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結局夕方までずっと棗の部屋でお喋りをたくさんしたり、クマも交えてゲームをしたりしていた。
ずっと放置している翔のことが気になり、しばらくしてからクマを残して部屋を出る。
翔の部屋に行くと、彼は本当にベッドで眠っていた。
まさか昼からずっと寝ていたんだろうか?
「おーい、翔〜。そろそろ起きなよ〜
そんなに寝てたら夜眠れなくなるよー?」
上から覗き込んで声をかけるが、起きてくれない。
「…ねぇってば!多分そろそろお父さんも帰ってくるんじゃない?」
ガシガシ揺すると、ようやく虚ろな目が開いた。
「…んー… 里桜…ここへ来て…」
「え?ダメだよもう起きてよ」
「…少しだけ」
そう掠れた小さな声で言って薄手の夏用布団をめくってきたのでため息を吐きながらもおずおずと布団の中へ入る。
ギュッと翔の腕に包まれて胸に顔を埋める。
ずっとベッドの上にいたのだろう、翔の体温でかなり暖かい。
里桜は思い切って、棗とした先程の会話を話した。
すると翔は、あ〜…と短く声を出してから寝起きのかすれ声で話し出した。
「あいつは自分の力を掌握できないから仕方ないんだよ。人殺しになってほしくはないしね…だからあえてキツく言ってある。」
「うん、でも…いくらコントロールできないんだとしても…なんだか少し可哀想だなって…」
そう小さく洩らすと、翔は里桜の頭を撫でながらゆっくりとした口調で言った。
「魔物は非魔術師から生まれる。無為な争いをすれば魔物を増やすことになる。だから力を持った者が、時に耐え忍ばなくてはならないのさ。
でもさ…皮肉だよな……」
「…ん?」
ギュッと腕の力が強くなる。
鼓動の音が優しく耳に響く。
「時々私は考えるんだよ。非魔術師から生まれた呪いを、私たちが命懸けで祓って非魔術師を守る。
…このジレンマはいつ解決するんだろうとね…」
「・・・」
確かにそうだと思った。
非魔術師を助けているのにいつも非魔術師から攻められている…
簡潔に言えば自分たちがいるのはそんなふうな世界だ。
非魔術師のために命を張っているというのに、確かにこれは皮肉な状況。
そしてこれは非魔術師が、つまり普通の人類がいる限りは終わることは無い。
だけど・・・
「仕方がないよね。特別なものを持ってる私たちの生き方は弱者を助けることだから…」
里桜はそう言ったが、翔は少しの間を置いてから呟いた。
「本当にそれが正しいのかな…」
「…え?」
「それだといつまでも…何も変わらないだろう。」
確かに根本的な解決には繋がっていないかもしれない。
原因の部分にも重きが置かれていないかもしれない。
「うん…でも…」
それ以外にどうすることもできないじゃないか…
そう思って口を開きかけた瞬間、翔によって塞がれた。
開いていた口の隙間にすぐさま舌が入り込む。
「んん……ふ……っ…」
いつの間にか翔が覆いかぶさっていて、暖かい舌が口内で絡まり合い、深く貪るようなキスを何度も交わしていた。
互いの息遣いが荒くなってきたところで部屋に近づく足音が聞こえる。
トントン
「2人とも〜いるよね〜?夕飯だって〜」
棗の声と、クマがボソボソ何かを言う声が聞こえた。
翔が唇を離して適当に返事をし、里桜の口元の唾液をペロリと舐めとった。
「…続きはまた後でね」
里桜は火照る顔を隠すように布団から這い出た。




