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8


里桜は溢れる涙を袖で拭った。

真剣な眼光で、意を決したように顔を上げる。


そして、ハッと息を飲んだ。

ゾッとするほど美しいと思ったからかもしれない。


そこにあるのは、

充血した白目に、宝石のような碧眼の瞳。

濡れた睫毛に、虚ろに開いた揺れる瞳孔。


碧眼は潤んでいて、今にも雫が零れ落ちそうだと思った。



「…昴……目、閉じて……」



里桜がそう言って指を近づけると、

昴はゆっくりと目を瞑った。


それと同時に流れる、一粒のそれ…


それを、里桜は指で拭った。



昴は目を開き、真顔のまま言った。



「今度は… 里桜が目閉じてよ」



里桜は目を瞑る。

その瞬間に、いくつの雫が頬を伝ったかは分からない。


しかし、何度も柔らかいものが頬に触れた。


何度も、何度も、何度も……




「……しょっぱいね…」



その声と同時に目を開けると、昴の顔は目と鼻の先にあった。


青青とした眼光が真っ直ぐと突き刺さっている。

手は里桜の頬を滑っている。



「涙の味、初めて知った」


「・・・」


さっきから頭の中がぐちゃぐちゃで、思考が追いつかず、何も言えなくなった。


「は……ダメだな…

僕このままだと…絶対言っちゃダメなことをいっぱい言っちゃいそうな気がする…」



昴が自嘲気味に笑った。



「……なに…それ…」


「いやー…やっぱり…言えないな…」


ジッと里桜の顔を見つめ、頬に指を滑らせながら、顔を歪める昴。


「…そこまで言われると、気になるじゃん…」


「ははっ…だよね……

じゃー…、1つだけ……」



そう言って昴は充血した碧眼を細め、真剣な顔をした。



「里桜は初めから不運なんだよ。」


チクリと胸が傷んだ。

そんなに酷いことを言われるとは思っていなかったから、純粋に傷ついて、また目頭が熱くなった。



「なぜなら僕に、本気で好かれちゃってるからね…

どこへ行こうと、逃げられるわけないんだ。」


だって、僕は、里桜の空なんだから…



ホントはもっと言いたいことがたくさんある。

でもきっと里桜を傷つけるからさ…

言わないでおくわ…

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