を輝かせた。
「おいクマ野郎、お前もあそこへ行って踊ってこいよ。案外違和感ねーよ?誰にも気づかれねーかもハハハ」
「あ?無理。おいらも疲れてる」
「お前が疲れてるわけねーだろ!ずっと誰かしらに抱えられてたんだから。つーか突っかかってこないお前ってなんかキモー。おえ。」
クマは数時間前からずっと昴に抱えられている。
なんだかんだ言って、仲がいい兄弟にしか見えない。
「なんかさ…こんなに可愛い別世界にいると、私たちが呪術師だってこと忘れちゃうね…」
さっきから翔と繋いでいる手に力が入る。
「忘れなよ、今だけでも。それとも、ずーっと忘れていたい?」
耳もとで囁くその言葉はとても柔らかい。
里桜はフッと笑って翔の耳もとに囁き返した。
「翔と一緒だったらずーっと忘れてたい。でも翔が元の世界に戻るんなら私も戻る。」
翔は目を無くして笑った。
「くく…私についてきた先があの世だったらどうするんだ?」
「そんな世界でも翔がいるならおーけー」
「…天国じゃなくて、地獄でも?」
「うん!」
即答する里桜に目を見開く。
「おい里桜見ろ!あそこにアラジンとジャスミンが!」
昴の突然の声に里桜の視線が逸れる。
「えっ!どこ……あぁ〜ほんとだぁ〜」
「姫様系けっこー隠れてるらしーよ」
「え〜まじ〜?探そ!探そ!あ!アリエル〜!」
子供みたいにはしゃぐ里桜の手の甲にキスをする。
それにも全く気づいていないほど目を輝かせている彼女のことが、世界で1番美しいと思った。




