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矢作のそばで自分にだけバリアを張って浮遊するだけで、クマ自身はなんにもしなかったそうだ。


そのくせ、矢作の動きや攻撃について、事細かく指摘したり暴言を吐いたりしていたらしい。



「てめぇそこはまず右斜め後方からだろ!

はよ畳みかけろ!」


「はいっ!」


「下だ!下を見ろドアホ!注意散漫すぎだ!」


「わっ!は、はいっ!」


「おい左からなんか来るぞ、前からもだ。

そこへよじ登って上から一気に叩け!」


「はははいっ!」



…こんな感じだったらしい。


聞く限りだとなんとも偉そうでふてぶてしいのだが、矢作は、クマのおかげで生き残れたと言って興奮気味に話してきた。


「もうマジすごかったっす!クマさん神っすよ!さすが天馬さんと里桜さんの子供さんって感じ!」


「いや…それは違うけど…」


なんでだろ?

と里桜は思った。

私とクマで1度任務に出向いた時は、確かにいろいろ口うるさかったけど、迫ってくる脅威はほとんどクマが排除してくれたし、私が戦闘しやすいように常に動いてくれてた。


他の人の前だとやる気を示さないんだろうか?

単に気分屋なのか?


ただ1度だけ、クマのみの単独任務を夜蛾から言い渡されたことがあって、頑なに行かないと言い張っていたのだが、里桜が、行ってこい!と一喝すると、しぶしぶ出向いてそして速攻終えて帰ってきた。


夜蛾からは、里桜にしか従わない呪骸なのではと言われたのだが、その線が濃厚になってきている気がする。


「いやぁ〜だいぶキツかったけど、ホント感激したなぁ〜!またクマさんをお借りしてもいいっすか?」


「あぁ、うんもちろんいいよ」


「やったあ!次の任務が楽しみだなぁ〜!

また天馬さんとも組みたいけど!」


満面の笑みになる矢作に、里桜はずっと聞いてみたいと思っていたことを思い切って聞いた。


「ねぇ、矢作くんって、なんで傑のことをそんなに尊敬しているの?」


すると矢作は一瞬ポカンとしたかと思えば、すぐにまた笑顔になった。


「なんでって…そりゃあもうあんなにかっこいい人いないじゃないですかー!強いし優しいし、いつも冷静で、考え方とかも魔術師としての鏡みたいな人ですよ!」


確かにそうだと里桜も思った。

仲間のことを大切にしているし、責任感も人一倍強い。


矢作くんは傑の良き理解者だ。

そう思ったら嬉しくなって自然と頬が緩んだ。



「僕と1度任務で組んだ時も、クマさんみたいに的確な判断とアドバイスをしてくれて!全てが凄かったんです。

あー、やっぱり天馬さんのそういうとこにクマさんは似たんじゃないですかー?…まぁ、天馬さんは術でいっぱい助けてくれたけど!」


「え、そうなのかな…?」


「絶対そうっすよ!」


楽しそうに笑う矢作を見ながら少し考える。


クマに少しだけ

自分と天馬の何かが流れ込んでいるのかな、と。




「僕は…天馬さんのような魔術師になりたいんです。

天馬さんみたいに、真を持っていて真っ直ぐで…そんな強くて立派な魔術師に…」



そう静かに呟く矢作の瞳の奥には玲瓏に輝く光が見えた気がした。

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