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午後は棗に誘われて、棗の部屋で過ごすことになった。
翔は部屋で昼寝をしたいらしくて部屋にこもってしまった。
棗の部屋は、好きなバンドのポスターや、アニメのポスターが貼ってあったり、ファッション雑誌や漫画が律儀に本棚に並べられていたり、普通の中学生らしい部屋だ。
「ねぇねぇ、棗ちゃんって、好きな人とか彼氏とかはいるの?」
思い切ってどうしても聞いてみたかった質問をしてみた。
普通の中学生と話せる機会なんてないからというのもあるし、可愛いからきっとモテるだろうなぁと思ったというのもある。
すると棗は照れくさそうに笑った。
「好きな人は…いるけど…」
「そうなんだ!棗ちゃんは美人だから、猛烈アタックしちゃえばいいのに〜」
「ふふっ… 里桜ちゃんはお兄ちゃんに猛烈アタックしたの?それともお兄ちゃんの方から猛烈アタックしたの?」
「えっ……」
ドキッと鼓動が大きく跳ねる。
なんとなくクマに視線を移すと、机の上でまた何かを書いているようでこちらを見ていない。
「私から…かな。わりと積極的だったかもしれないな。」
そう言って笑うと棗はいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「今までのお兄ちゃんはね、実は彼女はみんな非術師だったんだよ?知ってた?」
「あ、そうなんだ…知らなかったよ」
「でね、どの子にも魔術師ってこと隠してたから、うまくいかなかったっぽいよ。当たり前だよね〜」
その言葉にはなんとも言えなくなって口ごもった。
やっぱり理解や価値観の違い、他にもいろいろと問題があったのかもしれない。
「でも今回初めて同じ魔術師の彼女を連れてきてくれた。だから安心したよ。あんなお兄ちゃんだけど、よろしくね里桜ちゃん!」
「うん、もちろん」
なんて大人びた子だろう。
こんなしっかりしてるのに、まだ中1…
この子の恋が上手くいってくれたらいいな。
それに、翔のいうように、普通の幸せな人生を送ってほしい。
「あれ?棗ちゃん、ここどうしたの?」
よく見ると、棗の肘にアザがついている。
蚯蚓脹れみたいにも見えた。
「あーこれねー、男子にやられたんだ〜」
「えぇ?!」
「ほら、私強いからさ。喧嘩になっても絶対に手を出すなってお兄ちゃんに言われてるの。」
里桜は顔を歪めた。
しかし、棗は何食わぬ顔で話を続ける。
「私さ〜性格男っぽいからさぁ〜よく喧嘩になるんだよね。弱いものいじめしてたりすると、許せなくて」
「でも、手を出さないってなると、どうするの?」
「なんとか口喧嘩だけで頑張る!でも向こうから手を出してきたら、避けまくって、逃げて、終わり!
手出したらきっと殺しちゃうからさ〜」
ニッと白い歯を出す棗は、肘をわざと見せながらガッツポーズをした。
けれど里桜は眉をひそめたままその痣を見る。
「とにかく私はお兄ちゃんとの約束は破りたくないの。」
「…そっか……」
何も言えなくなってしまった。
こういう傷を作ることはよくあるのかもしれない。
慣れてるよ!と言う棗は心にも傷を負ってはいないだろうかと心配になる。
「ねぇ棗ちゃん、よかったら明日さ、
一緒に買い物に行かない?」
「えっ!いいの?行く行く!!」
女同士の約束が完了したところで、ようやくクマの描いているものを覗き込む。
「ははっ、やっぱり。」
やはりそこには棗の顔が精巧に描かれていた。
棗は目を丸くして驚いている。
「すっごおおおー!ヤバすぎ!クマちゃん天才!!
ねぇ!夜にはお父さん帰ってくるからさ、お母さんとお父さんと私の絵を描いてよ!!」
クマは、え〜と面倒くさそうな声を出した。
「ねぇ!お願いクマちゃん!」
「クマ、またイチゴ味のお菓子買ってあげるから!」
「しゃーねーなー。」
棗は渡された絵を大事そうにファイルに入れていた。




