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翔の父親も、とっても優しい人だった。
あまり翔はお父さんには似ていないんだなと思った。
きっと顔はお母さん似なのだろう。
一緒に食卓を囲んでいても、天馬一家が皆いい人すぎて緊張感は自然と和らいでいた。
「…にしても翔…いつまでそんな不良みたいな髪型をしているんだ?少しは里桜さんを見習って」
「お父さん、髪型の注意はもう私が昼間したよ」
「…そうか。そういえば神塚くんは元気かー?」
「その話はもう私が聞きました。」
「私も聞いたよお父さん」
「なんだよ、少しは私にも喋らせてくれよっ」
里桜は一家のやり取りに笑いがこらえきれなかった。
そしてお父さんの一人称も"私"なのだと気がつく。
翔の一人称や性格は父親譲りなのかもしれない。
「ところで、父さん、最近肩が痛いだろ。もしくは頭。」
突然そう切り出した翔に、里桜はドキリとなる。
翔パパに会った時から気がついていたが、小さな魔物がずっと取り憑いていて離れない。
翔が何も言わず何もしないので、里桜も黙っていたのだ。
「…あぁ、そうなんだよ。ただの疲れかなーと思ってたんだが、やっぱ何か憑いてるかー?」
苦笑い気味で肩をさする翔パパを、
ママと妹は気味悪そうに顔を顰めている。
やはり皆には見えていないようだ。
すると横からクマがどこか楽しそうに声を発した。
「おう、憑いてる憑いてる!おいらが祓おうか?」
「じゃあ頼むよクマ助。」
翔の声とほぼ同時にクマの目から閃光が放たれ、それは一気に祓われた。
クマの閃光ももちろん非魔術師には見えない。
翔がこそこそと里桜に耳打ちした。
「父さんは役員とかやってて結構魔物が憑きやすい環境にいるんだ」
「そ、そうなんだ……」
「おー本当に軽くなった!ありがとうクマくん!
よく神塚くんに祓ってもらっていたんだがね、彼と最近会ってないからな…」
そうだったんだ…
昴はただここに遊びに来ているだけではなかった。
そう思ったら、なんだか五昴のことが頼もしくなって里桜の表情が自然と緩んだ。
「にしてもクマくん、君は神塚くんにとてもよく似ているね」
きっと、口調や性格や遠慮のない態度のことを言っているのだろう。
クマはやはり眉を釣りあげた。
「あんな低レベルのクソ野郎と同類にすんなやっ!」
「お父さん、あまりクマちゃんを怒らせないでよ。私たちの絵を描いて貰うんだから」
「…ん?なに、絵?」
「うん!ちょーー上手いんだから!」
棗は心底楽しみだというように紙と色鉛筆を用意してクマに渡した。
前にクマが描いてくれた翔と里桜の絵は、翔の部屋に額縁に入れて飾ってある。
今日、描く絵は、この家に飾られるんだろうか?
クマにこんなコピー能力の才能と特技があって良かったと心底思った。
翔パパもママも、しきりに学校のことを聞いてきたのだが、翔は口数少なすぎてほとんど里桜が喋っていた。
そのおかげで、両親とは1日でとても仲良くなれた気がする。
完成した絵は、両親と棗が寄り添う朗らかな笑みがなんとも幸せそうに描かれていた。




