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里桜は震える拳を上げた。
そしてそこへ、呪力を溜め込む。
隣に座っている昴は、まだ笑みを浮かべているように見える。
里桜は意を決したように深呼吸をし、思い切り拳を突き出した。
そして目を見開く。
「……なんで…跳ね返さないの……」
あえて、スレスレの0.5cm程のところで止めたのだ。
昴のほぼオートで発動するはずの魔力によって、どうせ触れられないだろうと思ったからだ。
それなのに…
「だからさ、言ったじゃん。
自分で自分に一番キレてるって。」
昴は顔に拳を突き出されたまま、静かに言った。
「…誰も僕のこと責めてくれないんだ。
皆、慰めるような言葉か褒めるような言葉しか言わなくてさ。
あのクマでさえだよ…
怒ったり責めたりしてくれんの、里桜しかいねぇじゃん」
里桜は唇を噛み締め、突き出していた拳で触れる距離にあったそのサングラスをそっと下ろした。
「…っ!!!」
里桜の見開かれた目が、じわりと滲んでくる。
「な…っでよ……昴……っ」
泣き腫らしたような赤い昴の両目が、
自分の視界の中でどんどん歪んでいき、そしてたちまちボヤけて見えなくなる。
「なん…なの……」
自分で自分を許せないのは私だ。
自分のことばっかりで、昴の気持ちは考えてなかった。
受け入れたくなくて、逃げて、
責めるようなこと言って、
追いかけている間もずっと…昴は泣いていた。
泣きながら私を追いかけていた。
どういう思いでかなんて、
想像しなくても、わかる。
きっと私にしか分からない。
今だけじゃなくて、
この10年間も、きっと何度も泣いていたかもしれない。
何度も葛藤したり後悔したり自分を責めたりして苦しんでいただろう。
なら……私は私に対するせめてもの贖罪として、
きちんとその顔を焼き付ける。
私自身を責めるために。
そして
もう二度と、昴にそんな顔はさせないように。




