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学校から本当に近いらしく、30分もしないうちにすぐに着いてしまった。


洋風の佇まいの大きな家。

花壇にはいろんな花や植物、置物が置いてあって、なんだか一気に緊張感が押し寄せてきた。



「ちょちょっと待った!翔っ、1度深呼吸させて!」


「大袈裟だなぁ、お化け屋敷に来たわけじゃないんだから」


すぐさま扉に手をかけていた翔を即座に里桜が止めたので、心底おかしそうに笑ってそう言う。



「翔…おいらも緊張してきた…」


「はぁ?」


初めて知らない人の住む家に入るというのがクマの緊張感をも煽ったのだろうか。

バッグの奥へと頭を引っ込めてしまった。


意外すぎて2人で噴き出していると、突然扉が開いた。



そこに目を見開いて立っているのは、黒髪を高い位置でポニーテールにしたワンピース姿の可愛らしい少女。


「おにーちゃん!!!」


よく見ると、翔に似ているように思う。

少女はすぐにくるっと後ろを向くと、奥に向かって叫び出した。


「おかーさーん!!お兄ちゃん帰ってきたぁ!!

ちゃーんと彼女も一緒〜!!!」



「おい、(なつめ)先に挨拶をしろ」


翔の冷淡な声で、里桜がハッと我に返る。

先に挨拶すべきなのは本来こちらだ。


「こっこんにちは。はじめまして。里桜です」


棗は舐めるように里桜の顔を凝視したあと、

翔とそっくりの笑顔になった。


「はじめましてこんにちは!私は棗って言います!

漢字一文字で棗!よろしく〜♪」


随分と明るい子だと思って、少しだけ肩の荷がおりた。

けれど、まだまだ序章で、ここから先が本番だ。

里桜は朝からずっとドキドキしている鼓動を抑えるように胸に手を置いた。



そうして中へ入れさせてもらうと、奥からエプロン姿の綺麗な女性が顔を出した。


その容姿には目を見張る。

母親とは思えないくらいに若く見え、綺麗な黒髪ですらっと背が高く細身でまさに容姿端麗といった感じだ。

優しく微笑むその表情が、翔にも棗にもよく似ている。


「あら〜いらっしゃい!あなたが里桜ちゃんね!また随分と可愛い子を連れてきて!」


「初めまして。あのこれ、お土産です。

お口に合うかは分かりませんけど…甘いものです」


「え〜やばこれ最近流行りのやつじゃん!

今度の彼女はセンスがいいね!おにーちゃん♪」


棗の先程からの言葉と、母親の発言に、なんとなく違和感を感じて翔を見ると、翔は明らかに居心地悪そうに眉間に皺を刻んでいた。


「わざわざありがとう里桜ちゃん。お昼ご飯できたら呼ぶから翔の部屋でゆっくりしていてね」


「ありがとうございます。お邪魔します。」



そうして階段をあがり、2階の翔の部屋に入ったのだが、とても広くてよく整理整頓され、さすがあの美しいお母様といったところだ。


「はぁ…ごめんな里桜。うちの人たちはほんっと空気が読めないんだ」


「え…あぁ、全然いいよ。翔に元カノの1人や2人…いやそれ以上かもしれないけど、いたことくらい全然予想外じゃないしむしろ当然でしょ」


わざとなんでもない風に笑って見せたが、内心はもちろん良い気はしなかった。

しかし負けず嫌いな里桜は、こうなったらとことん気に入ってもらえるよう努力しようと決心していた。

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