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「……ぅう……翔っ…
また……会いたい…っ…」
言ってしまってからハッとなる。
こんなことを言ったら昴を傷つけてしまう。
責任を感じさせてしまう。
「……ごめん…昴を責めてるわけじゃ、ないの…」
「いいよ。わかってる…」
翔の死がなかなか受け入れられない気持ちは分かる。
僕だってそうだった。
昴は立ち上がり、鍵付きの引き出しをあけ、あるものを里桜に渡した。
里桜はそれを受け取って目を見開く。
「………これ…って…」
「うん。翔がさ、最期…
これだけは地獄に持って行きたくないって言って…」
里桜があげたクリスタルのピアス。
それは手のひらの上であの頃と変わらない輝きを放っている。
そこにまた、涙が1粒落ちた。
「翔は最期まで、里桜のこと、
好きだったと思うよ…」
"好きだ"
最後に聞いた、彼の言葉を思い出してまた泣いた。
里桜は、ルビーのしてあった穴にそれを埋めた。
新たに装着されたそれは里桜の耳で輝き始めた。
天馬翔という人間はもうこの世にいない。
自分の命よりも大切だった、
この世で1番愛していた人は
もう……
「あいつは地獄にはいないよ。」
ポツリと昴の言ったその言葉に耳を傾ける。
「…翔は…天国にいる。
里桜に会えただろうと思ってたけど、
それはまだ先になりそうだな…」
里桜はギュッと目を瞑り
何度も頷いた。
うん、そう、そうだよ。
きっとそう。
天国で、私のこと待っていてくれてるはず…
それまで…私…生き抜くね。
せっかくあなたが生かしてくれた命なんだから…
そう言いたい…
でも今は……
辛すぎる……っ…
「やっ…ぱり…私のっ…せ……」
涙が溢れて止まらなくなる。
あの頃、私が1番彼の近くにいたはずだ。
もっと彼を見ていれば…
自分のことばかりじゃなくて、
もっと彼の話を聞いていれば…
翔はたくさんの人を傷つけることも、
自分自身を傷つけることもなかったかもしれない。
人殺しにならなくて済んだかもしれない。
それかあのとき、私も無理にでもついていって、翔を説得して、一緒にどこか遠くへ逃げていればよかったかもしれない。
そうすれば、襲撃や事件なんか起こさずに、余計に人が死ななくて済んだかもしれない。
今も尚、翔は生きて私と一緒にいたはずだ。
全部私のせいだ。
私なら、きっとどうにかできた。
翔を止めることができたのはきっと私だけだった。
なぜあの時追わなかった?
なぜあの時離した?
なぜ愛してると叫ばなかった?
どんな手段を使ってでも翔と一緒にいけばよかった。
本当に翔はもうこの世にいないの?
誰か嘘だと言って。
これは夢だと目覚めさせて。
「ごめ…さ……翔……ゆる…して…」
「…なぁ、 里桜のせいじゃないよ。
なんで自分を責めてるの…」
「ぜ、ぶ、っ……私のせい……っ」
「違うったら。なぁ、里桜…」
昴の優しい声はとても逆効果だと思った。
「…うっ……う…翔っ……ごめ…っ」
死んでしまった人たちも…ごめんなさい。
できることならば、私が全て償いたい。
「自分を責めるな、頼むから…
僕を責めてくれよ……なぁ?」
昴が私の手に触れた。
咄嗟にそれを払い除けてしまった。
「っ…あ…ごめっ……」
悲しげな顔で真っ直ぐ見つめている昴の目と目が合った瞬間、急いで視線を逸らした。
「ごっ、ごめん…私…ちょっと冷静になる…
頭冷やして…くる……」
「っ?!おいっ…!」
里桜はバタバタと外へ出てってしまった。
昴とクマだけになった部屋で、なんとも言えない空気が流れる。
「おい、グラサン
追わなくていいんか?」
「………追うよ。
だってこのマンションオートロックだもん」
昴が寂しげに笑うと、クマも少しだけ笑った。
「じゃーおいらはイッチー野郎の様子見に行ってくるわ」
「あんま驚かすなよ。きっと腰抜かしちゃうよ」




