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「あのー…すいませーん!…おーい!さーせーん!」
「んん……」
迷惑そうな声が聞こえた気がして目を開ける。
しかし目の前にあるのはクマと、そしてそれを挟むようにして翔が寝息を立てているだけ。
なんだ夢か…
そう思ったのも束の間。
その声の主に気が付く。
「いい加減苦しいんすけどー?!
暑苦しいし!なんやねんこの状況はっ!」
「っ…!!!…は…?」
クマが喋っている。
しかもめちゃくちゃ可愛い声だ。
やはりこれは夢だったか…?
そう思って里桜は自分の頬をパシンと叩いた。
痛い…しかもクマはモゾモゾと動いている。
「おいこら!動けねぇ!はよどかんかいっ!」
口が悪すぎて目を丸くするが、ハッと我に返って急いで翔の体をゆすった。
「翔っ!起きて翔!!やばいことが起きた!」
「…ん……?…んん?…なに、どうしたの…」
翔は片目だけ開けてゆっくりと上半身を起こした。
ようやく隙間ができたクマは瞬時に布団から這い出て2人を交互に見る。
「おいらの名前は…クマだっけか?で、お前らの名前は確か… 里桜と翔?で合ってるか?」
翔は驚愕の表情を浮かべた。
「な…な…おい里桜?これは一体…」
「わかんない…私もこの子の声で目が覚めた…」
しかしこれは紛れもなく現実で、そして成功の証。
「や…やったよ!やったよ翔っ!」
「あ、あぁ…よかったな!里桜は天才だよ!」
「いや翔のおかげだよ!寝ている間も一緒に呪力を流してくれていたから!」
そう言って抱き合う男女にクマは不機嫌そうな声を出した。
「たわけ!確認事項に答えろや!」
「っ……あ、はい。合ってます…」
里桜はこそこそと翔に耳打ちする。
「ちょっとこの子…あまりに口悪すぎじゃない?」
「あぁ…昴より悪いな…しかもちょいちょい出してくるこの関西弁はなんだ?私も里桜も言葉遣いは丁寧なのに…」
「おいこらっ!コソコソ話は失礼やぞ!
おいらの両親ならば少しは親らしくしろやボケェ!」
めちゃくちゃ愛らしい姿でそんな言葉を吐かれ、2人はみるみる顔を歪める。
声まで可愛らしいのに…
「んんん…クマ…君はちょっと躾から始めないとならないようだね。私たちの子供ならばそれらしくきちんとした教育が必要だ。」
苦笑い気味で翔が言った。
「これから頑張ろうね、クマ!」
里桜はとりあえず明るく言った。
成功の喜びで興奮はしているが、この言葉遣いと態度はどうにかしなければと思う。
でも嬉しいものは嬉しい。
翔と里桜は互いの笑みを突き合わせた。




