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その夜、結局里桜を巻き込んでスマブラをするような空気には到底なれず、昴はクマと共にひたすら戦闘していた。
なかなかクマに勝てないのがかなりイラつく上に、不思議でならない。
「うはーあ…なぁクマ野郎、お前ってさぁ、真面目な話、一体なにもんなの?ポケモン?」
コントローラーをほおり投げ深く息を吐いて天井を見上げる昴に、クマは思いのほか真面目に言った。
「…おいらもわかんねーんだ。」
「…はぁ?」
「ただおいらが意志を持つ前、つまりただの人形だった頃、里桜の意思がひたすら入り込んできてた。意思だけじゃない。お前らと喋ってる声も、泣き声も…」
「っえ!泣いてたの?」
目を見開く昴に、クマは眉をひそめた。
「やっぱ1人だったのか」
「…らしいな。つか、俺も翔も硝子もみんな、里桜の涙って見たことねぇんだよ」
「ふーん」
まるで興味なさげに宙を舞うクマの目を、頭を掴んで乱暴に合わせる。
「なぁそんで、そん時さ、何で泣いてたの?」
「それは…秘密だ。個人情報だかんな。」
「あぁ?教えろよ!」
「誰にも知られず1人で泣きたい時もあんだろ。人間には。」
「・・・」
「人間はな…人形じゃない。いろんな感情の糸が複雑に絡み合ってて解れてないのは人間だけだ。それを無理に解そうとして切っちまったら廃人になる。それが人間だ」
強くそう言い放たれ、まさに人形に絆されているようなこの状況を少し不気味に感じる。
「…なぁ…なんで俺今、
人形のお前にこんなこと言われてんの…」
「知らねーよ」
「つーか、話脱線してる。結局お前ってなんなの」
クマは面倒くさそうに寝そべって天井を見上げた。
「おいらは多分里桜の一部なんだよ。表に出ない里桜の感情の一部から作られた…と勝手に思ってる。」
「あー、なるほど?だからお前そんなに口悪くて性悪なのかぁ。」
それについてはクマは何も突っかかってこなかった。
代わりに冷淡な声色が聞こえる。
「それでもだんだんおいらの意思がおいらになってる…気がする。」
あぁ…確かに。
と昴は思った。
初めの頃よりは少しは攻撃的じゃなくなっているし、1人の人間のようなアイデンティティが確立されているように最近は感じる。
「…あれ?でもさー、それじゃ翔の意思は全く介入してねーってこと?あいつも相当お前に呪力流し込んでたと思うけどー?」
「してる。3割か4割くらい。」
その即答に目を見開く。
里桜と翔の、クマを動かそうとする意思が、クマを動かしているのだとしたら?
「…つかさ、お前それって…例えばだけど、里桜も翔も死んだら…どうなるんだ?」
するとクマはくくくっと笑った。
「おいらも人形に戻る可能性が…ある。多分な。」
「………マジか。ウケるな」
全くウケてない顔をして考え込む昴を見ながらクマは言った。
「今度はおいらの質問に答えろや。お前さ昴よ、
里桜のことが好きなのか?」
昴の碧眼が真っ直ぐとクマの瞳を捉える。
ニッと白い歯を見せて答えた。
「うん。好き。大好き。でもさクマ助、お前もだろ?
あの時の言葉も、里桜のことなんだろ〜?」
"おいらが綺麗だと思うのは…
この世でたった1人だけだー!"
翔の魔物に向かって放った言葉。




