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戻ると、翔はとっくにテレビを直していて、瞳とゲームを再開していた。
画面を見ると、翔はピーチ姫、瞳はカービィを使っている。
「はっ、また可愛いもん使っちゃって。
つーか無視かよっ!」
「あっ、おっかえりー!
でもちょい待って今目が離せないから!
ピーチがつえーんだわ!」
「おかえり2人とも。
里桜の言う通り、姫様は扱いやすいね」
翔がなぜピーチ姫を使っているのかは里桜も昴も分かっていた。
里桜と共有できることをまた増やしているのだろう。
しばらくしてから、4人で飲み会みたいなことをして…
早くも何本目かの酒を飲んだ瞳が少々呂律の回らない声を発した。
「ねー!夏休みにさ!4人でどっかいこーよ!」
「いいねいいね〜私も行きたいなぁ!
こないだの名古屋観光みたいに旅行行きたいっ」
まぁあれは任務だったのだが…
と思いながらも、やっぱりこのメンバーで遠出するのは楽しいし、今度は任務じゃなくて普通に旅行を楽しんでみたい。
「どこか希望はある?」
翔の言葉に、皆が上を見上げ考え出した。
そして、1番初めに口を開いたのはやはり昴だった。
「とりあえずさぁ〜無難にまず海行かねぇ?」
「海か…いいな。里桜と瞳は?」
「うっぷ。私ぃー…わぁー
うまい酒とうまい食いもんあるとこならどこでも〜」
顔を火照らせてスルメをつまんでいる瞳がなんだかオッサンにしか見えなくなってきた。
「ちょっと飲み過ぎだよ瞳!大丈夫?!」
「らいじょぶ!であんたはどこ行きたいのよ!
天馬とならどこでも〜とかそう言うのナシね!」
酔っ払ってるくせに辛辣なことを言うんだなと思いながら、里桜は苦笑いした。
「うーん…私は、えっとー」
行きたいと思っていたところは実はずっと前から決まっている。
「私は…ドリームランドに行きたい」
「あ〜!!てぃーでぃーえるね!!
俺まだ1度しか行ったことねーわー」
「えっ!ホントに?」
意外だった。
昴ならああいった場所にはたくさん行っている気がした。
なんなら1人でも行ってしまっているような気さえ…
「マジマジ。だって俺、小せぇ頃から結構どこにも行かせてもらえなかったもん。」
あぁ…そっか。
だって神塚家の坊ちゃんだもんね。
代々魔術を扱う歴史ある家系だから、もしかしたら子供らしいことはあまりさせてもらえない生活だったかもしれない。
「でも、1回は行ったんだ?」
「うん!こいつとな!!」
そう笑って翔を親指で指す昴。
「えぇっ?!翔と?!…2人で?!」
驚愕していると今度は翔が笑った。
「そうなんだよ。昔、里桜が高専来る前に1度ね。
って言っても、任務でだよ。任務だというのに昴がはしゃぎすぎてあちこち連れ回されたんだよ。勝手に頭に耳とか付けられてね。案の定そのあと鬼頭先生には叱られて、」
「なっ?!翔だってなんだかんだ言って楽しんでたくせに!あ!証拠写メ残ってるぜ?!見る?」
「見る見る!見たい見たい!!」
里桜は目を輝かせて身を乗り出した。
「っ。やめろよ昴」
「お前は黙ってろリッキー!」
そうして見せられた写メには、リスの人気キャラクターリッキーの耳をつけて笑っている翔と、隣で心底楽しそうにピースしているリニーの耳をつけている昴がいる。
そしてその背景には不機嫌そうに腕を組んでいる鬼頭先生が映っていた。
「はははは!!なにこれ!!
てか2人ともカップルじゃん!!」
「ウケるだろこれ!!
鬼頭が映ってるとこなんか傑作じゃね?!レア写メだから待ち受けにしようとしたんだけど、翔が必死で止めるから仕方なく…」
「昴。待ち受けは次回行った時に撮れ。
4人揃ってる写メなら許可するよ」
そう言って翔は炭酸水を飲みだした。
少し照れているように見える。




