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6

午後は棗に誘われて、棗の部屋で過ごすことになった。


翔は部屋で昼寝をしたいらしくて部屋にこもってしまった。



棗の部屋は、好きなバンドのポスターや、アニメのポスターが貼ってあったり、ファッション雑誌や漫画が律儀に本棚に並べられていたり、普通の中学生らしい部屋だ。



「ねぇねぇ、棗ちゃんって、好きな人とか彼氏とかはいるの?」


思い切ってどうしても聞いてみたかった質問をしてみた。

普通の中学生と話せる機会なんてないからというのもあるし、可愛いからきっとモテるだろうなぁと思ったというのもある。



すると棗は照れくさそうに笑った。


「好きな人は…いるけど…」


「そうなんだ!棗ちゃんは美人だから、猛烈アタックしちゃえばいいのに〜」


「ふふっ… 里桜ちゃんはお兄ちゃんに猛烈アタックしたの?それともお兄ちゃんの方から猛烈アタックしたの?」


「えっ……」


ドキッと鼓動が大きく跳ねる。

なんとなくクマに視線を移すと、机の上でまた何かを書いているようでこちらを見ていない。


「私から…かな。わりと積極的だったかもしれないな。」


そう言って笑うと棗はいたずらっぽい笑みを浮かべた。


「今までのお兄ちゃんはね、実は彼女はみんな非術師だったんだよ?知ってた?」


「あ、そうなんだ…知らなかったよ」


「でね、どの子にも魔術師ってこと隠してたから、うまくいかなかったっぽいよ。当たり前だよね〜」


その言葉にはなんとも言えなくなって口ごもった。

やっぱり理解や価値観の違い、他にもいろいろと問題があったのかもしれない。


「でも今回初めて同じ魔術師の彼女を連れてきてくれた。だから安心したよ。あんなお兄ちゃんだけど、よろしくね里桜ちゃん!」


「うん、もちろん」


なんて大人びた子だろう。

こんなしっかりしてるのに、まだ中1…

この子の恋が上手くいってくれたらいいな。

それに、翔のいうように、普通の幸せな人生を送ってほしい。


「あれ?棗ちゃん、ここどうしたの?」


よく見ると、棗の肘にアザがついている。

蚯蚓脹れみたいにも見えた。


「あーこれねー、男子にやられたんだ〜」


「えぇ?!」


「ほら、私強いからさ。喧嘩になっても絶対に手を出すなってお兄ちゃんに言われてるの。」


里桜は顔を歪めた。

しかし、棗は何食わぬ顔で話を続ける。


「私さ〜性格男っぽいからさぁ〜よく喧嘩になるんだよね。弱いものいじめしてたりすると、許せなくて」


「でも、手を出さないってなると、どうするの?」


「なんとか口喧嘩だけで頑張る!でも向こうから手を出してきたら、避けまくって、逃げて、終わり!

手出したらきっと殺しちゃうからさ〜」


ニッと白い歯を出す棗は、肘をわざと見せながらガッツポーズをした。

けれど里桜は眉をひそめたままその痣を見る。



「とにかく私はお兄ちゃんとの約束は破りたくないの。」


「…そっか……」


何も言えなくなってしまった。

こういう傷を作ることはよくあるのかもしれない。

慣れてるよ!と言う棗は心にも傷を負ってはいないだろうかと心配になる。


「ねぇ棗ちゃん、よかったら明日さ、

一緒に買い物に行かない?」


「えっ!いいの?行く行く!!」


女同士の約束が完了したところで、ようやくクマの描いているものを覗き込む。


「ははっ、やっぱり。」


やはりそこには棗の顔が精巧に描かれていた。

棗は目を丸くして驚いている。


「すっごおおおー!ヤバすぎ!クマちゃん天才!!

ねぇ!夜にはお父さん帰ってくるからさ、お母さんとお父さんと私の絵を描いてよ!!」


クマは、え〜と面倒くさそうな声を出した。


「ねぇ!お願いクマちゃん!」


「クマ、またイチゴ味のお菓子買ってあげるから!」


「しゃーねーなー。」



棗は渡された絵を大事そうにファイルに入れていた。


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