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「はぁ……」
任務から帰ってきた翔は昴の部屋のベッドで心地よさそうに眠っている里桜とクマの姿にため息を漏らす。
「説明してくれないか?昴。」
「うんパパあのね、
スマブラやってたら寝ちゃった。それだけ。」
白い歯を見せて言う昴を冷淡な顔で見つめる。
「ホントにそれだけ?」
「それだけだよ!信じてよ翔パパ!」
「なぁふざけるのやめてくれないか?」
「ふざけてない。だから連れ帰ってもらおうと翔をこうして連れてきただろここへ。」
翔は短く息を吐いてからクマごと里桜を抱きかかえた。
「ははっ、ウケる。マジで起きねぇ」
翔の腕の中でスヤスヤと寝息を立てている1人と1匹を覗き込みながら楽しそうに笑う昴。
そんな昴を納得いかない顔で睨む翔に、昴はわざと呆れたように言った。
「なんだよ。そんなに疑うならさぁ、このプー野郎にでも聞いてみたらいんじゃない?そのためにいるんでしょ?この可愛いクマさんは。」
それについては翔は何も言わなかった。
「…里桜は笑ってたか?」
「うん、いっぱい笑ってた」
「…そうか…ならいい…」
くるりと踵を返した翔を、昴は呼び止めた。
「なぁ翔。」
「…ん?」
昴の頭の中には今日クマに言われた言葉が反芻されていた。
"あ、思い出した。そーいえば、昴はたった1人の大事な親友だから、仲良くしてやってくれって言ってたっけなー。無理すぎて忘れてたわ。
親友だけど、敵なんだってさ。
最大の敵なんだってよ。意味わかる?"
真っ直ぐに翔を見つめる。
2人を抱きかかえたままの翔も真っ直ぐにこちらを見つめている。
「俺も翔のこと、たった1人の大切な親友だと思ってるよ」
翔は訝しげに目を細める。
いきなりなんだ?と言いたげな顔だ。
「でも、翔と同じように、最大の敵だとも思ってる。
意味わかるかなー?」
ニッと笑う昴に、翔は真顔のままだ。
「…私は……」
ゆっくりとその薄い唇が閉じ、そしてまた開いていくのが分かる。
「…私は…親友のままでいたいんだよ。昴。」
静かな口調で、しかしハッキリとしたその言葉が鼓膜を揺らした。
「ふん。俺もだよ。たとえ敵対したとしてもね。」
翔は薄ら笑ったあと、愛おしそうに腕の中の2人を見つめながら部屋を出ていった。
「お前って…多分俺よりイケメンだよな、翔…」
昴は1人になった部屋で、静かにそう呟いた。




