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3

翔は心底申し訳なさそうに部屋のソファーに深く腰掛けため息を吐いて上を見上げている。



クマがようやくバッグから這い出てきた。


「ふーっ、マジ息詰まるぜぇ…」



すると、ノックもなしにガチャっとドアが開いたかと思えば、お茶をお盆に乗せた棗が入ってきた。


また翔の顔がみるみる不機嫌になる。


「おい、ノックはしろよ。常識だろ」


「だって両手塞がりなんだもん。今だって肘でなんとかドア開けたんだよ」


「あっ、棗ちゃんごめんね!私がやるよ!」


里桜が慌てて立ち上がりお盆を受け取ろうとするが、


「ははっ、いーのいーの!座ってて!」


そう言って棗が紅茶を注ぎ始めた。

テーブルに皿を並べ、ドーナツの袋を置く。

箱を取りだし並べられているドーナツを眺めながら言った。


「ね!どれ食べていいの?」


「もちろん棗ちゃんから好きなの取って?」


里桜がそう言うと、色とりどりのドーナツに目を輝かせている。


すると横から、ひょいっとピンクのドーナツを掴みあげたのはクマ。


棗が唖然とした表情になり、里桜も一瞬のことすぎて固まってしまった。


「ん〜けっこーうまい!やっぱイチゴの味だァ〜」


「ぬいぐるみが…喋ってる…」


そう目を見開いて呟く棗に、慌てて里桜が口を開きかけた時、翔の冷淡な声が降ってきた。


「棗、そいつはS級クラスの傀儡だ。扱いには気をつけろよ」


えっ、と思って里桜が翔を見ると、翔は何食わぬ顔で紅茶を啜っている。


「あー…そっか、思い出した。

ラインで言ってたやつね。かわいいなぁ…」


棗はむしゃむしゃドーナツに夢中になっているクマの頭を撫でた。




「ちょっと翔っ。こういうの大丈夫なら先に言っといてよ。クマは家族の前には出さないって話だったじゃん」


こそこそと翔に耳打ちをする。



「そんな話したか?うちの人たちは全く平気だよ。そもそも私の呪霊のことだって分かっているし」



「・・・」


やっぱり話を聞いていなかったんだなと思い、何も言えなくなる。

しかし、とりあえずは良かった。

クマの素性を隠す必要はなくなった。



棗はまだドーナツに迷っているようなので里桜は声をかけた。


「棗ちゃんはピンクは好き?

クマと同じイチゴ味なんてどうかな〜って思ったんだけど」


「え?私の好きな色は緑色だよ!ピンクみたいに女の子っぽい色って、ちょっと苦手なんだ〜」


そう言って緑の色合いのドーナツを取って食べだした。


「ん〜おいしい〜!抹茶味だ〜」


「・・・」


すかさず里桜は翔を睨む。

全然ピンクじゃないじゃん、と目だけで言う。


翔は苦笑い気味で視線を逸らした。



「ところでさぁ、神塚昴は元気ー?」


まさか突然その名前が出てくるとは思わず、里桜は目を見開く。

それと同時に翔が面倒くさそうに答えた。


「元気ありすぎて困ってるくらいだよ、相変わらずね。」


「あのさー、これ返しといてくんない?」


そう言ってテーブルに置いたのは何かのゲームのようだ。

五条に借りていたということは…1年前に借りたものということだろうか?

翔は実家に帰るのは1年前の夏休みぶりだと言っていた。

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