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コンビニを出ると、ちょうどバイクを降りたガラの悪い若者たちがタバコを吸っていた。
一斉に視線がこちらを向いたので里桜が顔を強ばらせると、突然昴に手を繋がれる。
「とっとと行くよ」
「あ、うん」
危険が及ばないように手を繋いでくれたのはいいが、もう大丈夫という所まで来てもいつまでも離してくれないのでさすがに里桜は苦笑いする。
「ねぇ、もう大丈夫でしょ、いつまで繋いで」
「危機感を持てって前にも言ったろ?それに俺は里桜の護衛でついてきたんだから。人の好意は善意に受け取れよ」
言葉を被せられ、仕方なくそのまま歩く。
「ねぇ、悟の手って…大きいね」
「そう?背が高ぇからかな」
「拳の大きさが心臓の大きさって聞いたことあるよ。」
「へぇー勉強になります」
「時々思うんだけど、心臓の中を見ることってできないのかな」
「は、何の話ー?心臓の中?」
「心の中のことだよ…」
里桜を横目に見ると、難しそうな顔をして俯いているのが、月の光でわかった。
「…さぁ?医者じゃないからわからん。瞳なら分かるかもな。あいつ医者みてぇなもんだし」
「ふ…そうかもね…」
「そもそもさー、人の考えとか気持ちとか、多くは目に見えるもんじゃねーから。」
そう言うと、里桜がうっすら笑って深くため息を吐いた。
「ほとんどの人は、相手の顔色を伺うよね、そういう時。」
「あぁ。それで手に取るように分かるんなら苦労しないもんだ」
そう言ってギュッと手に力を込めると、里桜も少しだけ強く握り返してきた。
「ねぇ…ドキドキすることってあるでしょ?私ね、それって、心臓が外に出たがってる時だと思うんだ」
昴はなんの話しが始まったんだというように訝しげに里桜を見る。
彼女は夜空を見上げて笑っていた。
「私を脱がせて全部見て、みたいなさ。どうしてこんなにドキドキしてるのか目で見て教えてって感じで、心臓が言ってるんじゃないかなってね」
昴は目を見開いてしばらく沈黙した。
「・・・なんて返していいか分かんねぇ話すんなよ…」
「ごめんごめんっ…ははははは」
里桜が心底おかしそうに笑い出すので思わずため息が漏れる。
なにこいつ…
冗談なのか本気なのか、いつもわからねぇ。
「心臓の中ね…俺だって見えねーから困ってるんだ」
「…私と一緒だね。でも…
そこがいいんだよね、人間ってさ。」
それにね…
と彼女は続けた。
「完全に理解できなくても、完全に愛することはできると思うの。」
翔が言うように、
この世のものは全て不完全。
完璧な人間もいない。
だけど。




