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「うん。返しておくね。」
そう言って里桜がバッグにそれを入れると、予想外の言葉が降ってきた。
「もう3ヶ月も会ってないからさ〜危うく忘れるとこだったよ〜」
「え?3ヶ月?」
驚いている里桜をよそに、翔が独り言のように呟いた。
「あいつ3ヶ月前にもここへ来てたのか…」
「前なんてしょっちゅう遊びに来てて、いろいろゲームやってたのにさー、最近めっきり来ないんだよね。そんなに忙しいのー?」
なるほど…
昴は1人でよくここへ来て妹さんと遊んでいるのか。
そう里桜は結論づける。
「まぁ…忙しいっちゃ忙しいね。でも、会った時に言っとくね。
棗ちゃんが会いたがってたって。」
「うんよろしくね!」
そう言って美味しそうにドーナツを齧る棗はお母さんに似てとても可愛らしいと思った。
愛想も良いし、確かに昴とも気が合いそうだ。
「…なぁ、なんで棗までここでお茶してるんだ?母さんの手伝いでもしてこいよ」
「いいじゃん別に!そんなことよりお兄ちゃんまた髪伸ばしてんのー?キモイよー?」
「…っ…いい加減にしろよ、棗…」
「ねぇ、里桜ちゃんはこの髪型どう思うー?」
突然そんな事を聞かれ、一瞬戸惑ったが、素直な感想を述べる。
「私は…すごく似合ってていいと思うよ。男の人でこういう髪型が似合う人ってあまりいないしね。」
いつも後ろで束ねていてオシャレだと思うし、解いてまっすぐおろしている姿もすごく色っぽくて里桜は本気でかっこいいと思っている。
「え〜マジー?でもうちの中学じゃこんなの流行ってないよー?今の流行りって、横に刈り上げて前髪をもっとこうー」
「そろそろ黙ろうか棗。ぶっ飛ばされたいのかな?」
「はぁ?やっぱ神塚昴がお兄ちゃんだったらよかったわ〜髪型はイケてないけど顔はイケてるし、お兄ちゃんよりいっぱい遊んでくれるし」
「ほう、なら今すぐ神塚家に嫁いでこい。止めないよ」
さっきから黙って聞いていた里桜は思わず笑ってしまった。
弟もいいと思ってたけどやっぱり妹も良いなと思った。
こんなふうに口喧嘩をしてみたい。
「なぁ棗!お前の持ってるゲームやらせてくれ!」
突然クマが口を挟んできたので、今の今までその存在を忘れていたことに気がつきビクッとする。
「ちょっとクマ、初対面の人に向かって何言ってるの、お行儀良くしなさい」
「いいよいいよ!やろーよクマちゃん!」
棗はとてつもなく嬉しそうな笑みを浮かべて自室へとクマを連れて行ってしまった。
翔は深く息を吐いてソファーに寝そべり里桜の膝に頭を置いて膝枕にした。
「ふー、ようやく煩いのが消えてくれた。勘弁してほしいなほんと。実家に帰ってもゆっくりさせてもらえないなんてうちだけだろ…だから帰りたくないんだ」
里桜は笑って翔の頭を撫でた。
「妹さんはお兄ちゃんと遊びたいんだよ。きっと、大好きなんだよ翔のことが。」
「は…あんなに憎たらしいのと遊んでられるか」
「でも私からすればすごく羨ましいな。私には兄弟もいないから、口喧嘩とかしてみたかったって思うしさー。」




