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里桜は溢れる涙を袖で拭った。
真剣な眼光で、意を決したように顔を上げる。
そして、ハッと息を飲んだ。
ゾッとするほど美しいと思ったからかもしれない。
そこにあるのは、
充血した白目に、宝石のような碧眼の瞳。
濡れた睫毛に、虚ろに開いた揺れる瞳孔。
碧眼は潤んでいて、今にも雫が零れ落ちそうだと思った。
「…昴……目、閉じて……」
里桜がそう言って指を近づけると、
昴はゆっくりと目を瞑った。
それと同時に流れる、一粒のそれ…
それを、里桜は指で拭った。
昴は目を開き、真顔のまま言った。
「今度は… 里桜が目閉じてよ」
里桜は目を瞑る。
その瞬間に、いくつの雫が頬を伝ったかは分からない。
しかし、何度も柔らかいものが頬に触れた。
何度も、何度も、何度も……
「……しょっぱいね…」
その声と同時に目を開けると、昴の顔は目と鼻の先にあった。
青青とした眼光が真っ直ぐと突き刺さっている。
手は里桜の頬を滑っている。
「涙の味、初めて知った」
「・・・」
さっきから頭の中がぐちゃぐちゃで、思考が追いつかず、何も言えなくなった。
「は……ダメだな…
僕このままだと…絶対言っちゃダメなことをいっぱい言っちゃいそうな気がする…」
昴が自嘲気味に笑った。
「……なに…それ…」
「いやー…やっぱり…言えないな…」
ジッと里桜の顔を見つめ、頬に指を滑らせながら、顔を歪める昴。
「…そこまで言われると、気になるじゃん…」
「ははっ…だよね……
じゃー…、1つだけ……」
そう言って昴は充血した碧眼を細め、真剣な顔をした。
「里桜は初めから不運なんだよ。」
チクリと胸が傷んだ。
そんなに酷いことを言われるとは思っていなかったから、純粋に傷ついて、また目頭が熱くなった。
「なぜなら僕に、本気で好かれちゃってるからね…
どこへ行こうと、逃げられるわけないんだ。」
だって、僕は、里桜の空なんだから…
ホントはもっと言いたいことがたくさんある。
でもきっと里桜を傷つけるからさ…
言わないでおくわ…




