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「あぁ…自分が自分を愛してやらないでどーすんだ?」
「はっ、カッコつけちゃって」
「あの言葉通り、おいらは里桜ほど綺麗な人間を知らない。心がだ。分かるか?見た目で判断するのは人間だけがすることだからな」
クマはボーッと天井を見上げている。
「里桜はおいらの全てなんだよ。おいらの生命そのものなんだ。」
大好きなんだ。
里桜のことが。
昴の目が見開かれ、眉にはシワがより始める。
こんな発言をこいつがすると思えなくて幻聴なのかとさえ思えてきてしまう。
しかしクマの顔も声も、今までないくらいに真剣そのものだ。
「でもこれは恋愛的な意味じゃねぇ。勘違いすんなよ」
「してねーよ!つぅかお前さっきから言ってることクマの人形が言うセリフじゃねぇぞ?そういうのはイケメン俳優が映画で言うセリフ!俺みたいのが!」
これ以上、妙なライバル増やされてたまるか。
クマは何事も無かったかのようにコーラに口をつけ、うっまっず!と一言言った。
「それよりさー…俺はさー…」
「あん?」
「里桜の泣いてるとこを見てーんだ」
「は、何お前やっぱ変態か?」
「違ぇよ真面目な話。里桜の笑ってる顔もいいけどさー、感情爆発させて泣いてる顔も見たいんだよ。」
じゃねぇと壊れちまうだろ、あいつ。
「里桜が幸せならそれでいいじゃねぇか」
「あぁ俺もそう思ってるよ。里桜の視界に俺が1番に映ってなくても。でもな…俺は……誓ったんだ。…」
空になるって。
"心に余裕がある時に空を見上げるんじゃないよ?空を見るから心に余裕ができるんだよ。"
"空を見上げるとさー、全ては繋がってるって実感できるんだよね。空は何があってもどこへ行っても一緒にいてくれる。いつだって味方になってくれる"
「おいらもうわかってる。里桜が涙を流して感情炸裂するときは、多分ひとつしかない。」
「だな…俺もわかってる。」
「そしたらお前は空になってやれよ。万が一の話だが。」
「もう空のつもりだよ」
「まだまだだね。里桜は本当に上を見てない。
見てるふりして見てねーんだ。」
沈黙が流れる。
画面には、まだクマの勝利画面が映っている。
「なぁ、プー野郎。お前はその時、何してんだろな」
「さぁな。お前こそ何してんだろなグラサン野郎」
「お前とまた喧嘩してる」
「そしたらおいらがまた勝ってる」
くくくっと同時に肩を震わせて笑う。
「1つ約束してくれクマ。」
突然真剣になる昴に、クマは口を閉ざす。
「里桜に悲し涙だけは流させない努力をするって。」
「あ?お前さっきと言ってること違くねーか」
「違くない。俺は悲し涙を見たいわけじゃない」
悔し涙、嬉し涙、感激の涙…複雑なやつ
いろいろあんだろ。
つまり里桜を悲しませることのないように、精一杯努力をしていこうということ…
互いの目が細まり、ジッと見つめ合う。
奥に見えるなにかを懸命に探ろうとするかのように。
「貸し1な。」
そう言って差し伸べてきたクマの手を握る。
「おう。」
固い握手のはずが、全く固くない。
「おまっ!肉球やっば!やわらけー!
もっと触らせろ!」
「んなっ?!この変態野郎!セクハラ!
翔に言いつけるからな!」
「マジそれだけは勘弁!ははっ!」
結局ホールドされたクマは昴の満足いくまで肉球をふにふにされていた。
「はぁ…人間は約束が好きだな…」
その小さなつぶやきは昴の笑い声でかき消されていた。




