小さな新星
ここ最近の訓練はかなり凄まじい。
なぜなら、里桜は階級を上げたい一心で、翔と昴に毎日のように付き合ってもらっている。
それと、ゲームの一件からいちいちあれこれ賭けるようになったというのもある。
もちろん本気でやったら昴や翔が勝つに決まっているので、少しは手加減をしてくれたりはするのだが、それが尚更里桜のイライラを募らせていた。
瞳と里桜が組んでやったりすることもあるが、やはり最強の2人にはなかなか敵わない。
「うー!負けないーっ!!」
近接戦や組手などは里桜は得意なのでわりといい勝負まで持って行ける。
そもそも、相手が昴や翔でなければほとんど打ち負かすことができるくらいの実力の持ち主だ。
「っおらぁぁああ!!」
「ははっやるじゃん里桜!」
「っっ!!わ!!」
しかし紙一重で翔に1本取られてしまった。
「うーームカつくーーーー!」
「里桜もう少し脂肪と筋肉つけたら?
細すぎだよ、危うく折ってしまうところだった…」
「嫌だよ!太りたくないしね!」
「細すぎだと言ってるんだよ。」
「でも私、腹筋は縦に割れてるよ?」
「ああ。知ってるよ。何度も見てるから。
でも横に割るためには一旦体重増やさないとね」
「えぇ〜〜?!もおおお!!」
パチパチと昴がベンチに座って手を叩いている。
「ハイハイお二人さんイチャイチャを見せつけないでもらえる〜?とりあえず俺は〜やっぱハーゲンダッツかなぁ〜!」
「チッ。あんたって奴は…
行こう里桜。」
瞳に連れられて結局コンビニに行く羽目になった。
コンビニでシャーベットをカゴに入れた時、瞳が横から声を掛けてきた。
「んなカロリー低いもん選ぶな!
あんたはこれにしなよー!スーパーカップ!」
「えぇっ!これ1番カロリーヤバいやつじゃん!」
「翔がもっと太れって言ってたでしょ?」
「いや、だとしても太り方ってもんがあるっしょ!
鶏肉とかさぁー…」
「でもさ、ちょっとフニフニして女性らしい体つきのほうが、男って喜ぶっぽいよ?」
コソコソと耳打ちしてくる瞳に里桜は鳥肌が立つ。
「そ、そういうもん?
…っていうか!違う!私は強くなりたいだけでっ」
「ハイハイわかったわかった」
焦り出す里桜を受け流して瞳はあれこれカゴに入れた。
道中も、なかなか不機嫌気味な里桜に、瞳は明るく言った。
「ねぇ、里桜?もうあんたは充分強いよ?
まぁもっと強くなりたいって気持ちはわかるけど、あの二人と比べてたらキリがないよ。あいつらちょっと別格だもん」
「違うの…そうじゃない…」
突然弱々しくなる里桜に、瞳は訝しげに視線を送る。
「私だけなんにもないじゃん…瞳は治癒魔術に長けてるし、あの二人もそれぞれ特技があるし…」
「っえ、何言ってんの。里桜だっていろいろ強みあるじゃん」
「そうじゃなくて…皆みたいに、自分にしかできないことが欲しいの…そうじゃないと…皆を助けられないでしょ…」
「仲間って、自分のできないことを助けてくれる人たちだと思うけど…でもさ…自分にしかできないことで助けてあげられる人たちのことだとも思うから。」
前に新幹線の中で昴に言ったことと同じセリフだ。
瞳は短くため息を吐いてから言った。
「里桜の存在自体がもうすでにそうだと思うけどねー」
「…え?」
瞳の顔を覗き込むと、彼女は案外真剣な表情でこちらを見つめていた。
「そんなに何かを求めるならさ、1度鬼頭にでも相談してみたらー?」
「…そっか、そうだね。そうしてみる…」
喪失感にも似た焦りの感情が自分の中を蠢いている。
自分にはなんにもないような気がしてならない。
皆の役に立ちたいと誰よりも強く思っているはずなのに…




