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「みんな、お家に帰ろう。さぁ。」
手を伸ばすが、子供たちは尻もちを着いたまま後ずさりしてしまった。
「しっつれーなガキ共だな!」
「こらクマ!…あっそうだ!」
そう言って里桜は乱暴にクマを掴み、子供たちの目の前に翳しフルフル振ってみせた。
「ね、見て!可愛いくまさんでしょ?!
お喋りもできるんだよ??ねっ!クマ!」
「うっ・・・」
揺すられているクマはそのままガクンガクンしている。
「クマ!ほらなにか喋って!」
「…うー…なんでおいらがこんな」
「「うわぁぁあ〜喋ったぁ〜…」」
子供たちの顔がパッと明るくなり、たちまちクマを触りだした。
クマが耳を引っ張られたり腕を振り回されたりしている光景を見て昴は盛大に噴き出し、スマホを取り出した。
「やべぇ、傑作すぎ〜!記念写真撮っとくわ!」
「おい神塚!てめふざけっ」
クマが喋れば喋るほど子供は喜んで弄くり回す。
この機を逃すまいと、昴はさぞ面白そうに連写している。
「すごいなぁ〜ねぇこのクマさんもらっていいー?」
女の子のその言葉に、里桜は優しく笑った。
「それはできないんだなぁ〜。
このクマは私の宝物なの。とても大事なね…」
子供たちは、え〜と残念そうな声を出しながら、クマを抱きしめている。
「おい里桜お前っ!
それなら宝物らしく扱ったらどうだ!」
「扱ってるじゃん、いつも。」
「はいは〜い!じゃあみんなで記念撮影〜!!」
突然昴が全員を引き寄せ、インカメラを翳した。
パシャリと音がし、可愛いクマのぬいぐるみと5人の笑顔がそこに切り取られた。
子供たちの両親は何度も何度も頭を下げてきた。
あまりに感謝されすぎると、どことなく居心地が悪くなってしまう。
「もう危険な場所で隠れんぼはやめてね?」
「「うん!」」
里桜はクマの手を掴んでその手で3人の頭をよしよしと撫でていった。
「ありがとうくまさん!またね!!」
そう言って子供たちは順番にクマに抱きついていく。
クマは不機嫌そうに黙ってそれを受け入れていた。
「ばいばーーい!!」
「また遊ぼーねくまさーん!」
そう笑顔で去っていく子供たちに、里桜が無理矢理クマの手を取って大きく振る。
「また遊ぼうね、だとよプー助!
よかったな、お友達ができて!」
「るせぇわ!人間のガキと遊ぶのはもうごめんだ!」
親が来るまでの間、なんだかんだ言ってクマは子供たちと遊んであげていた。
その光景が微笑ましすぎて、里桜はますますクマの存在を愛おしく感じてしまった。
「はぁ…んなことよりやべぇな…
翔にドヤされるなこりゃ…」
里桜には傷一つ付けないと言っておきながら…
彼女の手には血が滲んでいる。
「はっ、だな。翔に殺されるかもなお前。」
笑いをこらえているクマを睨みつけながらも、昴はため息を零さずにはいられなかった。




