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「君には、人には無いものがせっかくあるんだ。自分の運命、生き方を発見できたんだよ」


「でも私は…目的も大義もなんにもないよ…今までの人生だってそう。人にはないこんなもののせいで、不幸だった。」



天馬はふっと笑って頭を撫でた。

その手の温もりも、向けられている瞳も暖かく感じる。



「不幸から良きものを生み出そうとしたり、生み出し得る者は賢い人だ。与えられた才能や運命を最もよく活かすということは、人間にとって重要だよ」



「…運命?」


そんなものは深く考えたことがなかった。

それを考えてしまうと決められた人生を肯定せざるを得ない気がして。



「運命は決断の瞬間に形作られる。つまり運命は決断の積み重ねで作られているのさ。」



「じゃあ、望んでいる通りの生き方ができるかな?」


そうでないならば、あの頃みたいに死んでいるも同然だと思うんだ。

隣にあなたがいなければ。



「人生は自分の思い通りにならないって思っている人は、自らが思い通りにならないことを望んでいる人だ。里桜は違うだろう?」


その言葉に、里桜は大きく頷いた。


「まぁでも…かく言う私も…この選択は正しかったのかって…時々思ってしまうことがあるよ…」


そう言って里桜の耳を見ながらまた顔を歪めた。

里桜の道を開いたのは自分だと、責任と戸惑いがあるかのように。


しかし里桜は笑顔を向けた。


「危険を冒して前へ進もうとしない人、未知の世界を旅しようとしない人には、人生は、ごくわずかな景色しか見せてくれないんだよ。私はもっと天馬くんと一緒にいろんなものを見たい。この星空以外にも。」


そう言って見上げた先で、1つ流れ星が流れた。



「…選んだのは私。私が私でいられるのは…天馬くんのおかげ。天馬くんがいなかったら、私は私でなくなってしまう…」



"行こう。君が君でいられる場所へ"


あの時の言葉がいつも頭の片隅にある。

そして、あなたの存在も。




涙声で俯く里桜の顎を掬って天馬は目線を合わせた。


「ふっ…そんな顔をするなよ」


「…な、なんで?」


そんなことを言われても、自分がどんな顔をしているのか想像つかない。

ただただ、胸いっぱいなこの複雑な気持ちしか…


「触れたくなるんだよ…」


「…触れてよ……」



そう呟いた刹那、吸い寄せられるように唇が重なった。

目を閉じると、柔らかく優しいその感触が、全身で感じられるくらいにダイレクトに脳へと伝わった。


少し唇が離れたかと思えば、また啄むような優しい口付けが何度か降り注ぎ、天馬の微かな息遣いが鼓膜を揺らした。



ゆっくりと唇が離れ、互いの照れたような瞳が交わり、同時に笑った。



「これは…天馬くんが持っていて。」


そう言って、先程ルビーの代わりに外した稲妻型のピアスを握らせる。

すると天馬は頷いてから大事そうにポケットへしまった。



「ねぇ…最初の質問には答えてくれないの?」



"どうしてそんなに私に優しくしてくれるの?"


その質問の回答をまだ聞いていない。


天馬はフフっと笑ってから静かに言った。


「もう答えたつもりなんだが。」


「…そうだったっけ?」


あれ?と言った顔で黒目が上に向き始めた里桜の頭を掴み、天馬は自分へ向かせた。


「それがわざとなら、なかなかにSだな君は。

それか…行動で示すより言葉のほうがいいのかな。」


僅かに笑みを浮かべたその玲瓏な瞳に里桜の鼓動がドクンと波打つ。





「…好きだ。」


「・・・」


目を見開いたまま固まる里桜の唇をもう一度奪った後、天馬は目を逸らして呟いた。


「これを言うのは最初で最後だからな…こう見えて結構恥ずかしがりなんだよ、…おい笑うな」


嬉しすぎて、幸せすぎて、笑ってしまった。


「はは…ごめんごめん…私も、好き。

この世で1番。」



幸せだ。

今、この瞬間に死ねたら、

これ以上幸福な最期はないと思えるくらいに。

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