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「…わぁ、驚いたな。君がやっつけちゃったのか…」
いつの間にか窓は開いていて、彼は手すりの部分にしゃがみこむようにしてこちらを見つめていた。
今になって思い出すと、
彼の背景は、今日のような星の瞬く夜空だったと思う。
先程の衝撃的な出来事と、今目の前にいる見知らぬ男の存在に、声も発せないでいると、彼は柔らかい表情で静かに言った。
「ごめんね、遅くなっちゃって。でも…ある意味よかったかもな。どうやら君は…こちら側の人間らしい。」
「・・・は、い?」
顔を強ばらせたままベッドから出ないでいる私の手を、彼は優しく引いた。
「じゃあ、行こうか。」
「はっ…は?…ど、どこへ」
よろりとベッドから出たパジャマ姿の私に彼は振り返った。
その表情に思わず息を飲む。
切れ長の目が星の瞬きのせいか、ギラリと光を帯びていて、整った唇は弧を描いて影を作っている。
ゾッとするほど美しいとはまさにこのことを言うのだなと、その時感じたのを覚えている。
「君が、君でいられる場所さ…」
気が付くと私は彼の手を強く握り返していた。
天馬翔が一番最初に会わせてくれた鬼頭康広という男性教師は、刈上げ頭でアゴヒゲを蓄え、サングラスを掛けた、パッと見は893のような強面の男性。
「傀儡学」の第一人者であり、傀儡(人形に魔術を籠めたもの)を操るという、意外にも可愛いぬいぐるみをいつも集めていた。
そしてその鬼頭先生にいろいろな事を教わって分かったことがたくさんあった。
私も人形や物に魔術を篭めて操ることが先天的な能力として合っているらしい。
だから私はいつどこで呪いと対峙してもいいように、大量の鋭いピアスを耳に付けるようになった。
何か物や武器をいろいろ持ち歩くのは重いし邪魔だから。
それに、
天馬翔の両耳にも大きなピアスがついていて、なんだか共有できる何かを見つけられた感じがしたから。




